「博物館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」(令和2年5月14日、公益財団法人日本博物館協会)を読む。
ため息。
私の大好物であるブロックバスター展覧会の開催は厳しい。
来館者について。
体調懸念がある場合は、来館を自粛して欲しい。
マスクを着用していない人は、入場不可として欲しい。また、持たない等の人のため、その場で1枚単位でマスクを有料販売して欲しい。
従業者について。
来館者からのクレームやご高説が多発すること必至で、感染リスク高い。
館内放送に従ってくれるなら誰も苦労しない。しかし、来館者へ口頭による注意・警告なんてことをしたら、感染リスクを建前に、無視やクレームが頻発すること必至で、暴力も懸念。
このような来館者対応を考えると、正直自分ならば従業したくないが、諸対策の遂行のためにはこれまで以上の人員が必要。
鑑賞環境について
作品からの距離確保に加え、ケースからの距離確保が求められるとすると、えらく遠くから見ることとなる。
人と人との距離確保。自分の好きなように鑑賞することはできない。滞在時間が制限される? 一つの作品をじっくり鑑賞することは認められる? 作品ごとに同時に鑑賞できる人数と鑑賞できる位置と鑑賞できる時間の制限を設ける? 列に並んで前の人との距離を取りながら立ち止まらずに鑑賞する?
以下、ガイドラインの4章と5章の全文。適宜、項番を付している。
4.リスク評価
施設管理者は、新型コロナウイルスの主な感染経路である[1]接触感染、[2]飛沫感染のそれぞれについて、従事者や来館者の動線や接触等を考慮したリスク評価を行い、そのリスクに応じた対策を検討することが求められます。
また、開放(開館)に伴って、注目を集める特別展はもとより、人気のある常設展等などは、多くの来館者や県境をまたいだ人の移動が惹起されることもあり、以下の[3]及び[4]で述べるリスク評価についても留意が必要です。
[1]接触感染のリスク評価
他者と共有する物品やドアノブなど手が触れる場所と頻度を特定する。高頻度接触部位(テーブル、椅子の背もたれ・肘掛、ドアノブ、電気のスイッチ、電話、キーボード、タブレット、タッチパネル、レジ、蛇口、手すり、エレベーターのボタン、券売機、音声解説用機器・車椅子等の貸出機材等)には特に注意が必要。
[2]飛沫感染のリスク評価
施設における換気の状況を考慮しつつ、人と人との距離がどの程度維持できるか、施設内で大声などを出す場所がどこにあるかなどを評価する。
[3]集客施設としてのリスク評価
現下の状況にあって施設の活動を再開した場合に、大規模な来館等が見込まれるかどうか、県境をまたいだ来館が見込まれるか、人と人との距離が確保できるほどの来館にとどまるかどうかなどを、これまでの施設の来館実績等に鑑み、評価する。
その上で、入場制限の判断基準となる施設全体及び諸室への収容可能な来館者数(来館自粛区域の設定を含む。)を評価する。
[4]地域における感染状況のリスク評価
施設が所在する地域の生活圏において、地域での感染拡大の可能性が報告された場合の施設管理への影響について評価する。感染拡大リスクが残る場合には、対応を強化することが必要となる可能性がある。
5.展覧会(常設展示・屋外での展示を含む。)の実施に際して講ずるべき具体的な対策
[1] 総論
a 提言に基づく感染拡大防止策を徹底することが重要であり、例えば、人との接触を避け、対人距離を確保(できるだけ2mを目安に)することが前提。
b 感染防止のために入館制限を実施することが必要な場合は、施設の状況に即した方法の導入が求められる。例えば、以下のような方策が考えられる。
✔︎入館可能時間、入館可能な人数の制限 等
✔︎大人数での来館の制限 等
✔︎日時指定予約や時間制来館者システムの導入
✔︎招待制の導入
c 特定警戒都道府県内にある博物館は、リスク評価の結果を踏まえ、施設が所在する都道府県の知事からの要請等に留意し、一層の館内外における過密解消、感染拡大防止に向けて必要な対応を取ることが求められる。例えば、より厳しい入場規制の実施、 完全予約制の導入等の検討などが考えられる。
d 「リスク評価」の結果、具体的な対策を講じても十分な対応ができないと判断された場合は、展覧会は中止又は延期とし、館内のガイドツアーや各種プログラム(ギャラリートーク、ワークショップ、学校用プログラム、子供向け体験プログラム等)についても同様の扱いとする(同様に、第三者に施設を貸し出し行われる公演等の開催についても、当該公演等の主催者に対して開催の自粛を促す。)。
