会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

(株)シニアコミュニケーションの不正会計報告書を読む(経営財務6月14日号)

経営財務の6月14日号で、6月4日にマザーズ上場のシニアコミュニケーションズが公表した不正な会計処理に関する調査報告書を取り上げています((株)シニアコミュニケーションの不正会計報告書を読む」)。

監査人にとって非常に参考になると思いますので、この記事か、調査報告書そのものを読むのをおすすめします。ここでは、報告書の「長期間に渡り不適切な会計処理等が発覚しなかった原因」という項目を引用し、若干のコメントを行います。

「(1)監査法人の会計監査の指摘を回避するために行われた不正行為及び犯罪行為

1)取引先担当者印、取引先会社印(角印)及び取引先代表印の偽造印を用いた有印私文書の偽造

2)進行基準に関する会計証憑の偽造

3)取引先になりすました不正送金による滞留売掛金入金填補

a)関与取締役の資金を用いたATMによる当社への滞留売掛金入金填補
b)ネットバンクを悪用した第三者口座から当社への滞留売掛金入金填補資金の送金

4)不正経理による第三者口座への不正送金

a)給料の架空計上による第三者口座への不正送金
b)ソフトウェアの架空計上による第三者口座への不正送金
c)上記a)及びb)についてのファームバンキングを利用した当社から第三者口座への不正送金

5)残高確認の監査手続に対する犯罪行為

(2) 内部管理体制の不備

不正会計処理は、A氏(報告書では実名)を中心に行われたが、当社では、営業、人事、財務などあらゆる権限がA氏に集中していた。職制上、唯一A氏の不正行為をチェックすることができるのは代表取締役社長のB氏であったが、B氏は、A氏と中学・高校の同級生であり、かつ、前職では同じ金融機関で勤務していたということもあり、A氏に全てを任せ、同人の経営管理能力を過信していたことから、不正会計処理を防止することはできなかった。」

不正としては、主として、売上の先行計上や架空売り上げの計上などなのですが、証憑書類(発注書や検収書など取引先が作成するものとタイムシートなど内部の証憑書類の両方)を相当丁寧に作りこんで、監査人をだましていたようです。

さらに、入金を仮装して滞留債権でないかのようにみせかけてもいます。売掛金入金するための原資は、経営者の自己資金(株式売却などでねん出)のほか、会社からの架空経費や架空ソフトウェアの支払い(そのための請求書なども偽造)を当てています。

不正を隠すためにさらなる不正に手を染めるという例だと思います。

「残高確認の監査手続に対する犯罪行為」も相当手の込んだものです。

「A氏は、この監査法人の行う残高確認の手続において、平成17 年3 月期決算においては、監査法人が残高確認状を取引先に直接郵送した後、架空売上計上が行われていた取引先に対して、C氏や営業担当者に、「監査法人から残高確認状が届くが、記入金額に誤謬があったため、開封せず直接シニアコミュニケーションに返送して欲しい」旨の電話連絡することを依頼した。

A氏は、取引先から返送されてきた残高確認状に、会計監査上問題とならないような回答記入を行い、偽造した取引先の担当者印又は代表印を捺印して、X 氏に命じて、消印が取引先住所地管轄郵便局となるよう取引先の住所地近くのポストまで出向かせ、監査法人宛残高確認状の返信郵便の投函を行わせた。」

とここまでは、監査のテキストにも書かれていそうなパターン(しかし対策はなかなか困難)なのですが、ここからはさらにまったく想定外の不正です。

「平成18 年3 月期以降は、A氏は、監査法人の担当公認会計士が郵便ポストに投函した残高確認状を直接的に詐取することをX 氏に命じていた。X 氏は、担当公認会計士が郵便ポストに残高確認状を投函する際これを尾行し、担当公認会計士が残高確認状を郵便ポストに投函後、その場から立ち去ったことを確認し、郵便局の集配係が来るのを近くで待ち伏せ、集配係が来たところで、「郵便物投函後に、内容に誤謬があることに気付いたので、この場で郵便物を回収させて欲しい」旨伝え、投函された全ての残高確認状を回収していた。」

確認状は直接郵便局に持ち込んだ方がよいのかもしれません。

外部調査委員会による調査報告書のご報告について(会社のプレスリリース)(PDFファイル)
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