東京でカラヴァッジョ 日記

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モネ《草上の昼食》 - プーシキン美術館展(東京都美術館)

2018年04月30日 | 展覧会(西洋美術)
プーシキン美術館展
旅するフランス風景画
2018年4月14日~7月8日
東京都美術館
 

   1865年、モネは、翌年のサロンに出品すべく大作の制作に着手する。《草上の昼食》である。
 
   マネが1863年のサロンに出品しスキャンダルを巻き起こした《草上の昼食》に刺激を受けたとされる。
 
   バルビゾンのすぐ北に位置するシャイイ=アン=ビエールにおいて、画家仲間のバジールや将来モネの妻となるカミーユをモデルにスケッチを行い、油彩画習作を制作し、パリに戻って465×640cmの大作に取り掛かるが、結果として完成に至らず、サロンへの出品はなされなかった。制作過程で多くの困難をきたしたためであるらしい。

   モネは、未完成の大作を巻き上げて12年間手元に置く。1878年、家賃未払いのためアルジャントゥユの家主に差し押さえられる。その後何とか取り戻した絵は、湿気のために相当の損傷をきたしていた。やむを得ずモネは画面を分断し、損傷部分を破棄する。現存するのは左側断片と中央断片。

   これら断片は、現在オルセー美術館に所蔵され、2014年の国立新美術館「オルセー美術館展  印象派の誕生-描くことの自由」にて日本初公開された。断片といっても、左側断片が418×150cm、右側断片が248.7×218cmとビッグサイズである。



   さて、今回プーシキン美術館展に出品されているモネ《草上の昼食》 は、未完で終わった大作のための最終下絵として描き始められたものと考えられている。一方、サインと年記が書き込まれていることから、大作制作の放棄後に手を入れて完成作に仕上げたとも考えられている。
  
《草上の昼食》
1866年、130×181cm
プーシキン美術館
 
   下絵とはいえ、そのサイズは130×181cmだから結構な大きさである。そして、下絵レベルではない完成度の高さである。
 
   描かれた7人の男性と5人の女性。木々の緑。木漏れ日の描写。
 
   私的に気になったのは、テーブルクロスの上の食べ物を欲しそうに見つめるワンコと、画面右側の太い木の幹の落書き「Pマークと矢の刺さったハートマーク」。
   前者のワンコは、未完の大作の中央断片のその辺りには見当たらない。食べ物の品数も減らされているようだ。
   後者の落書きは、未完の大作のその部分は現存しない。未完の大作でも描かれたのかどうか、気になるところである。
 
 
 
   この作品については、もう1点、油彩画習作が現存する。プーシキン美術館の習作では、画面の一番左端にいる男性と女性にあたる。バジールとカミーユをモデルにして描いた習作である。
 
《バジールとカミーユ(《草上の昼食》のための習作)》
1865年、93×68.9cm
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
 
 
 
   プーシキン美術館の油彩画習作は、2016年10月〜17年3月にパリのルイ・ヴィトン財団で開催された展覧会「Icons of Modern Art. The Shchukin Collection」展に出品されたらしい。入場者数120万人だったという展覧会。同じパリのオルセー美術館に出向き、サイズ縦横約3.5倍の差がある未完の大作と比べ鑑賞した人も多かっただろう。
   一方、日本では約3.5年の期間を経ての比べ鑑賞。さすがに未完の大作の印象は残っていない。


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