国立西洋美術館の常設展にて、新収蔵作品を見る。
新収蔵作品表示は、2点。
アウグスト・ストリンドベリ(1849〜1912)
《インフェルノ/地獄》
1901年、100×70cm
2022年度購入
ストリンドベリの名前は初めて知る。
というか、イプセンと並ぶ劇作家としてのストリンドベリは、読んだことはないけれど岩波文庫の背表紙などで認識していたが、画家でもあったとは初めて知る。しかも日本の国立美術館が作品を購入するほどの存在の画家だとは。
19世紀スウェーデンを代表する劇作家で作家のアウグスト・ストリンドベリ。戯曲『令嬢ジュリー』をはじめとする多くの著作で知られますが、彼はまた孤高の画家でもありました。
パレットナイフを用いた厚塗りの大胆なタッチ、偶然の効果を取り入れた即興性や抽象性を特徴とする彼の実験的な絵画は、後に20世紀の様々な前衛芸術運動を先駆するものとみなされ、今日までめざましい再評価が続いています。
ダンテの『神曲』「地獄篇(インフェルノ)」に因んで、作家自身が「私のインフェルノ絵画」と呼んだ本作は、ストリンドベリの最重要作品のひとつです。
画面の周囲は緑の茂みに覆われ、まるで洞窟の中央開口部から外の世界を望むような斬新な構図で、向こう側には混沌とした雲と荒れ狂う風雨が描かれています。
本作は、3番目の妻で若き女優ハリエットとの幸せな新婚生活が、突如深刻な危機に陥った時期に制作されたとされ、牢獄のような暗い洞窟に、ストリンドベリの波乱と絶望に満ちた人生が投影されているようです。
作家自身が一種の精神的自画像として特別視し、長く自宅の壁に掛けられた後、スウェーデンの名だたる美術館に長年寄託されていた作品です。
(『国立西洋美術館ニュース ゼフュロス86』より)
隣りには、既に新収蔵扱いではなくなったが、2021年度購入の、アクセリ・ガッレン=カッレラの作品が並ぶ。
ガッレン=カッレラは、フィンランドを代表する国民的画家のひとりだという。
近年の国立西洋美術館は、北欧の画家の作品収集に力を入れているのだろうか?
アクセリ・ガッレン=カッレラ(1865〜1931)
《ケイテレ湖》
1906年、61.0×76.2cm
2021年度購入
と思えば、国立西洋美術館らしく?19世紀末フランスの画家の作品も、新収蔵。
ウジェーヌ・カリエール(1849〜1906)
《「モデルによる習作」または「彫刻」》
1904年
2022年度購入
カリエールの油彩画について、国立西洋美術館は、松方コレクション2点、購入1点の計3点を収蔵し、本作が4点目の収蔵となるようである。
国立西洋美術館が2006年に開催した「ロダンとカリエール」展に、個人蔵として出品された作品。
国立西洋美術館のプレスリリースでは、もう1点、新収蔵作品がお知らせされている。
こちらは、2023年7-9月に開催予定の企画展「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わる すがた」展にて初公開予定とのこと。
ホアキン・ソローリャ(1863〜1923)
《水飲み》
1904年、151×98cm
2022年度購入
ホアキン・ソローリャは、バレンシアに生まれ、地中海の光彩に輝く祖国の風土と人々を描いて当時内外に絶大なる名声を得た、スペインの誇る国民的画家。
本作は、画家の円熟期である1904年の晩夏、故郷バレンシアの砂浜で描かれた。
浜辺の掘立小屋で、少女がまだおなかの出た小さな幼児に壺から水を飲ませており、背後では半分開いたドアから、一条のまばゆい光が差している。
ソローリャの幼き者に対する愛情に満ちた眼差しと、光を捉える色彩の魔術の際立った作品で、1964年、画家の生誕100年を記念してスペインで発行された記念切手の図柄にも採用された。
(2023年3月17日付プレスリリースより)
来日歴もないようで、これは楽しみである。