チューリヒ美術館展
2014年9月25日~12月15日
国立新美術館
スイス最大の都市チューリッヒにあって、スイスを代表する美術館の一つであるチューリヒ美術館。
日本・スイス国交樹立150周年記念イベントの「中核」として、日本初となる所蔵品展が開催される。
それも、まさかのオルセー美術館との直接対決という形で。
国立新美術館の2階でオルセー美術館展、1階でチューリヒ美術館展。
チューリヒ美術館には分が悪いとしかいいようがない。
ただ、勝機がないわけではない。
正直、2010年のオルセー美術館「ポスト印象派」展が相手であれば、太刀打ちできなかっただろう。
しかし、今は「印象派の誕生」展。ゴッホもゴーギャンもロートレックもスーラもルソーもいない。モネやセザンヌはいるが、出品作品は1880年までの制作、つまり画業の前半しか対応していない。出品作品全体としても、1850~1882年の約30年間のマネおよび同時代のフランス美術に限られている。
そこが狙い目。
例えば、スイスの美術館らしく、スイスやドイツの美術で攻める。
フランス美術であれば、1850年から30年間の直接対決を避け、例えば、その後のポスト印象派や20世紀の時代で攻める、など。
チューリヒ美術館を応援する気持ち一杯で、国立新美術館を訪ねる。
いきなりの先制攻撃は、チケット売場。
館外の売場は、六本木駅側、乃木坂駅側とも、オルセー美術館展のみの販売。
チューリヒ美術館展は、館内の1階会場入口での販売とある。
入場者が多くは見込めない、地味目の企画展の扱いではないか。
開館時間も、オルセー美術館展は本日20時まで、チューリヒ美術館展は通常どおりの18時まで、と扱いが違う。
弱気になる。
1階会場入口では、チケット購入のための列ができている。
ちょっと安心して、列の後ろに着くと、すぐに順番が回ってくる。
カードが利用できる窓口は1つのみ、他の窓口は現金のみと案内される。
館内入口販売の弊害を感じる。
会場に入る。相応に観客がいる。皆さん楽しみにしていたのだと、安心する。
いきなり、セガンティーニの登場。スイスから攻めてきたか。
2点。セガンティーニといえば、まずはアルプスの風景を描いた明朗な作品をイメージするが、本展では象徴主義の作品2点で攻めてきた。
2011年開催のセガンティーニ展でも手薄だった象徴主義時代の作品である。
うち1点はその2011年の回顧展でも出品された≪虚栄≫。うれしい再会。緑の背景や蛇の描写を熱心に見る。
もう1点は≪淫蕩な女たちへの懲罰≫。酷寒の氷界での懲罰。代表作≪悪しき母たち≫をイメージさせる魅力的な作品。
最初の部屋の2点で既に私はヘビー級の満足をいただいている。
さらにその先も、素晴らしい作品が展開する。
早速、セガンティーニの部屋から左に目を向けると、次の部屋に超弩級の作品が見えている。
全74点。個々の作品については別途記載するつもりだが、期待以上の展覧会。
HPや出品リストに掲載の会場案内図を見ると、細かく部屋が分かれていて、狭苦しいような印象を受けるが、そこは国立新美術館、広い。1点1点が総じてゆったりと展示されている。
ただ、会場はすごく寒い。
国立新美術館で相当数の展覧会を見てきたつもりだが、その中で一番の寒さ。
というか、私の美術散歩史上、記憶にない寒さである。
チューリヒ美術館の意向なのだろうけど、チューリヒ美術館本体もこんなに寒いのか。日本人向けの室温ではないことだけは確かである。