これも、東芝米国子会社巨額損失問題の解説記事。なぜこの会社を買収したのかについて、ふれています。「減損回避のため」だったという見方です。
「東芝は2006年に約6000億円を投じてWHを買収。買収価格とWHの純資産との差額、約3500億円の「のれん」を計上していた。買収後、リーマンショックや原発事故などで経営環境は激変したが、東芝は一貫して原子力事業は「好調」と説明し、巨額ののれん計上を正当化してきた。仮に不調を認めると減損処理を迫られ、経営危機に直面する可能性があったからだ。
一方で、原発建設の現場では「コストオーバーラン」が深刻な問題になっていた。WHは米国内で4基の原発を建設していたが、規制強化による安全対策や工事の遅延などでコストが増大し、事前の見積り額を超過するようになったのだ。
発注元の米電力会社はWHに超過分のコスト負担を求め、一部は訴訟に発展。工事を担当するCB&IとWHとの間でも、負担割合などをめぐって争いになっていた。こうした係争が深刻化して損失計上を迫られれば、WHの収益計画を見直さざるを得なくなる。すると、のれんの減損処理が現実味を帯びる。こうした事態を回避するために、東芝はS&Wを買収することで関係を整理することにした。
東芝は2015年10月28日、WHがS&Wを完全子会社化すると発表。プレスリリースには次のように記載されている。「米国のプロジェクトに関し現在訴訟となっているものも含め、全ての未解決のクレームと係争について和解する」。「価格とスケジュールを見直すことにも合意した」。
つまりS&Wを買収することが、電力会社との関係を修復する条件だったのだ。前述の東芝関係者は「S&Wを買収しなければ、WHは2015年中に減損処理に追い込まれていたかもしれない。資産査定などの時間は限られていたが決断せざるを得なかった」と振り返る。」
減損回避目的だったとしても、会社は認めず、憶測にすぎないということになるのでしょう。
いずれにしても、決算数値を意識しすぎて、大事な経営判断を誤ることのないようにしてもらいたいものです。(まさか、どこかの監査法人かコンサル会社が、減損回避策として、こういう取引を指南したということはないと思いますが...)
アナリストたちの見方を紹介しています。
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東芝に厳しい視線「減損3000億円規模」の見方も(日経)
「27日の発表を受けて出したアナリストらのリポートも手厳しい。「原発事業は底なしにコストがかさんでいるのではないかという不安が払拭できない」。シティグループ証券の江沢厚太氏は27日付のリポートで、東芝の損失計上についてこう指摘した。
今回の問題になっている米ウエスチングハウス(WH)傘下の原子力サービス会社では買収手続きが終わってからわずか1年という期間で、「数千億円規模」の損失が発生した。東芝は27日の会見で2兆円規模の巨大プロジェクトで費用が当初の想定よりも膨らんだのが主因だと説明したが、「(原発の土木・建設を含めた)総合的エンジニアリングのノウハウ不足が露呈した」(SMBC日興証券の嶋田幸彦氏)とみる市場関係者は多い。」
海外での報道がいくつか引用されています。
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Toshiba to Take Writedown on Nuclear Deal(CFO)
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