東京でカラヴァッジョ 日記

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歌麿の大画面の肉筆画《深川の雪》《吉原の花》を観る(岡田美術館)

2017年07月31日 | 展覧会(日本美術)
歌麿大作「深川の雪」と「吉原の花」
―138年ぶりの夢の再会―
2017年7月28日~10月29日
岡田美術館
 
 

   強羅駅からバスで5分強、6つ目の停留所・小涌園で下車してすぐ。歌麿「雪月花」三部作を観るため、2013年10月に開館した箱根町の岡田美術館を初訪問。

 

   通常入館料は大人2,800円。私の場合、割引券により200円引の2,600円。正直、アメリカからの来日作品1点があってこそ、そうでないとなかなか訪問する気になれないような水準。

    展示室への持ち込み制限が厳しい。携帯電話・カメラ・タブレット類、飲物の持ち込み不可。ロッカーに預ける必要がある。また、展示室エリアに入る際、空港のように、「金属探知機のゲートを通る」&「X線で手荷物の中身を検査する」。私の場合、カバンの中にうっかり入れたままになっていたデジタルカメラを発見される。  

 

    滞在可能時間は1時間。全ての時間を歌麿「雪月花」三部作に使う方針の私、1階から5階まである展示室のうち、2階にあるという歌麿を目指す。

 

   まずは壁面通路を通って1階展示室に入室する。真っ黒な展示室。壁が黒、室内の照明も抑えられ、ガラスケースの中の展示品にのみスポットライトをあてた、闇夜を歩いているかのような感覚になる、中国の陶磁・青銅器と韓国の陶磁が並ぶ5部屋からなる真っ黒な展示室を急いで突き抜ける。

 

   エスカレーターで2階へ。日本の陶磁・ガラスが並ぶ2階展示室に入る。真っ黒の向こうに、歌麿「雪月花」三部作、大きい画面の三部作が見える。左から《品川の月》《吉原の花》《深川の雪》。

 

喜多川歌麿《品川の月》高精細複製画   1788年頃   147.4×321cm   フリーア美術館(米・ワシントンDC)蔵


喜多川歌麿《吉原の花》 1791〜92年頃  186.7×256.9cm  ワズワース・アセーニアム美術館(米・コネティカット州ハートフォード)


喜多川歌麿《深川の雪》  1802〜06年頃  198.8×341.1cm   岡田美術館蔵 


・三部作は、1780年代後半から1800年代初めの10〜15年間にわたって、歌麿が親交のあった栃木の豪商・善野伊兵衛からの注文を受け、栃木で描かれたと考えられている。落款はなく、様式と歴史資料から歌麿作とされている。

・三部作が揃って展示された唯一の記録は、明治12年(1879年)11月に栃木県の定願寺での展観に善野家が出品したというもの。

・その後、三部作は明治期に美術商・林忠正の手によってパリに運ばれたとされる。

   「品川の月」は、明治36年(1903年)にフリーア美術館の創設者であるチャールズ・ラング・フリーアが購入する。

   「吉原の花」は、フランス人のコレクターの手を経て昭和32年(1957年)にワズワース・アセーニアム美術館(米・コネチカット州)が購入する。

   「深川の雪」は、昭和14年(1939年)、浮世絵収集家・長瀬武郎によって日本に持ち帰られる。昭和27年(1952年)に銀座松坂屋で展示されて以来、長年行方不明だったが、平成24年(2012年)に再発見され、岡田美術館の収蔵となる。

 

    今年2017年は、3館にて歌麿「雪月花」三部作をメインとする展覧会が開催された。

 
ワズワース・アセーニアム美術館
2017年1月14日~3月26日
 
 
アーサー・M・サックラー・ギャラリー(米・ワシントンDC)
2017年4月8日~7月9日
 
 
岡田美術館
2017年7月28日~10月29日
 
 
   フリーア美術館は、設立者の遺言により、隣接するアーサー・M・サックラー・ギャラリー以外への作品の持ち出しができないことから、三部作のオリジナルが揃うのはアーサー・M・サックラー・ギャラリーの展覧会のみ、他の2館の展覧会では、《品川の月》は高精細複製画の展示となる。
 
 
   つまり、明治12年の栃木県以来138年ぶりに歌麿「雪月花」三部作が一堂に会するというのは、アメリカ・ワシントンDCにおいての出来事。
 
 
   ただ、日本において《吉原の花》と《深川の雪》の2点揃って展示されることが、明治12年の栃木県以来138年ぶりであるのも事実。
 
 
 
   初めて観る三部作。実に素晴らしい。まずは大画面であることが素晴らしい。女性たちがきちんと描き分けられたうえ、その様態が富んでいる。全体を観ても素晴らしいし、一人一人、一グループをトリミングして観ても素晴らしい。
 
 
 
   品川の海、吉原の桜や地の花々、深川の料理。美人の女性たち、そうでない団子鼻の女性たち、子供、犬、猫。
 
 

  《吉原の花》。吉原遊郭の大通り、仲の町に面した引手茶屋と路上を行き来する女性や子供、総計51人。


  《深川の雪》。深川の料理茶屋の2階座敷を舞台に、辰巳芸者や飲食の用意をする女性たち総勢27名。


  《品川の月》の高精細複製画の展示も有難い。品川の飯盛り宿を舞台に、海を背景にした総勢19名(障子に見える人影を除く)。 

 

 
   素晴らしい作品に満足し、予定どおり1時間後、美術館を退館する。
 
 
    本展は定期的(5〜10年に1回程度)開催してほしい。
    また、将来、東博あたりで歌麿の大回顧展を開催することがあれば、三部作(《品川の月》は複製画になるが)も展示してほしい。
 


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