東京でカラヴァッジョ 日記

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世界遺産 ヴェネツィア展(江戸東京博物館)

2011年12月04日 | 展覧会(西洋美術)

世界遺産 ヴェネツィア展 魅惑の芸術・千年の都 
2011年9月23日~12月11日 
江戸東京博物館 


カルパッチョ作「二人の貴婦人」が来日!!
思わず興奮。ヴェネツィアへ行かない限り、見ることは叶わない絵画だと思ってました。


なので、勝手に「二人の貴婦人」が目玉の一点豪華主義の展覧会と想像してましたが、とんでもない。
見どころの多い展覧会でした。


本展は、3章構成。
第1章(黄金期)、第2章(華麗なる貴族)でヴェネツィアの歴史・社会・風俗を、第3章(美の殿堂)でヴェネツィア絵画を紹介していますが、第1章・第2章にも見ごたえのある絵画がたくさん。


お気に入りの作品は。


1 カルパッチョ「サンマルコのライオン」。
 単なる大看板のような絵なのに、なぜかしら長く足を止めてしまいます。
 両前足を地上に、両後足を水中につけた光輪・羽を持つ聖なるライオン。
 左背景にはサンマルコ広場、右背景には船と島に立つ建物群。
 空と海の青さが印象的。今回の一押しの作品。


2 ヤーコポ・デ・バルバリ「1500年のヴェネツィア(ヴェネツィア景観図)」
 大版画。1500年のヴェネツィアのあらゆる建物を細部に至るまで正確に記録した作品。圧巻です。
 隣にはその150年後に制作された「ヴェネツィアの眺望」と題する油彩画が展示されています。
 大版画をベースに150年間の変化を反映して制作されたものです。
 二つを見比べると、まるで間違い探しゲーム。
 少なくとも、リアルト橋が木造から石造に変わっていることは確認できました。


3 ジェンティーレ・ベッリーニ「総督ジョヴァンニ・モチェニーゴの肖像」
 1478-79年頃作。モデルとなった総督の威厳を感じさせる横顔の肖像画。


4 カルパッチョ(帰属)「総督レオナルド・ロレダンの肖像」
 1505-10年頃作。黄金地にザクロが描かれた衣装が実に鮮やか。


あと、マジョルカ焼やムラーノ製のガラス作品も見逃せません。

 

面白く眺めたのが。


1 作者不詳「1796年のベルガモの暴動鎮圧の命令を受ける将軍ヌヴェウエ」
 命令者は、ヴェネツィア共和国最後の総督マニン。
 稚拙な絵画ですが、こうして大切に保管されているのは、この出来事がもうすぐ滅亡するヴェネツィア共和国にとって重要だったからなのでしょうか。


2 バッタリョーリ・フランチェスコの追随者「凍結したラグーナ」
 1788年のラグーナ(潟)が凍結した様子。船が利用できないため、本土との連絡が途絶えたのだそうです。
 フランス革命の前年。当時は歴史的な寒冷期だったようです。


3 木靴(作品番号115)、カルカニェッティ(作品番号114)
 とてつもない高さのある靴。前者が15センチ、後者が50センチ。これを履いて歩けるなんて曲芸ですね。
 目立つことが優秀さの代名詞だった社会で、女性はよく見えるためにこのような靴を履いていたのだそうです。
 未舗装だった街路や広場を歩くという実用的な目的もあったそうですが、実用的といっても・・・。
 なお、前者とそっくりの赤い靴が、カルパッチョの「二人の貴婦人」に描かれています。

 

さて、目玉の「二人の貴婦人」。


ラスキン(よく知りません)など19世紀後半の英国では相当祭り上げられたようですが。
1944年にローマの古美術商で「発見」された絵が1963年にこの絵の上部にあたることが証明されました。
描かれているのは高級娼婦ではなく貴婦人となり、もともとは家具の右側の扉だったこととなり、左側の扉には何が描かれていたのかが想像され・・・。
多数描かれている動物や植物も結婚をイメージさせるものなのだそうです。
まさかラスキンもこういう展開になるとは想像すらできなかったでしょう。


優美な作品です。見る角度によっては、光の加減で、奥の女性の目に涙がたまっているように見えるのが印象的でした。
左側の扉が発見されるといいなあ。


楽しめる展覧会でした。「二人の貴婦人」をじっくりと見れたのは本当にありがたかったです。
ヴェネツィアいいなあ(芸術新潮のヴェネツィア特集号を購入してしましました)。



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