アルプスの画家 セガンティーニ -光と山-
2011年11月23日~12月27日
損保ジャパン東郷青児美術館
今年の春、4/29から開催予定だった本展が中止となると聞いた時は、非常に残念な思いでした。
その後、他の巡回先が終了後に、期間は当初の約2カ月から約1カ月と短くなりましたが、開催されることとなりました。大変ありがたいことです。
気になるのは、当初出品予定だった作品が、会期変更後も予定どおり出品されたのかどうかということ。はたしてどうだったのでしょうか。
セガンティーニは昔からお気に入りの画家。でもお気に入りとなったきっかけがわからない。
33年前の回顧展は当然見ていないし、それ以降作品をまとめて見る機会はなかったはずだし、大原美術館の作品も見たのも最近のことだし。個人的な謎です。
セガンチィーニの作風は、
1 初期の古典的な暗い色調で日常の農村生活を描く時代
2 分割主義による明るい色調で日常の農村生活を描く時代
3 象徴主義の時代
4 未完となったアルプス3部作
と移り変わります。
私のセガンティーニに対するイメージは、2の時代と4に限定されていたので、本展は1と3の時代を含めて時系列に実見することができる良い機会となりました。
以下の6章構成。
1)ミラノとブリアンツァ(1の時代)
2)肖像画
3)サヴォニン:山岳の光 1886年(2の時代)
4)マロヤ:アルプスの象徴主義(3、4の時代)
5)自画像
6)シャーフベルグでの死、マロヤでの埋葬
スイスのサン・モリッツにあるセガンティーニ美術館を中心に、スイスやイタリアの美術館等から全56点が出品されています。
【スイス】
セガンティーニ美術館(サン・モリッツ):22点
ビュンドナー美術館(クール):7点
チューリッヒ美術館:3点
クリストフ・ブロヒャー・コレクション:3点
オスカー・ラインハルト・アム・シュタットガルデン美術館(ヴィンターツゥール):1点
ヴィンターツゥール芸術文化歴史財団:1点
ヴィンチェンツォ・ヴェラ美術館(リゴルネット):1点
【イタリア】
ミラノ市立近代美術館:8点
アルコ市庁舎:2点
ブレラ美術館(ミラノ):1点
オスペダーレ・マッジョーレ(ミラノ):1点
トレント=ロヴェート近現代美術館:1点
トレント自治県:1点
【その他】
ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム):1点
大原美術館(倉敷):1点
ふくやま美術館(福山):1点
個人蔵:1点
お気に入り作品は多数。
第1章では
「羊たちの祝福」「鐘つき番」「白いガチョウ」辺り。
第3章では
「わがモデルたち」「小屋に帰る羊の群れ」「水を飲む茶色い雌牛」「死んだノロジカ」「日蔭の憩い」・・・・う~ん、油彩画作品全部がお気に入り。
セガンティーニらしい「分割主義による明るい色調の日常の農村風景」の魅力が存分に!!味わえます。
特に大原美術館の「アルプスの真昼」とセガンチィーニ美術館の「アルプスの真昼」とが並んで展示されているのは本展の一番の見どころでしょう。セガンティーニ美術館作品が第1作で、大原美術館作品はその一年後に描かれた第2作となるそうです。
第4章では
象徴主義の章ですが、いかにも象徴主義らしい油彩画は「虚栄」の1点のみで、あとはパステル等が中心。
(大きな油彩画「春の牧草地」もこの章に置かれているので、象徴主義作品と分類されているようです。)
また、アルプス三部作は当然来ていませんが、参考として実物40%大の写真が展示されているほか、「生」と「死」の習作(パステル、コンテ)が展示されています。習作とはいえ結構大きく、見応えがあります(写真と見比べながら見てました。)
第2章、第5章、第6章も素通りすることはできません。
個人的にセガンティーニに対して象徴主義のイメージがありませんでした。
本展により、そういう時代があったということは認識できましたが、作品実見としては本展では出品数不足という感があります。
しかし、第3章でいかにもセガンティーニらしい作品を多数満喫できたので、非常に満足した展覧会でした。
いつの日かサン・モリッツのセガンティーニ美術館へ行きたい、そしてアルプス3部作を見たいという思いが強くなりました。