東京でカラヴァッジョ 日記

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ヒエロニムス・ボス工房作品 - ベルギー 奇想の系譜展(Bunkamuraザ・ミュージアム)

2017年07月22日 | 展覧会(西洋美術)

ベルギー 奇想の系譜展
2017年7月15日~9月24日
Bunkamuraザ・ミュージアム

 

   ボス風の16世紀ネーデルランド美術作品をたくさん観る。

 

   まずは、本展のメイン・ビジュアルについて。

 

ヒエロニムス・ボス工房
《トゥヌグダルスの幻視》
1490-1500年頃、油彩・板
ラサロ・ガルディアーノ財団、マドリード

   修復の際の調査により、本作の支持体であるオークの板2枚が、年輪年代学により、1479年頃に伐採されたものと判明。通常で支持体として利用されるのは伐採後10年未満であることから、本作の制作はボス(1450頃-1516)の生存中であるらしいこととなる。さらに顔料の調査により、ボスの真筆作品と同様の顔料が使われていること、図像的にも、ボスのキャラクターと同様のキャラクターが描かれていることから、ボス自身ではないが、ボスの工房による作品と考えられているという。

 

   なるほどねえ、マドリードのラサロ・ガルディアーノ財団が所蔵しているというのも、それっぽくていいよね、と先入観一杯で、作品に向き合うと、魅力的な作品に見える。

 

   ところで、聞いたことないけど、「トゥヌグダルスの幻視」って、どんな話?
   以下、本展公式サイトより。

 

   アイルランドの騎士が語ったとされる逸話です。主人公の騎士トゥヌグダルスは、3日間の仮死状態に陥っている間に天使によって天国と地獄に導かれ、そこで恐ろしい懲罰を目にし、目覚めた後に悔悛します。

 

   古今東西、バリエーションはあれど、よくある物語ですね。

 

   では、何が描かれているのか。

   ありがたいことに、会場配布の出品リストの末尾に、図版付きの解説がある。

 

   まず画面左下、居眠りしている人物が主人公のトゥヌグダルス、その横が守護天使。
   恐ろしい懲罰の光景を見ているはずなのに、居眠りするとは、肝っ玉の座り具合が尋常レベルではないなあ、と思ったが、居眠りではなく、仮死状態をあらわしているようだ。

 

   そして、恐ろしい懲罰について。画面左下から時計回りで。


嫉妬
蛇に誘惑され、犬に食われる!アダムとエヴァ。


傲慢
鏡を見せられる女性。


怠惰
横たわる人物。悪魔の化身に取り囲まれている。


激怒
激昂した兵士に刺される人物。


大食
大量の酒を無理やり口に注ぎ込まれる人物。


邪淫
賭け事をあらわすサイコロに座る魔物に腹を刺される人物。


貪欲
桶に浸かる男女。修道士(頭部で分かる)・修道女らしい。その桶は、怪物の鼻から吹き出るコイン(貪欲の象徴)で満たされている。

 

   「地獄における七つの大罪と対応する懲罰」が描かれているのはわかったけど、それ以外にもいろいろと描かれているが、それらは何を描いているの?
   画面右下の人物とか、画面左上の家らしい卵らしいものとか、鼻からコインを吹き出している怪物の頭部で寝そべっている人物とか、その右側の炎上する街と流される人々とか。

 


   次に、本作品の右側に展示される作品について。


ヒエロニムス・ボス派
《聖クリストフォルス》
1508年、油彩・板
ノールトブラバンド美術館、セルトーヘンボス

 

   1508年と制作年が特定されている。かつ、ボスが生存している年の制作である。かつ、所蔵者は、オランダのセルトーヘンボス(またはスヘルトーヘンボス、またはデン・ボス)という名のボスの生まれた街にある美術館で、昨年ボスの没後500年記念の大回顧展を開催した美術館である。

 

   いかにもボス真筆作品という外部環境だが、「ボス派」とされている。作者不明なのに、何故制作年が特定できているのだろうか。会場内には本作品の解説なし。

 

   幼児キリストを背負う聖人+ボス風のキャラクター多数の画面。まあ、上述のボス工房作品と比べると寂しいかな、という印象。



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