東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

【再訪】「吉田初三郎の世界」(府中市美術館)

2024年06月28日 | 展覧会(その他)
Beautiful Japan 吉田初三郎の世界
2024年5月18日〜7月7日
府中市美術館
 
 後期入りした「吉田初三郎の世界」を再訪する。
 展示替えは1点のみ。
 
 
【吉田初三郎(1884-1955)】
 京都生まれ。師の洋画家・鹿子木孟郎より示された商業美術の道に進む。大正から昭和戦前期にかけて観光グラフィックの分野で幅広く活躍。「大正の広重」と呼ばれる。
 生涯に手がけた鳥瞰図は1600点以上とされる。
 
【本展の構成】
1章 初三郎の時代
 ・鉄道旅行案内
 ・国際観光の時代
 ・初三郎の絵画
 ・初三郎の絵葉書
2章 魅力に迫る
 ・立ち上げられた遠景
 ・まっすぐに連ねられた景色
 ・拡大された中心
 ・歪められた周縁
3章 制作に迫る
 ・印刷技術の進展
 ・取材から印刷物へ
 ・作品の流通
 
 
 見どころの一つは、大型「肉筆鳥瞰図」。
 以下18点の出品。
 
【北海道・東北】
《旭川市鳥瞰図》
 昭和11年、堺市博物館
 
《岩手県観光鳥瞰図》
 昭和8年、岩手県立博物館
 
 
【関東】
《筑波山神社を中心とせる名所図絵》
 昭和初期、堺市博物館
 
《箱根山鳥瞰図》
 大正6年、福住家蔵
 
《神奈川県鳥瞰図》
 昭和7年、神奈川県立歴史博物館
 
 
【東海、甲信越】
《富士見延鉄道沿線名所鳥瞰図》
 昭和3年、堺市博物館
 
《長野県の温泉と名勝》
 昭和7年、長野県立歴史館
 
《日本ライン図絵》
 昭和15年、寂光院像
 
《継鹿尾山図》
 昭和5年頃、寂光院蔵
 
《繊維都市一宮市とその近郊》✳︎トレース図
 昭和28年頃、個人蔵
 
《ポスター「観光の桑名」原画》
 昭和13年頃、個人蔵
 
 
【関西】
《京都市洛北名所図絵》後期のみ
 大正12年、堺市博物館
 
《神武天皇御聖蹟図》
 昭和14年、堺市博物館
 
 
【九州】
《料亭水月を中心とせる日田案内》
 昭和3年頃、堺市博物館
 
《阿蘇周辺図巻》
 昭和20年、公益財団法人徳富蘇峰記念塩崎財団
 
《高千穂名所図絵》前期のみ
 大正13年、国(皇居三の丸尚蔵館収蔵)
 
 
【全国】
《全国野菜主産地之図》肉筆鳥瞰図
 昭和4年頃、タキイ種苗株式会社蔵
 
 
【外地・外国】
《台湾塩水港製糖工場鳥瞰図》
   昭和10年、堺市博物館
 
《大連市水道設備鳥瞰図絵》
   昭和3年頃、個人蔵
 
 
 
 肉筆鳥瞰図以外、ポスター、印刷折本、書籍・新聞・雑誌などを含めると、鳥瞰図の出品作は次のようになる(被りを除く)。
 
【北海道・東北】
《旭川市鳥瞰図》肉筆鳥瞰図
《日本八景名所図絵(狩勝峠)》雑誌付録
《日本八景名所図絵(十和田湖)》雑誌付録
《岩手県観光鳥瞰図》肉筆鳥瞰図
 
【関東】
《筑波山神社を中心とせる名所図絵》肉筆鳥瞰図
《日本八景名所図絵(華厳滝)》雑誌付録
《東京大図絵》雑誌付録
《神奈川県鳥瞰図》肉筆鳥瞰図
《箱根山鳥瞰図》肉筆鳥瞰図
《箱根名所図絵》印刷折本
《鎌倉江乃嶋名所案内図絵》印刷折本
《GUIDE TO KAMAKURA & NEIGHBOURHOOD》印刷折本
《小田原急行電車開通記念》ポスター
《南武鉄道開通》ポスター
《京王電車沿線名所図絵》印刷折本
《青梅鉄道沿線名所図絵》印刷折本
 
