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カナレットと同時代のヴェドゥータ画家 - 「カナレットとヴェネツィアの輝き」(SOMPO美術館)

2024年12月09日 | 展覧会(西洋美術)
カナレットとヴェネツィアの輝き
2024年10月12日〜12月28日
SOMPO美術館
 
 
 本展の第4章では、カナレットと同時代に活躍したヴェネツィア・ヴェドゥータ(景観画)の代表的な画家4名が紹介される。
 カナレットの成功を受けて、ヴェドゥータ制作に取り組んだ画家たちである。
 
 
フランチェスコ・グアルディ(1712-93)
 
《サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂》
1770年頃、50.5×40.9cm
スコットランド国立美術館
 
《サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂》
1770年頃、49.5×40.0cm
スコットランド国立美術館
 
 ヴェネツィア生まれのグアルディは、カナレットに次ぐヴェネツィア・ヴェドゥータの画家。
 
 カナレットが出品される展覧会では、ほぼその近くにグアルディも展示されている(例えば、2020年「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」)。カナレットがいなくてグアルディのみの展覧会も多い(例えば、2021-22年「メトロポリタン美術館展」)。カナレットよりもグアルディの方が対面機会が多いだろう。
 
 ヴェドゥータを描き始めた時期は、40歳を過ぎた1750年代後半頃で、その理由は、カナレットの長期にわたるヴェネツィア不在によって、ヴェドゥータという収益性の高い市場に参入しやすかったから、と考えられているようだ。
 
 カナレットが写真的だとすると、グアルディはより絵画的な感じで、晩年はターナーや印象派の画法の先駆け的なタッチや色彩のヴェドゥータを残している。
 
 縦長の対作品である本作2点は、初期から晩年への移行期の様式を示しているという。
 水面に映る影の描写が美しい。
 
 
 
ベルナルド・ベロット(1722-80)
 
《ルッカ、サン・マルティーノ広場》
1742-46年、50.8×72.0cm
ヨーク・ミュージアム・トラスト
 
 ヴェネツィア生まれのベロットは、カナレットの妹の息子(カナレットの甥)であり、カナレットの工房で弟子となる。
 
 ベロットは、ヴェネツィアではなく、国外に活躍の場を見いだす。
 25歳のときに、ドレスデンに行き、ザクセン選帝侯の宮廷画家となり、ドレスデンのヴェドゥータを制作する。
 45歳のときに、ワルシャワに移り、ポーランド王の宮廷画家となり、ワルシャワのヴェドゥータを制作する。ワルシャワで死去。
 それら細密に描き込まれたヴェドゥータは、第二次世界大戦で破壊されたドレスデンおよびワルシャワを再建するにあたっての重要な参考資料となったという。
 
 本展出品作は、20歳前半の国外に移る前の作品で、ヴェネツィアではなく、ルッカのヴェドゥータ。カナレット的な細部描写へのこだわりが楽しい。
 
 
 
ミケーレ・マリエスキ(1710-43)
 
《リアルト橋》
1740年頃、62.2×96.6cm
ブリストル市立博物館・美術館
 
 初めて名を知る画家。
 ヴェネツィア生まれのマリエスキは、画家よりも舞台デザイナーとしての活動が知られるらしい。
 30歳前半と若くして亡くなったためか、その作品は、長らくカナレットや後述の弟子アルボットらと混同され、特定が難しかったらしい。
 本展出品作は、水夫が乗る樽の蓋にMMの署名があることで、マリエスキの基準作とされてきたという。味の深さにはカナレットに及ばない感じはするが、細密描写ぶりには感心する。
 
 
 
フランチェスコ・アルボット(1721-57)
 
 初めて名を知る画家。
 本展にはミラノのスフォルツァ城絵画館が所蔵する空想的ヴェドゥータやカプリッチョ計4点が出品されるが、京都・山口会場限り。静岡・東京会場では、アルボットの作品を見ることはできない。
 
 ヴェネツィア生まれのアルボットは、マリエスキの徒弟となり、マリエスキの没後は「第二のマリエスキ」と自称し、マリエスキの未亡人と結婚し、マリエスキの原画の複製作品を多数制作したらしい。
 
 本展出品作4点のうち3点が、マリエスキによる原画の存在が確認されているという。
 
 
 
 私的に非常に楽しみにしていた本展。
 カナレット好きもあるが、なにより2024年に首都圏で開催される海外所蔵作品による西洋古典絵画(オールドマスター)展としては、唯一の展覧会であったことが大きい。
 結果、期待を裏切らない内容であったのは嬉しい。
 
 2025年は、西洋古典絵画の展覧会がもう少しあって欲しいもの。
 まずは、国立西洋美術館「西洋絵画、どこから見るか?」展における米国・サンディエゴ美術館からの出品作が楽しみ。


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