ふつうの系譜
「奇想」があるなら「ふつう」もあります - 京の絵画と敦賀コレクション
2000年3月14日〜5月10日
前期:〜4月12日、後期:4月14日〜
府中市美術館
本展は、敦賀市立博物館所蔵の江戸絵画展。それなのに「ふつうの系譜」展と名付ける、その荒技に感心。
出品数は全106点。前期55点、後期53点。2点が通期。
95点が敦賀市立博物館所蔵。11点を敦賀市立博物館以外から補完している。
【本展の構成】
序:「ふつう」ではないもの-たとえば、蕭白や又兵衛
1:ふつう画の絵画史
(1)専門は「まろ画」-土佐派とやまと絵
(2)専門は「中国」を見せること-狩野派
(3)「斬新」から、あっという間に「ふつう」へ-円山応挙と円山四条派
(4)パーフェクトな形-原在中と原派
(5)「奇想」と「ふつう」の間-岸駒と岸派
(6)「ふつう画」のゆくえ-明治以降の画家
2:ふつう画の楽しみ方
(1)「精密さ」と「たゆたう感じ」
(2)「絵の具の美しさ」と「墨の深さ」
まず冒頭に「ふつう」ではないもの、言い換えると「奇想」を見せる。
又兵衛と蕭白である。
前期は、伝又兵衛1点、蕭白3点(後期は作者不詳1点と蕭白2点)。
これら計7点は、敦賀市立博物館所蔵ではなく、他からの借用。
そもそも敦賀市立博物館は、又兵衛や蕭白、若冲を所蔵していないらしい。
伝又兵衛は、個人蔵の《妖怪退治図屏風》。2019年の東京都美術館「奇想の系譜展」に新出として出品された作品。
蕭白3点のうちでは、個人蔵の《騎驢人物図》。屏風の下絵と考えられており、迷惑そうな顔をしたロバ、ロバに乗る酔っ払いの中国の詩人または仙人、観者の方を見て笑う?付き人、画面中央右上の蕭白印などを楽しむ。
なお、本展には若冲は出てこない。若冲がいない「春の江戸絵画まつり」は、個絵師の回顧展を除くと初めてかも。
1部は「絵画史」と題するとおり、史的な配列。2部は、史的な配列では収まらない作品を中心としたのだろうか。
蕭白から江戸絵画に興味を持ち始めた私にとっては、これらの作品は、総じてふつう過ぎる感。
そのなかでは、前期3点出品の円山応挙はやはり特筆すべき。
《紅葉白鹿図》は、紅葉の下を真っ白な鹿が歩を進める。その凛とした姿が魅力。
3匹の子犬が描かれた《狗子図》が2点。1点は敦賀市立博物館所蔵の人気作品。もう1点は個人蔵で昨年秋に発見された新出作品。面白いのは、この2点は同じ子犬をモデルにしたと考えられていること、敦賀市立博物館所蔵作品が1778年12月の制作で、個人蔵がその前月の1778年11月の制作であること。この2点を並べるのが、「ふつう」ではとどまらない府中市美術館らしさ。
あとは、応挙の高弟でその画風を最も忠実に継承したとされる源琦(げんき)。《藍采和図》は、何も描かれないえらく真っ白な背景に、片足が裸足でピンクの着物を纏った中性的な人物、女仙らしいが、その透明感ある表情が印象的。
応挙と源琦は敦賀市立博物館所蔵作品だけでは足りなかったようで、前後期あわせて応挙2点・源琦2点を他所蔵者から補完している。
応挙のもう一人の高弟・長沢蘆雪は、「奇想」ではなく「ふつう」(円山派)のなかで紹介される。前期1点、後期2点。後期は、昨年のへそまがり展にも出品された《老子図》も登場する。
あと、岸派のなかで紹介される岸駒《寒山拾得図》。昨年のへそまがり展にも出品。その容貌もそうだが、二人が履く赤サンダルと青い靴が印象的。なお、昨年のへそまがり展に出品された岸礼《百福図》は後期出品。
会期初日に訪問。悪天候も重なってか、観客は少なめ。
観覧券を購入すると二度目は半額となる割引券が今年も付いている。
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