平安の秘仏-滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち
2016年9月13日~12月11日
東京国立博物館 本館特別5室
滋賀県甲賀市の「櫟野寺」の平安仏像ワールドを堪能する。
滋賀県南部に位置する甲賀市は、忍者の里、信楽焼で有名である。
昨年初訪問したMIHO MUSEUMの所在地は甲賀市だった。
そして、甲賀市は仏像でも知られる地域であるらしい。
今回、櫟野寺(「らくやじ」と読む)に伝わる平安時代の重要文化財の仏像20体すべてが東京にお出ましに。しかも3ヶ月のロングラン。
櫟野寺の本堂・宝物殿の改修(2016年6月〜18年10月)があって実現したようだ。
入場すると、いきなり真正面に巨大な仏像がドカンと、展示室のど真ん中に座っている。
像高3.12m、台座・光背を含めると約5.3mという大きさ。
この大きさは、国立新美術館にいらっしゃるヴェネツィアのサン・サルヴァドール聖堂の祭壇画、ティツィアーノ《受胎告知》を上回る。
櫟野寺の本尊、重文《十一面観音菩薩坐像》平安時代・10世紀、である。
普段は大きく重い扉に閉ざされている秘仏。かつては33年に一度の開扉だったが、今は年数回の特別公開が行われているらしい。
大きな仏像の周りを囲むように、壁に沿って19体の仏像が並ぶ。
すべてが平安時代の仏像、重要文化財の仏像である。
大きな仏像の真後ろには、像高2.2mの大作、「甲賀三大仏」の一つ、重文《薬師如来坐像》平安時代・12世紀、がいらっしゃるが、約5.3mの真後ろだと、普通の大きさにしか感じない。
20体の仏像は、すべて平安時代の作であるが、制作時期により2つのグループに分けられるという。
第1グループは、10世紀から11世紀前半の作。
その特徴は、
・下ぶくれの顔
・目尻を吊り上げた、細く厳しい目
・なで肩で、細身で長身の体つき
・太い鼻、厚い唇
第2グループは、11世紀後半から12世紀の作。
第1グループとの違いは、
・穏やか、優しい表情(目尻が吊り上がっていないと理解)
・やや鄙びた表現(そう言われても、見て明らかではない)
そうなのかと、まずは、目尻が吊り上がっているか否かで、第1グループか第2グループかを予想する。
キャプションを見る。
なんと100%正解。
専門家は、どうやら目だけで仏像の制作年代を決めているようだ、と疑念を抱く。
下ぶくれの顔はほぼ共通。
なで肩や細身は多少ブレがあるなあ。
そんな感じで、仏像20体の顔や体つきの違いをもっぱら眺める楽しい1時間強となる。
櫟野寺の本尊、秘仏
「重要文化財の十一面観音菩薩坐像では日本最大」約5.3mの大きさ
重文《十一面観音菩薩坐像》
平安時代・10世紀
像高2.2mの大作
「甲賀三大仏」の一つ
重文《薬師如来坐像》
平安時代・12世紀
目尻を吊り上げた険しい表情
なで肩で、細身で長身の体つき
第1グループの特徴に一番合致
重文《観音菩薩立像》
平安時代・10〜11世紀
平安重文仏像のお顔20