《関東震災全地域鳥瞰図絵》新聞付録
 
 
【東海、甲信越】
《富士見延鉄道沿線名所鳥瞰図》肉筆鳥瞰図
《長野県の温泉と名勝》肉筆鳥瞰図
《長野電鉄沿線温泉名所案内》印刷折本
《観光信州》印刷折本
《日本八景名所図絵(上高地)》雑誌付録
《日本ライン図絵》肉筆鳥瞰図
《天下之絶勝 日本ライン御案内》印刷折本
《継鹿尾山図》肉筆鳥瞰図
《日本八景名所図絵(木曽川)》雑誌付録
《繊維都市一宮市とその近郊》トレース図
《豊橋市とその附近》印刷折本
《ポスター「観光の桑名」原画》肉筆鳥瞰図
 
 
【関西】
《叡山頂上一眼八方鳥瞰図》パンフレット
《京都市洛北名所図絵》肉筆鳥瞰図
《京都鳥瞰図》ポスター
《洛東洛西洛南洛北 京名所交通図絵》印刷折本
《神武天皇御聖蹟図》肉筆鳥瞰図
《京阪電車御案内》印刷折本
《大軌・参急電鉄(大阪山田線電車開通)》ポスター
《大大阪市街電鉄路線図 三電力送電路線図 郊外電鉄路線図》印刷折本
 
 
【中国・四国】
《山陽電軌沿線案内図》印刷折本
《日本八景名所図絵(室戸岬)》雑誌付録
 
《HIROSHIMA》冊子
 
 
【九州】
《UNZEN》印刷折本
《日本八景名所図絵(雲仙岳)》雑誌付録
《日本八景名所図絵(別府温泉)》雑誌付録
《料亭水月を中心とせる日田案内》肉筆鳥瞰図
 昭和3年頃、堺市博物館
《阿蘇周辺図巻》肉筆鳥瞰図
 昭和20年、公益財団法人徳富蘇峰記念塩崎財団
《高千穂名所図絵》肉筆鳥瞰図
《霧島・林田温泉》ポスター
 
 
【全国】
《全国野菜主産地之図》肉筆鳥瞰図
《日本交通鳥瞰図》印刷折本
《中部日本観光鳥瞰図》印刷折本
《日本鳥瞰近畿東海大図絵》印刷折本
《日本鳥瞰中国四国大図絵》印刷折本
《日本鳥瞰九州大図絵》印刷折本
 
《日本海中心時代来たる》ポスター
 
 
【外地・外国】
《台湾塩水港製糖工場鳥瞰図》肉筆鳥瞰図
《始政四十周年記念 台北市鳥瞰図》印刷折本
《樺太》印刷折本
《朝鮮大図絵》印刷折本
《大連》印刷折本
《大連市水道設備鳥瞰図絵》肉筆鳥瞰図
 
《朝日新聞 昭和17年1月1日4面「太平洋を中心とした大東亜戦争鳥瞰図」》新聞
 
 
 さすがに出品作だけでは無理だが、吉田は、47都道府県を制覇しているのだろうか。
 
 
 主に、東京鉄道沿線や、長野、京都、神奈川、岩手など、鳥瞰図観光を大いに楽しむ。
 
(一方で、全く土地勘のない地域は楽しめないのも事実。)
 
 観光振興目的ではない作品、関東大震災や広島原爆の鳥瞰図も興味深く見る。後者は冊子のため1図のみの公開であるのは残念。また、朝日新聞の大東亜戦争鳥瞰図は壁面ケースに平置きで距離もあって見えないのはひどい。
 
 戦時体制が強化されていくにつれ、観光振興・旅客誘致は下火になり、不要不急の移動が制限されていく。
 昭和12年、日中戦争勃発に伴い、防諜上の理由から鳥瞰図の制作・頒布が全面的に禁止になる。
 昭和15年頃から鳥瞰図への取り締まりが厳しさを増し、吉田は絵葉書制作へと軸足を移す。
 その間、昭和13〜14年には、陸軍省嘱託の支那方面艦隊従軍画家として、作戦用鳥瞰図の制作にあたっている。
 その出品はないが、この辺りも見たいもの。
 
 
 
【見出し画像】
 府中市美術館の併設喫茶室「府中乃森珈琲店」の看板裏が、「吉田初三郎」仕様。


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