円山応挙 「写生」を超えて
2016年11月3日~12月18日
根津美術館
以前より気になっていた、《七難七福図巻》目当てに訪問する。
本展の総出品数は47点 、うち前期33点(前期のみ14点。絵巻・図帳は通期で巻替え・頁替えあり)。会場は、いつもの1階第1・第2展示室に加えて、《七難七福図巻》専用に2階第5展示室があてられる。
円山応挙
重文《七難七福図巻》3巻
1768年、相国寺蔵
前後期で巻替え予定。前期は上・中・下巻とも半分程度の公開。
経典に説かれる七難と七福をリアルに描くことで、仏神への信仰心と善行をうながす目的で制作された絵巻。人間と自然の有様の諸相を卓越した描写力で描きだす、応挙の画業に重要な位置を占める作品である。(美術館サイトより)
以下、前期公開の場面を記載。→後期公開場面の紹介は、こちらの記事。
上巻:天災と禽獣による害の巻
1)地震
竹林、竹に掴まる三人。川に頭から落ちた一人。倒壊する家屋、家屋から逃げ出すも揺れが続いているのだろう、転び、頭を抱えて伏す/ひっくりかえる人々、家屋から逃げられなかった人。まんまるした犬もひっくりかえっている(様が可愛い)。
2)洪水
蛇。木に引っかかるも恐らく息絶えているだろう一人。岩にしがみつく一人。多数の流される人々。果実のなる木にしがみつく一人が嘆いている、共にいた子供が耐えられずに流れに飲まれていくのを。果実も流される。蛇、流される一人。
3)火災
消火に向かう人々。なんとか逃げた人々。大きな火のもと、なんとか逃げ切ろうと苦闘さなかの人々、逃げ切れなかった人々。真っ赤な大きな火、大邸宅であるらしい。
4)暴風海難
暴風下の海の描写まで。本場面は後期に続く。
中巻:人がもたらす災いや刑罰の巻
1)盗賊
盗賊に押し入られた家。縛り付けられ、身ぐるみ剥がされ、殺され、井戸に突き落とされ、襲われ、と凄惨な光景が展開される。
2)追い剥ぎ
旅路で、文字どおり身ぐるみ剥がされる家族。が数場面。
3)情死
刺し違えて心中した男女を検分する役人たち。
下巻:福の巻
1)大邸宅における貴族の祝宴と飲食
上・中巻の凄惨を見た後の、貴族の充足した生活の場面には全く興味わかず、ほぼ素通り。福は貴族の、難は庶民・非貴族のものなのか?
応挙はさすが「正統派」、凄惨な場面がこれでもかと展開されるのだが、描写は抑え目。まあ江戸絵画といえば、岩佐又兵衛や曾我蕭白、狩野一信といった『奇想の画家』による、残酷な場面はとことん残酷に、くらいしか観ない私だから、そう感じるのかもしれない。その分、他人事ではない感がある。
と、半分見ただけで判断するのは早い。天災と人がもたらす災いは観たが、禽獣による害と刑罰は後期公開。後期も訪問し、残りの場面を見るつもり。
その他の作品。
重文《写生図巻》2巻(1770〜72年、株式会社千總蔵)は、前後期巻替えで、前期は上巻が多分大半、下巻が少しの公開。動物の克明描写に見入る。
猿(《雪中残柿猿図》個人蔵)、鴨(《雪中水禽図》個人蔵)、孔雀(《牡丹孔雀図》宮内庁三の丸尚蔵館)、兎(《木賊兎図》静岡県立美術館)、インコ(《老松鸚哥図》個人蔵)などを、若冲の猿、鴨、孔雀、兎、インコとは違うなあと楽しむ。