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「買上展」藝大コレクション展2023(東京藝術大学大学美術館)

2023年04月03日 | 展覧会(日本美術)
「買上展」藝大コレクション展2023
2023年3月31日〜5月7日
東京藝術大学大学美術館
 
 「買上」とは、東京藝術大学が卒業および修了制作の中から各科ごとに特に優秀な作品を選定し、大学が買い上げてきた制度です。
 遡って、前身である東京美術学校でも卒業制作を買い上げて収蔵する制度がありました。
 本学が所蔵する「学生制作品」は1万件を超えますが、本展ではその中から約100件を厳選し、東京美術学校時代から現在にいたる日本の美術教育の歩みを振り返ります。  
 
第1部 巨匠たちの学生制作
 
 
 明治26年(1893)に最初の卒業生を送り出して以来、東京美術学校では卒業制作を中心に自画像などを含めた学生たちの作品を教育資料として収集してきました。
 本展では、卒業後に日本近代美術史を牽引した作家たちを各分野から選りすぐり、その渾身のデビュー作が一堂に会します。
 
 
 本展第1部では、東京美術学校を卒業した後に美術界の各分野で主導的な役割を果たした作家たちを選りすぐり、その卒業制作や自画像を紹介いたします。
 
 1893(明治26)年7月、東京美術学校は第一期生を送り出しました。その中の一人に横山秀麿がいます。卒業後に大観と号して近代日本画壇を牽引する活躍をしたことは知られていますが、その画業において最初期に位置づけられる貴重な作品が卒業制作の《村童観猿翁》です。 
 
横山大観
《村童観猿翁》1893年
 
 東京美術学校はその後、各科の卒業制作を買い上げて収集していきます。
 和田英作の《渡頭の夕暮》が1900年パリ万国博覧会に出品されたように、その中には万博や官設展に出品されるなどした卒業制作も少なくありません。 
 
和田英作
《渡頭の夕暮》1897年
 
 まさに巨匠たちのデビュー作であり、代表作のひとつというべき作品が含まれているのです。
 
 また、1896年に開設された西洋画科では、黒田清輝の指導によって卒業時に自画像を描いて学校に納めることが慣習化されていきました。
 これは断続的に今日まで続き、世界的にも希な伝統となっています。
 青木繁、萬鉄五郎、藤田嗣治らは、意外にも卒業制作が買い上げられておらず、自画像のみが納められています。
 
青木繁
《自画像》1904年
 
萬鉄五郎
《自画像》1912年
 
 彼らのように、学生時代の教育的評価とは別に、その後自由に才能を開花させた卒業生も少なくありません。
 教育資料として官立の美術学校に残された卒業制作、自画像の数々は、個々の学生たちの学習成果を示すばかりでなく、明治、大正、昭和と時代を重ねていくことで近代日本美術の歩みを映し出す鏡のような存在となりました。
 
 
第2部 各科が選ぶ買上作品
 
 東京藝術大学では昭和28年(1953)より買上制度がはじまり、卒業していく学生たちを勇気づけてきました。
 今年で創設70年を迎えるこの制度は、現在では多くの科で首席卒業と位置づけられています。
 近年は先端芸術表現、文化財保存学、グローバルアートプラクティス、映像研究など研究領域も広がり、表現方法も多様化してきています。
 今回、各科による選定意図などを添えて展示することで、各科が特に優秀と認めてきた買上作品の傾向が浮かび上がることでしょう。
・日本画
・油画
・彫刻
・工芸
・デザイン
・建築
・先端芸術表現
・美術教育
・文化財保存学
・グローバルアートプラクティス
・作曲
・メディア映像
 
 
 一部作品の撮影が可能な本展、第1部を中心に見る。
 上掲画像の作品のほか、次のような作品を楽しむ。
 
 
菱田春草(1874〜1911)
《寡婦と孤児》1895年
 卒業制作として提出した本作は、審査の場で論争を巻き起こす。
 最優秀を主張する橋本雅邦や岡倉天心に対し、ある教授が「化物絵」だとののしって落第を主張する。
 結局、校長の天心の裁定で、優秀第一席が与えられて決着する。
 
 
赤松麟作(1878〜1953)
《夜汽車》1901年
 車窓には明るくなってきた風景、東海道線の名古屋の手前と推定されている。
 網棚には、隙間なく荷物が置かれる。
 煙草を吸う人がなんと多いことか。
 床の汚れが、この程度で済むはずはない。
 
 のちに関西洋画壇を牽引する西洋画科出身の赤松は、三重県第一中学校教員時代に第6回白馬会展へ本作を出品。白馬賞を受賞し、参考品として本校に買い上げられました。
 
 
小磯良平(1903〜88)
《彼の休息》1927年 撮影不可
 
 卒業制作として描かれた本作。
 ラグビーのユニフォーム姿の青年が椅子に腰掛けている。
 「MANET」画集が青年の隣に置かれている。
 青年のポーズは、マネ《キリストと天使たち》1864年、メトロポリタン美術館蔵のキリストのポーズと酷似する。
(参考)マネ作品
 
 
高山辰雄(1912〜2007)
《砂丘》1936年 撮影不可
 
 セーラー服姿の女性が砂の上に座りこちらをじっと見つめている。
 モデルは、のちに画家の妻となる女性、場所は、房総半島の御宿の砂浜であるとのこと。
 
 
 
 興味は絵画ばかりに。
 
 
 
荒神明香(1983〜)
《reflectwo》部分
2006-07年、先端芸術表現
 ミュージアムショップのスペースであった2階も、展示会場となっている。


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