会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

ソフトバンク営業最高益・前期、携帯事業買収が寄与

NIKKEI NET:企業 ニュース

ソフトバンクの2007年3月期の連結営業利益が前の期の4.4倍の2710億円となり、2期連続で過去最高になったという記事。

同社の決算短信からPLの数字を拾うと以下のようになります。

売上高  2,544,219百万円(100%)
営業利益   271,065
経常利益   153,423(6%)
特別利益    96,282
特別損失    41,132
税引前利益  208,573(8%)
税金費用   142,402(5.6%)
(税効果込み)
少数株主利益  37,355(1.5%)
当期純利益   28,815(1.1%)

つまり、約960億円(税引き後でも600億円弱?)の特別利益がなければ、最終赤字になっていたわけですから、記事でいっているほどいい数字とも思えません。

こういう結果になる原因としては、のれん償却費のような損金算入できない(税効果会計も通常は適用不可)金額が大きいこと、多額の納税を行っている子会社と赤字の子会社があってトータルで見ると税負担率が高いように見えること、少数株主持分が大きな会社があることなどが推測されます。経常利益がよければ、それに比例して当期純利益もよくなるという通常のパターンとはかなり違いがあるようです。

ソフトバンク決算短信(2007年3月期)(PDFファイル)

この会社の純資産の部(716,237百万円)の内訳も相当変わっています。株主資本と評価差額の合計(つまりソフトバンクの株主の持分)が282,949百万円であるのに対し、少数株主持分は430,106百万円もあります。自己資本利益率を計算してみると約10%となり、そこそこの数字ですが、少数株主持分利益率(という言葉はありませんが)も8.9%(=37,355/430,106)という高い数値になります。

ちなみに、この決算短信では、「時価ベースの自己資本比率」というのを表示しています。「株式時価総額÷総資産」という計算式で、74.2%(前期は201%)という数値を出しています(簿価ベースでは6.6%しかない)。しかし、本来、負債・資本側を時価とするのであれば、資産側も時価にしないとつじつまが合いません。あるいは、「株式時価総額÷(株式時価総額+負債)」で計算すべきです(少数株主持分をどこに入れるかは検討が必要)。悪質な「誇大広告」のように感じました。しかし、東証が何もいわないのであれば、これはこれで正しい数字なのでしょう。
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