国立西洋美術館で開催中のデューラーの版画展。
デューラーなのに、なぜ、オーストラリア? メルボルン?
メルボルンのデューラー・コレクションは1891年に英国人のトーマス・D・バーロウ卿が個人で収集を始めた、刷りの質の極めて高い重要なコレクションとして知られています。デューラーのほぼ全版画作品をカバーする世界的にも希有なコレクションとして知られ、フェルトン財団からの寄贈によって1956年にメルボルンの収集となりました。
こう知ると、急にありがたいものに思えてくるのだから、単純なもの。
版画は、小さいうえに、密度が濃いので疲れます。
BUNKAMURAのブリューゲル展と同様に、半歩引いて全体を眺めるスタイルで最初から最後までひととおり観賞。
でも物足りない。鑑賞者はそれほど多いわけではない。
ということで、眼鏡をはずし、後半のB2展示室(第2章の一部+第3章)のみ、かぶりつきスタイルで再鑑賞。
満足。しかし、眼が疲れた。
印象に残った作品について。
「神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の凱旋門」
木版49枚を合わせた、大きさ3m四方の巨大作品が展示されていたのには驚きました。
しかしこのような巨大サイズになると観賞は難しいですよね。何が描かれているのか詳細は分からない。
なぜこのような版画を作ったのでしょうか。
「風俗画5点」
・料理人とその妻
・田舎のカップル
・会話する3人の農民
・踊る農民のカップル
・バグパイプ奏者
小サイズですが、庶民がいきいきとし、なかには尊厳を感じさせるものもあり、お気に入り。
「海獣」
海獣にさらわれる女性のスタイルが美しい。
いずれも、メルボルン作品から選びました。
もうひとつ忘れてはならないのが、ベルリン国立版画素描館から招聘した3枚の素描。
各章の先頭に展示されています。
第1章 宗教 ⇒ 受胎告知
第2章 肖像 ⇒ ある女性の肖像(マルガレータ・デューラー?)
第3章 自然 ⇒ 聖家族
この3枚を見るだけでも、本展覧会は来る価値があると思います。