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【画像】「羽黒鏡」を東京国立博物館で見る(東京国立博物館平成館企画展示室)

2023年11月02日 | 東博総合文化展
羽黒鏡 
霊山に奉納された和鏡の美
2023年9月26日〜11月19日
東京国立博物館平成館企画展示室
 
 
 羽黒鏡。
 
 山形県庄内地方の霊峰・羽黒山に開かれた出羽三山神社の社前に位置する御手洗池(鏡ケ池)に奉納された一群の鏡。
 
 大正初年から昭和初年にかけて4度にわたって行われた工事に伴い発見される。
 
 ご神体と考えられた池に、祈願や報賽(お礼参り)のために宝物を投げ入れる「投供」の儀礼によって奉納されたと考えられている。
 
 平安時代から江戸時代に至る約600面が知られているが、そのほとんどは平安後期の作。
 
 洗練された作風から、平安京で作られたと考えられており、直径10センチメートル前後といずれも小振りなのは、出羽三山修験の行者などに託し、運搬しやすいように取り計らわれたためかもしれないとのこと。
 
 
 約600面の羽黒鏡は、各地に分蔵されている。
 
 大本の出羽三山神社は、190面を収蔵し、出羽三山歴史博物館で公開している。
 東京国立博物館は、58面を収蔵する。
 ほかに確認できた範囲では、兵庫の黒川古文化研究所が140面、京都の細見美術館が40面、大阪の和泉市久保惣記念美術館が20面を収蔵する。
 ロンドンの大英博物館も、18面を収蔵し、2015年の東京都美術館「大英博物館展 - 100のモノが語る世界の歴史」にて、大英帝国の強靭な収蔵力と尋常ではない強欲さを語る100点の展示品の一つとして、1面が来日している。必ずしも日本での展覧会だから選抜されたわけではないようで、筑摩選書として刊行された書籍『100のモノが語る世界の歴史』でも取り上げられている。
 ボストン美術館も収蔵(5面?)。
 あとはどこにあるのか、何故分蔵に至ったのか、気になるが確認には至っていない。
 
 
 
 東博は、特別展「やまと絵 - 受け継がれる王朝の美」の関連として、収蔵する羽黒鏡58面すべてを一挙公開中。
 1面が鎌倉時代13世紀、他57面が平安時代12世紀のもの。
 
 物が小ぶりだし、地味でどれも同じように見えるし、と、いつもの企画展示室と比べて観客数に恵まれない様子に見える。 
 
 しかし、800年以上も前に、京で作られ、庄内に運ばれ、厳かに池に投げ入れられ、長く静かに底に眠っていたという歴史。
 唐式から始まって日本人の好みにあわせて発展させてきた、平安時代の和の紋様。
 「やまと絵」展とあわせると、思いのほか楽しめる(といっても私的には、何がどこに表されているか把握に努める程度の楽しみ方であるが)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
《梅花蝶鳥鏡》平安時代12世紀
 
《洲浜双鳥鏡》平安時代12世紀
 
《花枝蝶鳥鏡》平安時代12世紀
 
《蔓草双鳥鏡》平安時代12世紀
 
《秋草双鳥鏡》平安時代12世紀
 
《松喰鶴鏡》平安時代12世紀
 
《松鶴鏡》平安時代12世紀
 
《松鶴鏡》平安時代12世紀
 
《菊枝双鳥鏡》平安時代12世紀
 
《菊楓蝶鳥鏡》平安時代12世紀
 
《萩双鳥鏡》平安時代12世紀
 
《草花水鳥鏡》平安時代12世紀
 
《水辺草花蝶鳥鏡》平安時代12世紀
 
《草生双鳥鏡》平安時代12世紀
 
《山吹双鳥鏡》平安時代12世紀
 
《山吹蝶鳥鏡》平安時代12世紀
 
《洲浜萩双鳥鏡》鎌倉時代13世紀
 
《竹垣双鳥鏡》平安時代12世紀
 
《網目双鳥鏡》平安時代12世紀
 
 
 
 
 
 
 
 ローマにある有名なトレヴィの泉では、旅行者が毎日、3000ユーロ前後のコインを投げ入れて幸運を祈り、ローマに戻ってこられるように願っている。何千年ものあいだ、人びとは貴重な物を水に投じてきた。これはとてつもない衝動であり、投げ込まれていたのは、かならずしも気軽な願いごとのための硬貨だけでない。過去には、神々にたいする真剣な誓願にもなっていた。イギリスでも各地の川や湖で、何千年も前に神々に捧げられた武器、装身具、貴金属が考古学者によって頻繁に発見されている。大英博物館には、かつて水中に厳かに、または喜びとともに沈められた世界各地からの品々がある。なかでも非常に魅力的なのは、900年前に日本のある神社の池に投げ入れられた鏡だ。
ニール・マクレガー『100のモノが語る世界の歴史2』筑摩選書より
 
 
〈参照〉
東京国立博物館「1089ブログ」


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