勅封の 笋の皮 切りほどく
剃刀の音の 寒きあかつき
夢の国 燃ゆべきものの 燃えぬ国
木の校倉の とはに立つ国
森鴎外(奈良五十首)
右手奥のケースには「螺鈿紫檀五絃琵琶」の明治32年制作の模造。
御即位記念特別展
正倉院の世界
-皇室がまもり伝えた美-
2019年10月14日〜11月24日
前期:〜11/4、後期:11/6〜
東京国立博物館
土曜日の夜間開館時に訪問。入室して驚き、前期鑑賞(土曜の日中帯)時より混んでいる。
公式ツイッターを見ると、その日は18時17分現在でも入場待ち10分、18時42分現在で入場待ち解消、その直後に私が到着したことになる。
(なお、19日、20日と、ともに午後から「入場待ち列整理券」なるものの配布を開始したようだ。)
日本人は、正倉院宝物が好きなのだろう。
木造の蔵の中で、経年劣化に加えて、自然災害や火災、戦乱、盗難、権力者の欲望を乗り越えて、1200年以上も遺されてきた綺麗な宝物の奇跡が。
印象に残る「正倉院宝物」。
《白瑠璃椀》
ササン朝ペルシア・6世紀頃
後期展示
これがあの有名なペルシアのガラス器か!
亀甲つなぎ文様の切子のガラス。ひとつの切子に反対側にあるいくつもの切子が映り、美しい輝きを見せる。2角からのスポット照明がその輝きを増させている。
隣の比較展示の東博所蔵の同じササン朝ペルシア・6世紀頃の《白瑠璃椀》がお気の毒、大阪府羽曳野市の天皇陵からの出土らしいが、継ぎだらけで状態が劣るうえに、スポット照明の支援もなく、みすぼらしく見えてしまう。
《紫檀木画槽琵琶》
中国 唐または奈良時代・8世紀
後期展示
前期の《螺鈿紫檀五絃琵琶》と入れ替わり特等室に展示される、これまた綺麗な琵琶。
胴部の捍撥には絵画、馬に乗って虎狩りをする人たち、荷物の鹿を運ぶ人たち、酒宴の様子などが描かれる。
背面には、象牙や緑染の鹿角、黄楊木、錫などをはめ込んだ花鳥画。花枝を加えたおりどりの可愛らしさ。最前列用の列に並んで何周かする。
《呉楽 呉女背子》
奈良時代・8世紀
後期展示
呉楽の中の呉女という役が着用した袷仕立ての背子。なんと明治時代に研究目的に一部分を切り取られたという。その切り取られた部分も「残欠」と称して隣に展示。東博が所蔵するその残欠は、本体と比べて明らかに劣化。今では考えられない大胆すぎる行為、それに見合う研究成果があったのだろうか。
あと、正倉院宝物《漆胡瓶》(中国・唐または奈良時代、8世紀)と法隆寺献納宝物《竜首水瓶》(飛鳥時代、7世紀)対決。
私的には、横山松三郎撮影《壬申検査関係写真》2点も。小学館刊『国宝ロストワールド』により関心を持ち始めたばかり。明治5年8月12日の正倉院開封と、正倉院宝物琵琶・琴・碁。琵琶は後期出品の「紫檀木画槽琵琶」である。
綺麗、よく遺ったなあ、止まりの感想であるが、初めて見る正倉院宝物の展覧会を自分なりに楽しむ。