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セザンヌ、ピカソの初展示作品を見る。フェルメールに帰属《聖プラクセディス》は不在 -2023年4月の国立西洋美術館常設展

2023年04月05日 | 国立西洋美術館常設展示
 国立西洋美術館の常設展にて。
 気になる「初展示作品」の表示。
 
 「井内コレクションより寄託」とある。
 
 
ポール・セザンヌ(1839〜1906)
《散歩》
1871年
井内コレクションより寄託、DEP.2022-23
 セザンヌの初期の作品です。
 モデルはおそらく画家の二人の姉妹で、その構図と衣装は、パリのファッション雑誌 『ラ・モード・イリュストレ』に掲載された図版のそれを基にしています。
 画家自身「クイヤルド(睾丸の大きな)」と呼ぶところの初期作品に特有な厚塗りと暗い色彩を引き継ぎつつ、そのタッチには確かな抑制の兆しが窺えます。
 また彼の作品としては大変珍しい図像の選択には、かつての暴力性や官能性を強く帯びた文学的テーマを払拭し ーあるいは押し隠して一 ひとつの現代のかたちを模索するさまを見て取ることができるでしょう。
 
 
 
 前期の常設展に「初展示作品」として展示されたため、今期は「初展示作品」の表示はないけれども、次の作品も「井内コレクションより寄託」。
 
ウィリアム・アドルフ・ブーグロー(1825〜1905) 
《小川のほとり》
1875年
井内コレクションより寄託、DEP.2022-18
 なお、前期展示時には、単に「寄託」と表示されていた。
 
 19世紀後半のフランス画壇における保守的陣営を代表するブーグローは、歴史画の大作の数々によりアカデミーでの地位を確立した一方、愛らしい少女を描いた作品から、とりわけ英米のコレクターに広い人気を博しました。
 本作はその代表作のひとつです。 
 陶器のような滑らかな肌の質感や繊細なドレープの表現にはこの画家らしい技術の熟練がうかがえ、鮮やかな赤の花冠が寒色調の画面にアクセントを添えています。
 同じモデルの少女が羊飼いや落穂ひろいに扮した姿を表す複数の作例が知られていますが、ここでは逸話的な要素を切り詰め、モデルに古代刻のポーズをとらせることで、時代を超越した普遍性を与えています。 
 
 
 もう1点。
 
パブロ・ピカソ(1881〜1976)
《小さな丸帽子を被って座る女性》
1942年
井内コレクションより寄託、DEP.2022-25
 
 ちなみに、昨年2022年の大阪中之島美術館「モディリアーニ展」に出品されたピカソ作品、《女性の胸像》(1942年、上掲とは別作品)の所蔵者も、「井内コレクション」となっていたことに気づく。
 
 
 
 この3点のDEP番号が2022-18と23と25。
 この番号から、他にも結構な点数の「井内コレクションより寄託」作品があると推測できる。
 
 日本にも凄い西洋近代美術コレクションを所有している方がいらっしゃるようだ。
 
 小出ししていくのだろうか。
 全貌を見せる機会は予定しているのだろうか。
 
 
 
 
 寄託作品繋がりで、余談。
 国立西洋美術館の寄託作品の目玉、フェルメールに帰属《聖プラクセディス》は、展示されていない。
 
 2015年3月の常設展示開始以降、少なくとも私の訪問時には必ず展示されていた作品。
 
 現在、アムステルダム国立美術館で開催中の「史上最大規模」のフェルメール展に出品されているためである。
 
 そのフェルメール展では、《聖プラクセディス》は、フェルメールの真作として展示されているらしい。
 
 公式カタログに収録された論文「スコットランド国立美術館上級学芸員・サイフェルト氏著」によると。
 作品の真贋は画家の署名、絵具の使われ方、支持体(キャンバス、板など)、歴史的視点からの分析という4つの確度から考察が加えられた。
 署名が後世に描き加えられたという意見は、絵具の分析により否定された。
 また、人物がまとった衣装の描かれ方について、フェルメールの他作品と比較しての分析でも真作とみなされた。
 使用された支持体やテクニックについても、17世紀オランダに特有のものだという。
 これらの理由により「フェルメール作」と結論付けられると説明している。 
 また、同展では、《聖プラクセディス》の所有者が「Kufu Company Inc.」と初めて明記されたとのこと。
 
 
 フェルメールの真作か否かはともかく、作品自体はなかなか良い。
 いつまでも国立西洋美術館にあるわけではないだろう。
 あるうちに何度でも見ておきたい作品である。


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