e 感染防止対策の実施及び感染の疑いのある者が発生した場合の対応に際し、速やかな連携が図れるよう、所轄の保健所等との連絡体制を整える。
f 高齢者や持病のある方については、感染した場合の重症化リスクが高いことから、 サービス提供側においても、より慎重で徹底した対応を検討する必要がある。
g 施設内で体調を崩し感染が疑われる者が発生した場合、以下のような対応が求められる。
✔︎速やかに別室へ移し隔離する。
✔︎対応する従事者は、マスクや手袋の着用等適切な防護対策を講ずる。
✔︎救急搬送を要請し医療機関へ搬送するとともに事後の状況を把握する。
✔︎当該者が感染していた時には保健所等との連携の下に、速やかな情報公開等事後の対策を講ずる。
h 感染者の発生等にともない、保健所等の指導による展示室等の消毒が行われる場合、露出展示されている展示物や展示ケースへの悪影響に備え、予め、展示物や展示ケースと来館者の距離を長めに設定し、導線を検討する必要がある。
[2]来館者の安全確保のために実施すること
a 来館前の検温実施の要請のほか、来館自粛を求める条件を事前にホームページ等で周知するとともに、施設の入口に明示する。
✔︎37.5°C以上の発熱があった場合
✔︎咳・咽頭痛などの症状がある場合
✔︎過去2週間以内に感染が引き続き拡大している国・地域への訪問歴がある場合 等
b サーモグラフィ等による来館者に対する検温を実施し、一定値以上の発熱がある場合は入館をお断りすることも有効。
c 感染者が発生した際には来館者への注意喚起を行える体制を講ずる必要がある(ホームページ上での感染者発生事実の周知・来館者自身が来館日時を記録することを促す等)。なお、来館者の氏名及び緊急連絡先を記載した名簿を作成することも考えられるが、その場合、来館者に対して、こうした情報が必要に応じて保健所等の公的機関へ提供され得ることを事前に周知するなど、個人情報を適切に取り扱うことが求められる。
d 咳エチケット、マスク着用、手洗い・手指の消毒を要請する。消毒液は、当該場所に最適なものを用いることとし、不足が生じないよう定期的な点検が必要(以下、消毒に関する記載において同じ。)。
e オーディオガイド、ベビーカー、車椅子等の貸出物について十分な消毒を行うとともに、十分な消毒が行えない場合は貸し出しを中止する。
f パンフレット等の配布物は手渡しで配布せず据置き方式とする。
[3]従事者の安全確保のために実施すること
a 従事者の緊急連絡先や勤務状況を把握する。
b 従事者に対して定期的な検温を促し、特に37.5°C以上の熱が記録された場合は、必要に応じて医療機関、保健所等の受診を促すとともに、診断結果を館内で記録する。さらに、発熱の他に、下記の症状に該当する場合も、自宅待機とする。
咳、呼吸困難、全身倦怠感、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、味覚・嗅覚障害、眼の痛みや結膜の充血、頭痛、関節・ 筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐
c 咳エチケット、マスクの着用、手洗い・手指の消毒を徹底して実施する。
d ユニフォーム等をこまめに洗濯する。
e 従事者から来館者に対する留意事項の説明や誘導のために必要な発話、及び来館者の質問に直接対応する機会を極力減らすために、館内放送やボード等による案内を活用する。
f 施設の管理・運営に必要な最小限度の人数とするなど、ジョブローテーションの工夫を継続的に行う。
g 従事者に感染が疑われる場合には、保健所等の聞き取りに協力し、必要な情報提供を行う。
[4]展覧会の実施に当たって特に留意すべきこと
a フロアマーカー等の設置等の工夫を行い、来館者同士の距離を確保する(最低1m(できるだけ2mを目安に))。
b 直接手で触れることができる展示物(ハンズオン)は感染リスクが高いので展示しないことを原則とし、止むを得ない場合は職員が管理して消毒を徹底する。また、屋外展示の場合は、鑑賞者が作品に直接手で触れることのないよう注意喚起や鑑賞方法の工夫を行う。
c 展示室(屋外展示の場合は展示エリア)ごとの人数制限や自動音声による注意喚起など、特定の展示作品の前に大勢の人数が滞留しないための措置を講ずる。
d 展示室内(屋外展示の場合は展示エリア)における会話制限を行う。
e 展覧会の実施に際した飲食物の提供は行わない。
[5]施設管理
ア)館内
a 清掃、消毒、換気を徹底的に実施する。
b 展示室の入口等に行列が生じる場合、最低1m(できるだけ2mを目安に)の間隔を空けた整列を促す等、人が密集しないよう工夫を行う。
