気ちがい河馬さんの日記

精神病院に通院しつつ、障害年金ではとても食えないので、深夜に「ギャオ^スー」と雄叫びを発し河馬に変身し大和川の草食らう

精神障害者とそれを取り巻く状況(見出しは河馬)  共同通信 市川亨

2014-07-04 15:08:36 | 日記
連載ルポ企画「検証・精神医療」5回続きの(1)認知症患者
介護難民の受け皿に 
 家族「自宅では無理」 

 食堂に集まってテレビを見る車いすの高齢者たち。大声を上げテーブルを倒そうとする男性もいるが、大半の患者は静かに過ごしている。「精神科病院」という言葉からイメージされがちな光景とは随分違う。
 北海道苫小牧市の 植苗 (うえなえ) 病院。許可を得て記者が2泊3日で“体験入院”し、認知症患者を受け入れている病棟に入った。
 「医療的にはもう入院している必要のない患者さんが多い。特別養護老人ホーム(特養)などで受け入れてもらえず『難民』化してしまい、ここにいる」。運営法人の理事長である 片岡昌哉 (かたおか・まさや) 医師(53)は複雑な表情だ。
 おむつを着けた患者も多く、病棟には排せつ物と消毒剤の交じった臭いが漂う。「住む場所としては適さない。申し訳ないと思う」と片岡医師。
 病棟の患者約60人のうち、ほとんどは1年以上の長期入院だ。ナースステーションには特養など施設の待機者リストがあり、5人の名前が並ぶ。看護師は「全く動きがない。精神科の入院歴があると施設は嫌がる。患者さんは待っている間に次々亡くなってしまう」とため息をつく。
 退院に向けた調整を担う職員は、医療・介護制度の矛盾に立ち往生している。「特養は要介護度が重い人を優先するので、寝たきりの人が受け入れられやすく、元気な人より先に退院していく」「施設よりも病院の方が本人の支払いが安く済む仕組みなので、『このままでいい』となる」。
 家族には「病院のほうが安心」との心理も働く。横浜市にある認知症専門の精神科病院、横浜ほうゆう病院。 加藤洋子 (かとう・ようこ) さん(62)=仮名=は母きみさん(94)=同=を入院させて11年になる。
 「病院なら、体調が悪くなってもすぐ診てもらえるから」と洋子さん。入院前の約2年間は自宅で介護したが、苦労の連続だった。こんろの火をつけっぱなしにする、デイサービスに連れて行くと泣いて嫌がる…。
 精神的に限界を感じ始めていたとき、かかりつけの医師からほうゆう病院を紹介された。「母のことは大好きだけど、自宅でみるのはもう無理」。施設へ移すことや退院は考えていない。ここで最期をみとるつもりだ。
   ×   ×   
 認知症や統合失調症などで精神科病院に長期入院する患者が地域での生活に移行できるよう、厚生労働省の検討会が報告書案を示した。精神医療の現状を追った。

 認知症の精神科入院 厚生労働省によると、高齢化の進行や介護施設の不足のため、認知症で精神科に入院する人は1996年の約2万8千人から2011年には約5万3千人と、倍近くに増えた。うち半分以上の約3万人が1年以上の長期入院。精神障害による長期入院者を疾患別に見ると、統合失調症が最も多いが、認知症も2割強を占め、2番目に多い。

連載ルポ企画「検証・精神医療」5回続きの(2)長期入院
病棟に60年、最期まで 
 患者は「固定資産」 

 3月17日、大阪府内の病院で一人の男性患者が肺炎でひっそりと亡くなった。 小林照男 (こばやし・てるお) さん=仮名、当時(87)。臨終の場に家族はいなかった。統合失調症でこの病院の精神科に入院して以来60年、一度も退院することなく、人生を終えた。
 「病状は良くなっていた。退院できたはずだった。何を思って『止まった時間』を生きていたのか…」。担当だった精神保健福祉士には今もやり切れない気持ちが残る。
 小林さんは20代後半で入院。幻聴などの症状が強く、閉鎖病棟で13年余り過ごした。その後症状が改善し、40代半ばには入院しながら「外勤作業」として鉄工所などで働いた。だが病院が退院を勧めることはなかった。
 あまりにも入院生活が長いと、外部での暮らしに不安を抱き、退院意欲を失う患者は多い。小林さんもそうだったのか、約10年前に職員が退院を勧めたが「病院の方がいい」と拒否。「ずっとここにいさせて」と職員たちに菓子を差し入れた。
 小林さんには兄と姉がいたが、兄は弟の存在を自分の子に隠し続けた。小林さんは生活保護で暮らし、年に数回、姉が面会に来るだけだった。
 小林さんのような例は「死亡退院」と呼ばれ、精神科病院では患者の高齢化に伴い年々増加。長期入院したまま亡くなる患者は年間約1万1千人に上る(2011年)。
 日本では、社会の偏見や国の隔離収容政策のため精神障害者は病院に追いやられ、劣悪な環境に置かれた。一方で病院は「家族に見放された患者を引き受けてきた」と主張。1人当たり年400万~500万円の診療報酬が入る長期入院患者は、病院に安定的な収入をもたらすことから、精神科医の間で「固定資産」とも呼ばれる。
 小林さんの入院先は近年、患者の退院と地域生活移行に積極的に取り組んできた。だが「いくら退院させても、新たな患者を受け入れるから病床数は減らない。ベッドが一つ空くと『約400万円の減収』という意識があるからだ」と担当の精神保健福祉士。
 退院後の生活に不安を抱く患者と、経営を考えざるを得ない病院。「状況を変えるには、診療報酬や制度面での強い後押しが必要だ」と訴えた。

