東京でカラヴァッジョ 日記

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レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想(静岡市美術館)

2011年12月04日 | 展覧会(西洋美術)

レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想
2011年11月3日~12月25日
静岡市美術館


本展は、いずれBunkamuraに巡回することはわかっています。
が、「レオナルド派」に興味があったこと、Bunkamuraには出品されない作品もあることを知って、新幹線に乗り行ってきました。
静岡市美術館は初訪問。


本展は3会場で全81点出品されますが、静岡会場では74点の出品。
差の7点は、うち6点が福岡会場や東京会場のみの出品、残り1点は都合により不出品となったとのこと。
その不出品となった1点が、本展の構成上、残念でした(後述)。


第1章 レオナルド・ダ・ヴィンチとレオナルド派


静岡会場のみ出品となる、ウフィツィ美術館蔵のサライ(帰属)作「聖母子と聖アンナ」(1510-1520年)が登場。
ルーブル美術館のレオナルド作「聖母子と聖アンナ」の模写のようです。
う~ん、不思議な感じ。


レオナルド単独名の作品としては、小さな素描3点が出品されています。
「老人の頭部」は6.1×4.8と小さすぎて、何が描いているのか見えない。
「衣紋の習作」が2点。ただ、私にはそのありがたさがよくわからず。


レオナルドとその弟子作(カルロ・ペドレッティ説)「岩窟の聖母」(個人蔵、1495-97年頃)。
ルーブルやロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵の模写なのでしょうが、キャプションには「様式や図像から見てルーブル作とロンドン作の間に制作された第二作である可能性」うんぬんのようなことが書かれてました。
確かに参考図版(ルーブル・ロンドン作品)と比べると、図像的には両者を折衷しているような感じ。
う~ん、不思議。


この世界は不思議。レオナルド派やレオナルド工房にとどめずに、なんとかレオナルド自身の関与があったことにしようとしている。

 

第3章 「モナ・リザ」イメージの広がり


モナ・リザの油彩画4点に囲まれます。
1:アイルワースのモナ・リザ(16世紀、個人蔵)
2:エッキングのモナ・リザ(レオナルドの流れを汲む画家の追随者作、16世紀、個人蔵)
3:モナ・リザ(アンブロワーズ・デュポア(帰属)作、1600年頃、個人蔵)
4:モナ・リザ(作者不詳、16世紀?、個人蔵)


3の作品は、時のフランス王の命により、オリジナル保護の目的で作成されたもの。
原画とほぼ同じ寸法とのことで、正統派の模写といえるでしょう。
今回の目玉の一つが1の作品。
「レオナルドによる1503年の未完成作」との説があるそうです(なんとかレオナルド自身に結び付けようとしている)。
ルーブル作に比べると、若い顔立ちをしています。
レオナルド作かどうかはともかく、どこか見入ってしまう作品ではあります。


第4章 「裸のモナ・リザ」、「レダと白鳥」


裸のモナ・リザの油彩画が2点。
1:裸のモナ・リザ(レオナルド構想・サライ(帰属)作、16世紀、レオナルド理想博物館蔵)
2:裸のモナ・リザ(作者不詳、16世紀?、ローマ・プリモリ財団)


不出品となった1点が、ここ「裸のモナリザ」の章。3点予定が2点となったのは構成上痛い。囲まれる感がなくなる。
不出品:マッケンジーの裸のモナリザ(レオナルド指導・サライ(帰属)作、1510-15年頃、個人蔵)


1の作品は、今回目玉の一つ。怪しげな雰囲気の作品。


本章では、
フォンテーヌブロー派の「浴室のふたりの女性」(16世紀、ウフィツィ美術館蔵)が展示されています。
フォンテーヌブロー派の作品が見れるなんて想像してなかったので、うれしいサプライズです。
指環をあらわすようなしぐさが印象的です。


また、「レダと白鳥」。


1:レオナルド周辺の画家作「レダと白鳥」(16世紀、ボルゲーゼ美術館蔵)
 昨年のボルゲーゼ美術館展に引き続く来日。前回たっぷり見たので今回は軽く挨拶程度に。


2:16世紀中葉フィレンツェの画家作「レダと白鳥」(1550-60年頃、ベルガモ・アカデミア・カッラーラ美術館蔵)
ミケランジェロ作の「レダと白鳥」の模写作品が出品。きわどいです。


上記以外には、
第2章(レオナルドの時代の女性像)の、ラファエッロとその工房(帰属)作品が2点
あたりが見どころでしょうか。


本展は、レオナルドがテーマであり、レオナルド派はテーマではないので、私が勝手にイメージした「レオナルド派の質の高い作品」というのは当てが外れました(第1章にジャンピエトリーノ作品ほか何点かありましたが、あまり・・・)。
が、モナ・リザといい、裸のモナ・リザといい、岩窟の聖母といい、聖母子と聖アンナといい、よくこれだけの数(しかも、個人蔵が多い)を日本に持ってくることができたものだなあと感心します。


レオナルド自身の作品を見る機会がないなかで、こうして模写作品やなんとかレオナルド自身に結び付けようとしている作品を多数見せられると、なんとも不思議な感じ。
不思議作品多数の展覧会です。次回はBunkamuraで再会します。



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