会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

オリンパス第三者委ライブ(sankeibiz)

オリンパス第三者委ライブ

12月6日に行われたオリンパス第三者委員会の記者会見の模様を詳しく伝える記事。

気になった点を抜粋します。

まず、第三者委員会の委員長から概要が説明されています。

「「11月7日に森、山田氏が一連の不正取引について、本当のことを話し、いろいろと調査を進めるうちに、たとえば、個人で、仕事を持ち帰り、個人のPCに入っていた記録の中に重要な記録あることが判明した。会社を通じてもろもろの銀行取引の紹介等を併せて各方面から協力頂き、契約書等の書類を入手して調査を進めた。ほぼ概要は解明できた。しかし、あくまで任意の捜査権限しかなく、具体的なところではすべてわかるわけではない。ご承知頂きたい」」

「「金融資産の損失額は1990年から2000年の段階で、960億円あった。その数字は、1999年の9月期に一部特損を160億あまり計上しているので、そこで処理しきれていない金額となる。2003年時点で1177億円という数字が出てくる。これがパソコンにあった数字。裏帳簿がなく、関係者の話しかないが、パソコンから出てきた数字なので、正確なものと考える。これを処理しないといけないとして始めたのが損失処理スキーム」」

報告書は立派なものですが、相当程度、ヒアリングと関係者のPCからかろうじて拾い出したデータに依拠しているようです。

損失隠しの手口については以下のとおり。

「「森、山田両氏が金融資産の運用を担当していた。そこにアクシズの中川氏、アクシズアメリカの佐川氏、グローバルカンパニーの横尾氏と相談して、連結対象になっていないファンドに損失を移すことになった。まずは損失の受け皿ファンドを作る。そこにお金を流して、毀損した金融商品を簿価で買い取る。毀損(きそん)した金融商品を簿価で売ったことになるので、会計上は金を流す課程で、外国の銀行に預金してそれを担保にして、受け皿ファンドが融資を受ける形をとった。融資を受けるときにオリンパスが預金に根担保権設定契約する。担保を提供しているので、預金などは自由に引き出せないものしか残っていない。オリンパスは、損失は消えたものの、銀行から受けた融資が債務として残る。これが1つのやり方。こうやって、自分たちの損失を隠した」」

「「ヨーロッパ、シンガポール、国内ルートの3ルートがあった。ヨーロッパはリヒテンシュタインの銀行を通じて、受け皿ファンドへ。シンガポールはコメルツ銀行から同じ方法でやっていた。国内は投資事業ファンドを立ち上げて出資金を流して、受け皿ファンドにお金を流すやり方で、2000年3月の会計基準変更時には損失を隠した。・・・」

損失穴埋めのためのM&A取引についてふれたのち、損失金額について述べています。

「「最終的にどうなったかだが、・・・はっきりしているのは、損失分離をした額は1171億円で、それを解消するために要した資金が1343億円になった。その間、いろいろと経費もかかり、それから、このファンドづくりとかいろんなことに協力した人への報酬に相当額がかかったので、差額はそうしたものに消えていった。あと、いろいろと調べる過程で、私どもが見ていた範囲で言えば、いわゆる報道で取り上げられていた反社会的勢力との関与は認められなかった。それから、問題となった以外の簿外債務とか毀損された資産も見あたらなかった」

「いろんなことに協力した人」までは調査は及んでいない模様です。

さらに、監査法人とのやりとりについてふれています。

「 「・・・2009年3月に、あずさ監査法人がオリンパスに対して、(ジャイラスと国内3社の買収という)2つの取引に合理性がないと文書で指摘した。2008年12月ころから厳しいやりとりがあった。そこで、最終的には、あずさは(新日本監査に)変わることになったが、国内3社については、多額な減損処理をしたり、FA報酬で、とくに配当優先株の買い戻しに多額な金が、アクシーズ・アメリカから買い戻す契約で行われており、それはおかしいと強行にいった。ただ、会社は外部専門委員会の報告書を提出し、それが違法といえないという意見がついたもので、監査役会も、監査法人も適正意見を出した。ただその経過は取締役会に全く報告されなかった。もしこの時点で取締役会に、問題の多いやりとりが報告されていれば、事態は変わったかもしれない。結局はウッドフォード氏の指摘で判明することになった」

報告書を見てみると、ジャイラス優先株の買い取り取引については、会計処理について前任監査人ともめたようですが、結局、後任監査人の審査会で承認されたために、実行されたようです。 

このあと、不正が発生した背景や再発防止策についても説明していますが、その部分は省略します。

質疑応答部分で気になったのは以下のとおりです。

「--自宅のパソコンから数字が出たといったが、だれの自宅のパソコンにどういう形で残っていたのか

 「個人の名前を申しあげることはできない。従業員の方なので。定期的に岸本氏、菊川氏に隠れた金融資産の運用状況の実際の数字を報告していた。それにはきちんと宛名が残っている。一般論で申しあげると、森・山田両氏だけでできることではない。協力していた人がいた」」

自宅のパソコンに会社のデータを残すのはセキュリティ上問題ですが、今回のケースでは、残してあったおかげで取引記録を復元することができたとすれば、けがの功名ということでしょう。

「--損失額が書かれているが、債務超過とかの認識については、委員会はどう把握しているか

 甲斐中氏「今分かっている事実は、先ほど申した通りで、隠れ債務はないということだが、今回の不祥事発覚が会計にどういう影響を及ぼすか税効果会計等いろいろ問題あるので、監査法人がいろいろと調べているところだ。第三者委員会では、そこまで調べるとの委託を受けていない」」

調査報告書でも、過去の決算がどのように訂正されるのかについては、ほとんどふれていない模様です。会社としてはすでにかなりの程度訂正報告書を作成しているのか、あるいは、訂正する際の方針が決まっていないなどによりできていないのか、どちらなのでしょうか。

「--スキーム運営の協力者への報酬の支払いは、誰にいくらぐらいか。妥当な額なのかどうか

 甲斐中氏「あの、具体的に、誰にいくらということは、はっきりつかんでいない。その辺りは海外の銀行への調査が絡むので、われわれには把握できない部分がある。相当な金額が流れたのは間違いないが、その額を特定して発表するところまで今の時点ではいたっていない。森さんや山田さんの着服という事実は見あたらなかった」」

「--着服の件で、菊川さんらがキックバックの形で、ポケットに入れたということはなかったのか。調査はどういう形でしたのか。

 甲斐中氏「ヒアリングが中心になります。個人の銀行調査は私どもはやる権限がない。(銀行に)照会しても返事は戻ってこない強制捜査の権限ある機関でやるべき。ヒアリングの過程、金の流れの過程では個人的な着服は見あたらなかった」」

カネの流れを100%把握しているわけではないようです。強制的な捜査権限がないのでしかたありませんが・・・。

調査報告書はこちら

第三者委員会調査報告について(オリンパス)

監査法人についてふれている部分を中心に読んでみようと思います。

オリンパス報告書、当時の経営陣を批判

「・・・損失隠しを見抜けなかった監査法人の責任については、「飛ばしの全貌を発見することは困難だった」としながらも、「十分機能を果たさなかった」と総括しました。

 「もっと深みのある監査をすれば、もう少し早く発見することが できたのでは。発見できなくてもしかたがないと言い切ってしまったら、何のために監査法人があるのか」(元東京地検特捜部検事 ・高井康行弁護士)」
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