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ボス没後のボス風作品 - ベルギー 奇想の系譜展(Bunkamuraザ・ミュージアム)

2017年07月23日 | 展覧会(西洋美術)

ベルギー 奇想の系譜展
2017年7月15日~9月24日
Bunkamuraザ・ミュージアム

 

   ボス風の16世紀ネーデルランド美術作品をたくさん観る。

 

   以下、ボス没後に制作されたボス風作品について記載する。

 

   ボスは1516年に死去する。ボスが運営していた工房は、その後もしばらくの間は存続し、ボス風作品を制作していたと思われる。

 

   ボスは人気の画家。ボスが亡くなった当時、あちらこちらの教会・修道院などにボスの作品/祭壇画が設置されていただろう。その人気にあやかろうとする模倣者たちも多数出現し、ボス風作品を制作し続ける。

 

   しかし、ボス作品に悲劇が。
   1566年のネーデルランドにおけるカルヴァン派のカトリック聖像破壊運動(イコノクラスム)により、教会や修道院などに設置されていたボス作品は、その多くが消失したものと思われる。

 

   一方、ボス没後40年を経過した頃、版画における「ボス・リバイバル」が本格化する。

 

   ボス風版画の制作の中心となったのは、印刷出版業者のヒエロニムス・コック(1518-1570)。後の大巨匠ブリューゲルもコックに委嘱され、ボス風版画の下絵を多数提供している。16世紀末に近くなる頃まで、こうしてボス風作品が制作し続けられたようだ。

 


   さて、本展出品作のうち、制作者名の記載がある作品について。

 

ヤン・マンデイン
1500年頃生-1559年没

・ハールレム生まれ。1530年頃にはアントワープで活動。


《聖クリストフォルス》
制作年不詳、油彩
ド・ヨンケール画廊

   なんとも凄まじい河、これはクリストフォルスの助けがないと渡れない。

 

《パノラマ風景の中の聖アントニウスの誘惑》
制作年不詳、油彩
ド・ヨンケール画廊

 


ピーテル・ハイス
1519年頃生-1584年没
・アントワープ生まれ。1545年に親方登録。


帰属作品
《聖アントニウスの誘惑》
制作年不詳、油彩
ド・ヨンケール画廊

 

 

ヘリ・メット・ド・ブレス
1510年頃生-1566年頃までアントワープで活動

・ディナンまたはブヴィーニュ(現ベルギー)生まれ。1535年にアントワープで親方登録。
・ボス風というより、風景画家のイメージ。なんでも、パノラマ風景画家パティニール(1480年頃-1524)の甥と考えられているそうだ。


《ソドムの火災、ロトとその娘たち》
制作年不詳、油彩
ナミュール考古学美術館


   炎上する町が印象的だが、どこにロトの一家がいるのか。人物は幾つか描かれていることは確認できるものの、余りに小さ過ぎてさっぱり分からない。

   ちなみに、現在大阪で開催中の「ボイマンス美術館展」でも、ヘリ・メット・ド・ブレス作品が出品されている。


《聖クリストフォルスのいる風景》
1540年頃、油彩
ボイマンス美術館

 


アラールト・デュハメール
1449年頃生-1505-06年没

・ボスと同時代人+同郷人。スヘルトーヘンボス生まれ。
・建築家+彫刻家として教会建築に関わるほか、ボスの構図に基づく版画作品も制作している。なお、ボス自身は一度も版画を手がけなかったとされており、その分この人がボスを普及させたのかもしれない。

 

アラールト・デュハメール(版画に基づく)
ヒエロニムス・コック発行
《包囲された象》
1563年頃、エングレーヴィング
プランタン=モレトゥス博物館、アントワープ 

   ボス・リバイバル時代に制作された、オリジナル版画のコピー作品。

 

ピーテル・ブリューゲル
1525-30年頃生-1569年没

・ブレダ(現オランダ)生まれ?1545年アントワープへ行き修業、1551年に親方登録。1563年ブリュッセルへ移る。


ピーテル・ブリューゲル原画
ヒエロニムス・コック発行
《聖アントニウスの誘惑》
1556年、エングレーヴィング
プランタン=モレトゥス博物館、アントワープ

   現存する最初期の油彩画の制作年が1557年とされているので、それ以前の作品となる。
   ボスの模倣者「第二のボス」の地位にとどまらず、その先の世界、独自の世界を確立した大巨匠のブリューゲルはやはり違う、と思わせる作品。先入観多々だけど。

 

   上述以外の作品を含め、ボス風の油彩画・版画、ブリューゲル版画に囲まれる第1章「15-17世紀のフランドル美術」は、想像以上に楽しい一画である。 ブリューゲルの次男ヤンの油彩画やルーベンスの版画も楽しめる。



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