精神科の長期入院 精神障害で病院に入院している患者は、厚生労働省の推計で全国に約32万人。「長期」と位置づけられる1年以上が約20万人を占める。うち約6万5千人は10年以上。長期入院者の6割強は、幻聴や妄想などの症状がある統合失調症の患者。日本の人口当たりの精神科病床数は先進国最多で、平均入院日数も約290日と突出して長い。

連載ルポ企画「検証・精神医療」5回続きの(3)多剤大量処方
「薬漬け」の悪循環 
 背景に少ない医師数基準 

 幻聴や妄想を抑える抗精神病薬が5種類、睡眠薬は3種類、それらの副作用を止める薬2種類。
 「入院するたびに薬が増え、興奮状態になったり口が渇いたり。それを抑えるためにまた薬、という悪循環だった」
 かつて飲んでいた計10種類の大量の薬を前に、山梨県内に住む 木村照代 (きむら・てるよ) さん(43)=仮名=は当時を「薬漬けの状態だった」と振り返る。
 中学生の時に統合失調症を発症。入退院を繰り返し、退院中も両親の暮らす家で引きこもり状態になった。「薬の影響で頭はボーッとして手足が震える。困っていたが、医師から『苦しくても飲むように』と言われた」
 転機は4年前に通い始めたデイケアだった。散歩や料理などの活動に加わったことで体調が良くなり、担当医の交代もあって徐々に薬を減らした。現在は少量の抗精神病薬1種類を1日1回飲むだけになった。
 「薬を減らしても症状は悪くならなかった。副作用がなくなり、体調もいい」と木村さん。現在は通院先の病院で看護補助のパートとして働く。
 日本の精神医療で長期入院と並ぶもう一つの特徴が、薬の「多剤大量処方」だ。東邦大薬学部の 吉尾隆 (よしお・たかし) 教授によると、日本は精神疾患の患者に処方する薬の種類、量とも国際比較で群を抜いて多い。国立精神・神経医療研究センターの調査では、2011年時点で精神科の入院患者の42%が抗精神病薬を3種類以上処方されていた。
 背景にあるのが、国が定めた人員配置基準の「精神科特例」。精神科病院の医師数は一般病院の3分の1でよいとしている。ある院長は「医師の数が少ないから、どうしても薬で症状を抑えようとする。過剰な鎮静を『症状が改善』とみなし、どの薬が効いているのか分からないので、薬を減らしたがらない」と構造的な問題だと指摘する。
 多剤大量処方は心疾患や肺炎などさまざまな合併症を招き、突然死の恐れが高まるとの研究結果もある。だが、副作用を調べる血液検査を入院患者にしない病院も多い。吉尾教授は「体の状態を定期的にチェックすることが大切。患者は副作用を含めて薬のことを理解し、医師とよく相談しながら使ってほしい」と話す。

多剤大量処方の見直し 厚生労働省は精神障害の薬の使用を適正化する必要があるとして、2014年度の診療報酬改定で一定数以上の種類の抗精神病薬や睡眠薬などを処方した場合、医療機関への報酬を減額。一方、急に投薬量を減らすと症状悪化を招く恐れもあることから、国立精神・神経医療研究センターは昨年10月、適切な減量法ガイドラインを発表した。

