会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

早稲田大学大学院教授・上村達男 改悪としか思えぬ新会社法の施行

Sankei Web 産経朝刊 正論(05/31 05:00)

上村達男・早稲田大学大学院教授による新会社法を批判した論説。

3つの点がおかしいといっています。

第一に、有限会社を廃止して株式会社に一本化した際、有限会社の方が規制が厳しかった部分までなくしたこと。

第二に、最低資本金制度を廃止し、資本金一円企業を一般化させたこと。

第三に、(少しわかりにくい表現だと思いますが)「法的概念にはある事象に対する本質的把握が表現されているが、新会社法は法的概念を文化的事象の表現とは考えず、さまざまな概念を構成する諸要素に因数分解し、共通項として新しい記号的な言語を当て、「共通項プラス残余」という理数的な整理を行ったことである。」(専門家は「高度化」ならぬ「コード化」と呼んでいるそうです。)

第二の点については、最低資本金が1000万円になる前は、35万円でよかったのですから、その時代に戻っただけだとも言えます。

しかし、海外と比べると、債務超過や実質債務超過の会社が大手を振って営業を続けられるという日本の状況は異常なのかもしれません。株式会社の本質からすれば本来許されない状態が容認されているのです。新会社法では、債務超過会社を消滅会社とする合併が認められるようになる(少なくともそうした解釈の余地が出てきた)など、ますます、規律が緩くなっています。

第三の点については、ベストセラーになっている神田秀樹著「会社法入門」のあとがきでも、「今回の会社法の条文を日本語として読むだけでは、実際のイメージをつかむのが難しい上、その内容もよく理解できないと思われる・・・。・・・新しい会社法の条文は、二一世紀にふさわしいルールを書ききろうとしたときの日本語という言語自体の限界を示しているように思う。」といっています。

少し脱線しますが、コード化は法律だけでなく会計基準にも及んでいるような気もします。例えば、企業結合会計の適用指針は、パラグラフの数が458(結論の背景を除いても333)もあります。非常に細かく場合分けして規定しているのは、それを求めるニーズがあるからなのでしょうが、これをいくら読んでも「本質的把握」にはたどり着きそうにはありません(読みが足りないからだといわれるかもしれませんが)。
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