会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

株式会社サカイホールディングスにおける有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について(金融庁)

株式会社サカイホールディングスにおける有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について

金融庁の証券取引等監視委員会は、株式会社サカイホールディングスにおける金融商品取引法に基づく開示規制の違反について検査した結果、法令違反の事実が認められたとして、課徴金納付命令発出の勧告を、2024年3月26日付で行いました。

連結子会社が、「売上の前倒しによる売掛金の過大計上及び売上の架空計上の不適正な会計処理を行った」結果、「重要な事項につき虚偽の記載」がある有価証券報告書、四半期報告書、訂正報告書を提出したとされています。

平成31年3月第2四半期四半期報告書から令和3年9月期有価証券報告書までと、令和4年3月31日に提出した6件の訂正報告書が対象となっています。

影響額は、例として、令和3年9月有価証券報告書で見ると、「売上の前倒しによる売掛金の過大計上及び当期前の売上の架空計上」により「連結純資産額が3,228,406千円であるところを4,390,901千円と記載」したとされています。

勧告された課徴金は、3,000万円です。

親切なことに、どのような虚偽記載なのか図で説明しています。

細かいことをいうとこの説明のように「現金主義」で本当によいのでしょうか。この会社は9月決算ですが、例えば、支払いされることが9月までに確定した手数料は、実際の入金に関わらず9月に収益として計上すべきでしょう(保険契約は9月までに行われていることが前提)。

当サイトの関連記事(2022年)(会社の独立調査委員会調査報告書について)

会社の調査報告書によれば、もともとは現金主義だったようです。それを、保険契約獲得の時点で収益が実現したものとして、将来受け取る部分も含めて見積りを行い収益計上する方法に変更したそうです。監査人もその会計方針変更は、認めていたとされています。

しかし、その後、その見積り(子会社の経理担当者が表計算によりひとりで集計していた)に不正があり、売上が水増しされてしまったというストーリーでした。

今回の課徴金勧告の発表を読むと、そもそも、見積りで代理店手数料を計上すること自体が間違いであったということになるのでしょう。

本当は、そうした会計方針の議論も詳しく説明してもらわないと、実務の参考にはなりません。

会社の調査報告書より、会計方針変更にふれた部分の一部。

2022 年3 月25 日付のプレスリリースより(報告書22ページ))

なお、この会社は、当時、この不正会計問題に関連して特別調査費用 189 百万円(発表時の見込額)を特別損失として計上しています(→当サイトの関連記事)。

コメント一覧

kaikeinews
教えていただいたアドバンスクリエートは、代理店手数料売上について、調査報告書を公表しましたね。

当サイトでもさきほど取り上げました。

https://blog.goo.ne.jp/kaikeinews/e/c78450f3438144c21946f423d851f2ac
佐田岬
新収益認識基準の適用前の話ですが、公認会計士協会の見解では、保険代理店の収益計上は、契約獲得時点で一括して将来の収入分も含めて計上することが適切である、とされています。

会計制度委員会研究報告第13号
我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)
https://jicpa.or.jp/specialized_field/13ias18_1.html

ケース52
会計上の論点
・ 保険代理店手数料を契約獲得時に一括して収益として認識する会計処理と、保険契約の期間にわたって按分して収益を認識する会計処理のどちらが適当か。

会計処理の考え方
 保険代理店が契約上提供すべき役務の内容は、一義的には保険会社と保険契約者との間における保険契約の成立の仲介であると考えられる。したがって、保険代理店が仲介した保険契約が成立した時点(関連する保険証券が有効となった時点)において我が国の実現主義の下での収益認識要件の1つと解される「役務の提供の完了」要件を満たし、一般的には同時にもう1つの収益認識要件と解される「対価の成立」要件も満たすことになると考えられる。このため、保険代理店が受領する手数料に係る収益も、保険契約が成立した時点において認識することになる。
kaikeinews
教えていただいたアドバンスクリエイトの2023年9月期有報の注記によると、たしかに、将来代理店手数料を見積もって、収益計上していますね。

「① 保険代理店事業

 保険代理店事業においては、保険会社との保険代理店委託契約に基づき、保険契約の締結の媒介及び付帯業務を行っております。通常、保険契約が有効となった時点で主な履行義務が充足されることから、当該履行義務を充足した時点で、顧客との契約から見込まれる将来代理店手数料の金額を収益として認識しております。将来代理店手数料収入につきましては、将来キャッシュ・フローの割引現在価値として算定した額により売上を計上しております。将来キャッシュ・フローは、保険契約ごとの残存有効契約期間にわたって得られる保険代理店手数料収入を、保険代理店委託契約の定めに基づき見積もっております。従って、保険会社との保険代理店委託契約の変更による手数料率の改定、及び、保険契約の解約もしくは失効の影響を受けることから、重大な戻入が生じない可能性が非常に高い範囲でのみ収益を認識しており、割引現在価値の算定にあたって使用する割引率は、無リスク利子率に保険会社固有のリスクを加味したものを基礎として算定しております。」

サカイの調査報告書では、見積り計上する会計方針自体は問題としておらず、見積りを実施するところで不正があったとしています。それに対して、監視委は実際に支払われた手数料を計上すべきだったといっています。

どちらも虚偽記載ですが、意味が全く違いますね。

まさか、監視委が同業他社の会計慣行を調べずに勧告を行ったということはないとは思いますが...
佐田岬
 同じ保険代理店業の㈱アドバンスクリエイト(東証プライム)の2019年9月期の有報 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 において、下記の通りの記載があり、将来に収受する手数料をも計上していたようです。

 なお、前連結会計年度までは、初回手数料については保険契約成立時に受領する手数料額を売上計上しているほか、2回目以降手数料の一部については、複数年にわたる期間を対象とする保険契約のうち保険会社より計算結果確認書面の受領が可能である等の条件の下、翌1年の間に回収される手数料額を売上計上する翌1年基準を採用しておりました(一方で、将来発生する解約に備えて引当金を計上しておりました)。

 当社は、保険契約の媒介及び代理行為にかかる役務提供は保険契約成立時に全て完了していることから、本来、将来受領する保険契約にかかる代理店手数料については一括売上計上も容認され得るものであると考えておりましたが、保守的に回収可能性を判断する上で合理的な期間であることを理由として「翌1年」としており、また、年払いと月払いの違いによる会計処理の統一化等を考慮して、当該基準を採用したものであります。

この2019年9月期に、新収益認識会計基準を早期適用し、下記の通り、会計方針の変更の記載があります。1年基準よりさらに売掛金の計上は増えているようです。

 当連結会計年度の期首から収益認識会計基準等を適用し、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識することといたしました。これにより、保険代理店事業に係る保険代理店手数料収入は顧客との契約における当社の履行義務が充足した契約から見込まれる将来代理店手数料の金額を売上として計上することとしました。
 (中略)
この結果、当連結会計年度の売上高、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益がそれぞれ175,030千円増加し、利益剰余金の当期首残高は88,006千円増加しております。
 
これを見ると、この会社は、見積りで代理店手数料を計上しているようです。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「金融庁」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事