連載ルポ企画「検証・精神医療」5回続きの(4)家族の苦悩
支えなく地域で孤立 
 退院の障壁にも 

 4月上旬、都内にある全国精神保健福祉会連合会の事務所。相談電話が鳴り、
理事の 良田 (よしだ) かおりさん(65)が受話器を取ると、意を決したよ
うな中年男性の声が聞こえてきた。「精神障害者の退院促進策を国で検討してい
るようだが、やめてほしい」
 男性には精神障害で入退院を繰り返すきょうだいがいるという。「退院すると、実家である私の家に来る。うちの家族はめちゃくちゃになってしまう。障害者の人権尊重というが、家族の人権や生活はどうなってもいいのか」。厚生労働省の検討会で委員を務める良田さんに、家族の思いを検討会で伝えてほしいと頼み、電話は切れた。
 長期入院の精神障害者を地域での暮らしに移行させる上で、「家族の意向」が障壁の一つといわれる。病院職員からは「家族が退院に同意してくれない」「本音では入院していてほしいのだろう」との声が上がる。
 良田さんは「患者の高齢化が進み、親が亡くなると、きょうだいに負担が回る。きょうだいとはいえ自分の家庭があれば、親のようにはいかない」と説明する。
 横浜市の 石井久美 (いしい・くみ) さん(54)=仮名=もそんな一人だ。兄(58)が17歳で統合失調症を発症して以来、入退院を繰り返している。母親と実家で暮らしていたが、4年ほど前から暴力や暴言が激しくなり、2年前に再入院。87歳の母はその後、認知症で有料老人ホームに入所した。兄は退院すれば1人暮らしになる。
 石井さんは「退院させてあげたい」とグループホームを見学したが、「自立度が高い人向きで、兄にはとても無理。結局、選択肢は実家か病院しかない。でも、私にも自分の家庭がある。面倒を見ることはできない」と、苦しい胸の内を語る。
 日本では、精神障害者が地域で暮らすための訪問医療や福祉サービスが圧倒的に不足しているのが実情だ。家族は近所の視線を気にして、悩みを抱え込む。
 精神科の診療報酬を改め、訪問医療を普及させようという動きもあるが「問題の多い精神医療界にさらに金を渡すのか」との批判がある。「でも」と良田さんはつぶやく。「だったら、家族はどうしたらいいんでしょう」

精神障害者家族の支援 全国精神保健福祉会連合会が家族会員を対象に2009年度に実施した調査では、信頼できる医療や福祉の専門家に相談できるようになるまで「3年以上かかった」との回答が31%、「出会っていない」も19%あった。障害者本人の治療中断を75%が経験しており、身近な専門家のサポートが足りない実態が浮かび上がる。

連載ルポ企画「検証・精神医療」5回続きの(5)地域移行の実践
住民と交流、受け入れ進む 
 「やっぱり自由がいい」 

 愛媛県南部の愛南町。海を望む山あいに立つ 御荘 (みしょう) 病院は、精神障害者を地域での生活に移行させると同時に、病床削減にも成功していることで知られる。「『精神科病院は怖い場所』というイメージは、ここではもうない」。勤務医から10年前に院長になった 長野敏宏 (ながの・としひろ) 医師(43)は断言する。
 同病院は約150あった病床を20年近くかけて減らし、現在は55床。来秋以降には病棟を取り壊し、20人が入るケアホームを建てる計画だ。
 入院患者の退院に当たり、住民の不安を取り除いたのは地域との長年の交流だ。各種の会合や行事に歴代院長が顔を出し、病院の夏祭りには子どもたちを招き患者の姿を見てもらう。NPOを設立し、町から管理を任された温泉宿泊施設で精神障害者を雇用。経営立て直しに成功した。
 精神科の入院歴があると、福祉施設から入所を断られることが多いが「信頼関係を築けば受け入れてもらえる。『受け皿がない』と諦めるべきではない」と長野医師。
 空いたベッドが新規の患者で埋まってしまえば病床削減はできない。在宅の患者を小まめに訪問し、家族に安心してもらうことで、安易な入院を避けるよう心を砕く。
 病院職員には十数年前から方針を説明。訪問看護や福祉施設への配置転換を進めた。「きちんと経営管理すれば、利益も出せる。病床削減したら病院を経営できない、などということはない」
 実際に、何十年も精神科に入院しながら、退院して穏やかに暮らす人たちがいる。埼玉県内の病院に32年入院していた 梶井茂晴 (かじい・しげはる) さん(65)はその一人。人懐っこい笑顔で話し相手を和ませる。
 20代半ばで統合失調症と診断。59歳まで入院していたが、NPOの支援を受け退院した。板前だった経験を生かし、弁当作りの仕事をしている。
 「病院では買い物も決められた日にしかできなかった。やっぱり自由がいい」としみじみと話す。趣味の機械いじりに、釣りや登山…。32年分、やりたいことがいっぱいある。「自分ができたのだから、みんなも退院できると思う」
 梶井さんのように、入院している必要のない患者は全国で10万人とも20万人ともいわれている。

 精神障害者の地域移行 国は2004年、医療上の必要がないのに病院にいる「社会的入院」の精神障害者約7万人について約10年かけて退院させる方針を掲げたが、具体策が不十分で進んでいない。精神科病床の約7万床減少につながるとしたが、実際に減ったのは約1万床。住居の確保が重要だが、一般住宅では入居拒否が多い。グループホームなどの整備も目標通りに進んでいない。      【共同発 気ちがい河馬日記】

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