東京でカラヴァッジョ 日記

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沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」(東京国立博物館)

2022年05月19日 | 展覧会(日本美術)
沖縄復帰50年記念
特別展「琉球」
2022年5月3日~6月26日
東京国立博物館
 
 東京国立博物館および九州国立博物館が開催する沖縄復帰50年記念の特別展。
 
 
【本展の構成】
第1章 万国津梁 アジアの架け橋
第2章 王権の誇り 外交と文化
第3章 琉球列島の先史文化
第4章 しまの人びとと祈り
第5章 未来へ
 
 
 以下、特に興味深く観た展示品5点について記載する。
 
 
第1章 万国津梁 アジアの架け橋
 琉球王国は、今の沖縄県から奄美諸島にかけてかつて存在した国家です。12世紀以降、一体的な文化圏を形成し、15世紀に政治的な統合を遂げて誕生した琉球王国は、日本や朝鮮半島、中国大陸や東南アジアと盛んに交流し、アジア各地を結ぶ中継貿易の拠点として大いに栄えました。王国や港市・那覇の活況を今に伝える記録、交易でもたらされた国際色豊かな品々からは、アジアの架け橋となった琉球王国の繁栄ぶりがうかがえます。
 
 
《混一彊理歴代国都之図》
朝鮮時代、15〜16世紀、219.0×276.8cm
長崎・本光寺常盤歴史資料館
 
 この大サイズの世界地図にはびっくり!
 地図の半分以上が中国!
 残り右側に、朝鮮半島と琉球、そして日本。
 残り左側の狭い範囲に、アジアにヨーロッパ、さらにはアフリカまで!
 
 この地図のオリジナルは、1402年に朝鮮で制作されたもので、中国から持ち帰った地図をベースに、朝鮮や日本を加える形で作成したようである。
 現存するのは写本2点で、1点が龍谷大学所蔵品、もう1点が1988年に発見されたという長崎・本光寺所蔵の本展出品作である。
 
〈参考:龍谷大学所蔵品〉
 
 古い世界地図といえば、普段は日本とヨーロッパに注目する私。
 
 今回は、琉球展という場なので、日本よりも琉球に注目して見る。
 琉球は、朝鮮半島(えらく立派)や日本(妙な形状)に比べても存在感のある大きさで描かれており、朝鮮にとっての琉球の重要性が伺われる。
 
 もう一つの注目は、狭い範囲に押し込められながらも、東南/南アジア、中東、ヨーロッパに、アフリカまで描かれていること。
 地図上の文字が小さくて、どこがどこなのかは良く分からなかったが、1402年の時代に、中国は、中東(アラビア半島が大きい)やヨーロッパ(地中海らしきものがある)やアフリカの形状をここまで結構近似で認識していたのか、と感心する。
 ただ、後年制作の写本であるので、その後の更新情報が反映されている可能性もある。
 
 
《ローマ帝国貨幣、オスマン帝国貨幣》
(前者)3〜4世紀、(後者)1687年
沖縄県うるま市勝連城跡出土
沖縄・うるま市教育委員会
 
 17世紀後半にイスラム商人や中国商人経由で入ってきた銅貨らしい。
 日本では他には出土例がないとのことで、当時の琉球王国の国際商業ネットワークの発達を伺わせる。
 しかし、同時代のオスマン貨幣はともかく、何故ローマ帝国貨幣が入ってきたのだろう。貨幣としてではなく、素材として持ち込まれたのか。外国商人に騙されてつかまされたのではないかと心配になる。
 
 
 
第2章 王権の誇り 外交と文化
 琉球国王尚氏は、1470年からおよそ400年にわたり琉球を治めました。歴代の国王は中国の明、清朝の冊封を受けて王権を強化し、島々の統治と外交、貿易を推進しました。17世紀初め、薩摩島津氏の侵攻により王国は大きな変化を余儀なくされますが、新たな体制と国際関係を築き上げ、やがて安定した統治のもとで琉球の芸術文化が開花します。首里城を彩った王家の宝物、中国皇帝や日本の将軍、大名に贈られた美しい漆器や染織品、そして国際交流により洗練されていった書画は王国の高い美意識と技術を物語るものです。
 
 
国宝《王冠(付簪)〔琉球国王尚家関係資料〕》
第二尚氏時代 18〜19世紀
那覇市歴史博物館
 
 個人的に琉球の美術工芸品を初めて関心を持って見たのは、2018年のサントリー美術館「琉球 美の宝庫」展でのこと。
 同展のメインビジュアルが国宝《王冠(付簪)》で、会期最後の2週間という期間限定で、独立ガラスケースに恭しく展示されていた。
 
 本展でも、チラシの表面を飾り、会期最初の2週間という期間限定の展示。
 ただ、大きなガラスケースに他の「琉球国王尚家関係資料」7点(サイズの大きい衣装類を含む)と並べて展示されて、ちょっと目立たない風であるのは気の毒な感。
 
 なんと、本展では、この展示室「国宝 尚家宝物コーナー」に限り、写真撮影が可能。
 撮影の人気は刀剣2点に集中。
 改めて刀剣人気を認識するが、この点でも国宝《王冠(付簪)》にはちょっと気の毒。
 
 
 「国宝 尚家宝物コーナー」では、私的には、次の展示品がお気に入りである。
 私の写真では分かりえないが、貝が良い。
 
国宝《黒漆貝尽螺鈿漆絵硯箱〔琉球国王尚家関係資料〕》
国宝《黒漆貝尽螺鈿漆絵料紙箱〔琉球国王尚家関係資料〕》
明治時代 19世紀
那覇市歴史博物館
 
 
 
 
県指定文化財《神猫図〔横内家資料〕》
山口宗季(呉師虔)筆
第二尚氏時代 1725年
那覇市歴史博物館
 
 2018年のサントリー美術館「琉球 美の宝庫」展で一番興味をもって観たのが「琉球絵画」で、そのなかでも、風俗画、美人画であった。
 本展でも「琉球絵画」の風俗画、美人画を期待していたのだが、なんと、全くない。
 「琉球絵画」の展示はあるが、花鳥画や動物画、文人画などで、風俗画、美人画がない。
 そんななか、妙な猫の絵に注目する。
 目の光も飲食的だが、「横長の顔、黒い尾を持つ、白い猫の図像」は珍しいという。
 この図像は複数知られていることから、琉球において重要な存在であり、瑞祥とされた特定の猫を描いたものと推測されているが、典拠は未だ明らかではないとのこと。
 
 あと、本展の会場内解説は、「琉球絵画」限定でいうと、サントリー美術館「琉球 美の宝庫」展と比べて、(コロナ対策なのか)あまりにも簡素で、物足りなく感じる。
 
 
 以上、5点は、第1章と第2章の展示品に限られたが、第3〜5章も感心しながら見ている次第。


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