東京でカラヴァッジョ 日記

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【その2】変容する名画 ー【再訪】「ボテロ展 ふくよかな魔法」(Bunkamuraザ・ミュージアム)

2022年05月20日 | 展覧会(現代美術)
ボテロ展 ふくよかな魔法
2022年4月29日〜7月3日
Bunkamuraザ・ミュージアム
 
 
 南米コロンビア出身の現役の美術家、フェルディナンド・ボテロ(1932〜)の個展を再訪する。
 
 (株)ウインダム様のご案内によるブロガー特別内覧会に当選し、参加させていただいたもの。
 
 特別内覧会では、本展主催者の許可を得て作品の写真撮影をさせていただけた。
 
 そこで、ボテロが西洋美術史上の名画を題材とした作品について、撮影した写真とともに記載する。
 
 対象は、第1章「初期作品」のうちの1点、および、第6章「変容する絵画」のうち通常時は撮影不可の5点の、計6点。
 
 1959年+1984〜2020年制作の、西洋美術史上の巨匠の作品に描かれた人物たちを丸々とした姿に変容させた作品群である。
 
*本展出品作の画像は、本展主催者の許可を得て撮影しています。
 
*本展では、通常、第6章「変容する絵画」の一部作品に限り写真撮影が可能であるが、期間限定!、5月中の金・土曜日の17時以降、展示室内の全作品の写真撮影が可能。
 
対象日:2022年5月6日(金)、7日(土)、13日(金)、14日(土)、20日(金)、21日(土)、27日(金)、28日(土)の計8日間
時 間:17時〜21時(閉館)まで
 
 
 
ボテロ《バリェーカスの少年(ベラスケスにならって)》 
1959年、132×141cm
ベラスケス
《バリェーカスの少年》
1635-45年、107×83cm
プラド美術館
 会場内解説によると、1961年に、ニューヨーク近代美術館が1959年制作の一枚の絵を購入したおかげで、ボテロは商業的成功を収めることとなったという。
 その作品《12歳のモナ・リザ》(本展非出品) は、1963年にメトロポリタン美術館でレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》が展覧されたとき、ニューヨーク近代美術館のエントランス・ホールに展示されたことで、一夜にして、ボテロの名前がニューヨーク中に知れ渡ったとのこと。
 本作品は、《12歳のモナ・リザ》と同年の制作の初期作品であり、西洋美術史の巨匠の名作を相手に、ふくよかな芸風により、何を表現していくのか、どこまでできるのか、探究しているような感が強い。
 
 
 
ボテロ《ベラスケスにならって》
1984年、173×140cm
ベラスケス
《ラス・メニーナス》部分
1656年、320.5×281.5cm
プラド美術館
 ベラスケスが描く宮廷道化師マリア・バルボラより横幅が拡大されているが、ベラスケスと同様、尊厳をもって描かれているように感じる。
 
 
 
ボテロ《ベラスケスにならって》
2006年、205×176cm
ベラスケス
《マリアナ・デ・アウストリア》
1652-53年、234.2×132 cm
プラド美術館
 1回目訪問時は、本作を丸々とした美少女マルガリータ王女の肖像と誤認していた。
 正しくは、スペイン国王フェリペ4世の2度目の王妃で、美少女マルガリータ王女の実母である、丸々としたマリアナ・デ・アウストリア王妃の肖像であった。
 会場内で紹介されている原画図版とは、身体の向きや背景などが異なり、服装も高貴な感じからは離れてきている。
 
 
 
ボテロ《クラーナハにならって》
2016年、172×140cm
クラーナハ
《ホロフェルネスの首を持つユディト》
1530年頃、87.7×58.1cm
ウィーン美術史美術館
 妖艶な女性から、親しみやすそうな女性へ。
 ホロフェルネスの首の切り口を見せないこと、刀が棒のように細くなったことで、女性は仮面か人形の露店販売員であるかのように感じる。
 
 
 
ボテロ《マリー=アントワネット(ヴィジェ・ルブランにならって)》 
2005年、205×151cm
作者不詳
《マリー=アントワネットの肖像(エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ・ルブランに基づく)》
1783年以降、92.7×73.1cm
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
 若く美しい貴婦人であったはずなのに。
 体型の拡張に加えて、ちょっと年齢を重ねさせ、猜疑心が浮かんでいるかのような表情に変容させ、オリジナルのモデルを実物どおりに描いていたらこうだったかもと思わせる。
 
 
 
ボテロ《ゴヤにならって》
2006年、205×152cm
ゴヤ
《マリア・ホセファ・デ・ラ・ソレダー・アロンソ・ピメンテル、ベナベンテ伯公爵夫人、オスナ公爵夫人》
1785年、104×80cm
個人蔵、マドリード
 オスナ公爵夫人は、優雅で教養のあるスペインきっての上流婦人であり、多くの芸術家を庇護していた。
 ゴヤは、1785年に夫人と知り合い、夫妻の肖像画(うち夫人の肖像画が本作品のオリジナルにあたる)を制作。
 夫人は、ゴヤを気に入り、以後30年にわたって注文主となる。
 この夫人の肖像画は、「衣装にいたるまでヴィジェ=ルブランの描いた『マリー=アントワネット像』にそっくりである」(ジャニーヌ・バティクル『ゴヤ』創元社、1991年刊)とのことで、当時のフランスの流行を踏まえているようだ。
 ボテロの「マリー=アントワネット」と「オスナ公爵夫人」から同じような印象を受けるのは、オリジナル側の事情もあるのだ。
 
 
 
「芸術とは、同じことであっても、異なる方法で表す可能性である。」(ボテロ)
 
 これら作品について、画家の狙いはどこにあるかはともかく、見ていて素直に楽しく思う。
 
 
 他の本展出品作については、別記事としたい。
 
 本展・特別内覧会関係者に感謝いたします。


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