東証1部上場、大同メタル工業のプレスリリース。
英国子会社における売掛金滞留について、社内調査委員会による調査結果が確定し、過年度の決算短信等の訂正を行ったとのことです。
「当社は、2019 年8月6日付「2020 年 3 月期第1四半期決算発表の延期のお知らせ」にて公表いたしましたとおり、当社の英国子会社である大同メタルヨーロッパ LTD.(以下「DME」といいます。)において約 15 億円程度の売掛金が滞留している事実が判明したため、売掛金の滞留理由を含む事実関係及びその回収可能性等について調査を行ってまいりました。」
売掛金について、入金時の消し込み手続がきちんと行われていなかったそうです。
「DME の経理部門は、実際はマニュアル上必要な業務手順を省略してしまっており、ある取引先から DME 名義の預金口座に入金があった場合、当該入金に係る現預金を「借方」に計上する一方、一旦、「貸方」に未配賦売掛金(正式処理前の仮勘定科目)を計上した後、入金に対応する売掛金との消込作業を正しく実施しておりませんでした。」
「上記①のような DME における会計処理に関しては、売上の架空計上がなかったこと、売上金額と銀行入金額の差額が売掛金の増加額と概ね等しいこと、及び DME 名義の預金口座からの預金流出といった事実が確認できなかったこと、各書類の保管・整理状況が適切ではなかったこと等を踏まえますと、かかる会計処理は、資産の不正流用や粉飾決算等の不正ではなく、誤謬によるものであったと評価することが合理的であると考えられます。
しかしながら、かかる誤謬により、売掛金の未回収分の特定及び滞留売掛金の年齢別内訳を正しく把握することが困難な状況になっており、その結果、DME の貸借対照表に計上されている売掛金の回収可能性に疑義が生じていたものです。」
売掛金入金をいったん仮受金的科目で処理すること自体は、ダメだとはいえませんが(そうしないと現預金の帳簿が締まらない?)、消し込み作業の積み残し(あるいは間違った方法による消し込み)が大きくなるまで放置していたのはまずかったのでしょう。会社は、誤謬だといっていますが、処理の不備があることをわかっていながら放置していた場合には、不正でしょう。
訂正内容をまとめた表の一部。純資産ベースで10億円程度の影響が出ている年度もあるようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/2a/a003c9b7c4c8907fec32c32338a9638b.png)
「売上の架空計上がなかった」、「売上金額と銀行入金額の差額が売掛金の増加額と概ね等しい」のだとすると、過年度に遡って正しく消し込み作業をやり直せば、各年度末の売掛金内訳が明らかとなり、損益に大きく影響するような訂正は出ないような気もしますが...。消し込みは最近の年度だけ行い、古い年度の消し込みはあきらめて、不明分を引当てしてしまったのでしょうか。(ちなみに、2019 年3月期の影響額は純資産ベースで約1百万円にまで小さくなっています。)
過年度の有報等も訂正しています。
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過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出に関するお知らせ(PDFファイル)
内部統制報告書も訂正です。
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内部統制報告書の訂正報告書提出に関するお知らせ(PDFファイル)
「当社の2020年3月期第1四半期決算の作業過程におきまして、当社の英国子会社である大同メタルヨーロッパLTD.の会計処理に一部誤謬があり、当社の過去の決算において、貸倒引当金が過少に計上される等の誤りが生じていることが判明いたしました。」
「上記の誤謬は、大同メタルヨーロッパLTD.の経理部門が売上の増加に伴う業務量の急増に
より、マニュアル上必要な業務手順を省略して売掛金の消込処理を行っていたこと、及びかかる消込処理に対するモニタリングが不十分であったことに起因する決算・財務報告プロセスに関する内部統制の不備であり、財務報告に重要な影響を及ぼすことから、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。」