c 他者と共有する物品やドアノブなど手が触れる場を最低限にする。特に高頻度接触部位(テーブル、椅子の背もたれ・肘掛、ドアノブ、電気のスイッチ、電話、キーボード、タブレット、タッチパネル、レジ、蛇口、手すり、エレベーターのボタン、券売機、音声解説用機器・車椅子等の貸出機材等)に留意する。
d 展示室、特に展示ケースのガラス面の清掃時における感染防止のため、消毒を徹底する必要がある。また、来館者がケースに触れる機会を減らすために、パーテーション等を使ってケースと入館者の間に距離を置く対策も有効。
e 清掃やゴミの廃棄を行う者には、マスクや手袋の着用を徹底する。
f 清掃やごみ廃棄作業を終えた後は、必ず手洗いを行う。
イ)窓口
a 現金の取扱いをできるだけ減らすため、オンラインチケットの販売や、キャッシュレス決済の導入を検討する。
b 対面で販売を行う場合、アクリル板や透明ビニールカーテンにより購買者との間を遮蔽する。
c チケット窓口に行列ができる場合は、最低1m(できるだけ2mを目安に)の間隔を空けた整列を促す等、人が密集しないように工夫する。
ウ)ロビー、休憩スペース
a 対面での飲食や会話を回避するよう促す。
b 休憩中に、人が滞留しないよう、間隔を置いたスペース作り等の工夫を行う。
c 常時換気を行う。
d テーブル、椅子等の物品の消毒を定期的に行う。
e 従事者が使用する際は、入退室の前後に、手洗いや手指消毒を行う。
エ)トイレ
a 不特定多数が接触する場所は、清掃・消毒を行う。
b トイレの蓋を閉めて汚物を流すよう表示する。
c ペーパータオルや個人用タオルを準備する。ハンドドライヤーは使用しない。
d (トイレの混雑が予想される場合、)最低1m(できるだけ2mを目安に)の間隔を空けた整列を促す。
オ)レストラン、カフェテリア、ミュージアムショップ等
テナント事業者等と連携の上、以下の措置を講ずる。
a 現金の取扱いをできるだけ減らすため、オンラインチケットの販売や、キャッシュレス決済を推奨する。
b 対面で販売を行う場合、アクリル板や透明ビニールカーテンにより購買者との間を遮蔽する。
c 飲食物を提供する場合、家族等の一集団と他の集団との距離が概ね2m以上となるよう座席を配置するよう、各店舗において席の位置を工夫する。
d 混雑時の入場制限を実施する。
e 施設内の換気を徹底する。
f 食器、テーブル、椅子等の消毒を徹底する。
g 飲食施設に関わる従業員は、体調管理、マスクの着用及び手指消毒を徹底し、飲食施設の利用者も手指消毒を行ってから入場する。
h ユニフォームや衣服はこまめに洗濯する。
i 物販を行う場合は、多くの者が触れるようなサンプル品・見本品は取り扱わない。
[6]広報・周知
a 従事者及び来館者に対して、以下について周知する。
✔︎健康状態等による来館自粛の徹底(37.5°C以上の発熱、咳・咽頭痛などの症状がある場合。さらに、発熱の他に、咳、呼吸困難、全身倦怠感、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、味覚・嗅覚障害、眼の痛みや結膜の充血、頭痛、関節・ 筋肉痛、下痢、嘔気・ 嘔吐がある場合も来館の自粛を要請する。)
✔︎社会的距離の確保の徹底
✔︎咳エチケット、マスク着用、手洗い・手指の消毒の徹底
✔︎差別防止の徹底
✔︎本ガイドライン及び施設ごとの対応方針の徹底
博物館協会のガイドラインをご紹介いただき、ありがとうございます。
これを読んで博物館・美術館再開後の展示や入場規制は予想と大きくは違わないと感じましたが、一番気になったのは講演会のことです。感染者が出た場合の身元確認に備えて、全て事前申し込み制になり、しかも席を空けて座るために定員は大幅削減=当選率も低くなり、申し込んでもほとんど当たらないということにならないか。(座席1つおきに座らせるとしたら、その表示を貼るだけでも大変なので、講演会自体少なくなる?)
今まで上野では東博が事前申し込みと当日先着順が半々、西美と都美は当日先着順が多かったと思います。このためボッティチェリやカラヴァッジョの講演会など、どうしても聞きたいものはかなり早い時間から並んでいましたが、こういうやり方はもうできなくなるかもしれません。大阪のLNG展が無事開催できて、上原真依氏の講演会が仮に開催されたとしても、これに当選するのは至難の業?
コメントありがとうございます。
収容人数は、東京国立博物館の大講堂が393人、東京都美術館の講堂が225人、国立西洋美術館の講堂が130人、国立新美術館の講堂が260人。
募集人数は、間隔を確保するならば、よくて半分程度、より徹底して5分の1程度となるのでしょうか。
それでも講演会を開催するのでしょうか。