会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

東芝と監査法人の不適切な関係 [1]巨大企業と監査法人の存亡をかけた攻防(朝日より)

東芝と監査法人の不適切な関係 [1]巨大企業と監査法人の存亡をかけた攻防(記事前半のみ)

東芝と会計監査人であるあらた監査法人の関係を取り上げた記事。朝日は「PwCあらたとのやりとりを日付ごとに記した東芝の内部資料を入手した」のだそうです。

記事前半より、気になった部分(記事後半は未入手です)。

全般的状況は...

「企業と監査法人は、おたがいの信頼関係をベースにしながら、財務諸表の監査に協力してあたるのが理想だといわれる。その信頼関係が、東芝とPwCあらたの間では完全に壊れてしまっていた。数多くの子会社や海外のネットワークを抱える巨大企業の監査をできる国内の監査法人は限られる。どこも引き受け手がいなくなる「監査難民」になるのを恐れる東芝は、PwCあらたに対する根強い不満を抱えながらも、その関係をつづけている。」

米国PwCが大きな役割を果たしているそうです。

「複数の資料や関係者の証言を元に一連の経緯をたどると、今回の攻防劇で最も重大な役回りを果たしたのは、PwCあらたではなかった。影の主役は、PwCあらたが提携する国際的な大手会計事務所、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)だった。

世界の4大会計事務所でも歴史の古いPwCは、欧米市場で大手銀行や大企業などトップクラスのクライアントを抱え、最も格上の会計事務所といわれる。国内の大手監査法人は、どこも海外の大手会計事務所と提携関係にある。だが、PwCあらたに対するPwCの影響力は、他の監査法人に比べると格段に強いとされている。東芝の子会社だったWHの監査を手がける立場にすぎない米国のPwCは、親会社の監査に対するPwCあらたの方針にも介入していた。米国から幹部が来日し、東芝の幹部と何度も直接やりとりしていた。そして、そのことが事態をいっそう複雑にし、東芝の決算発表を大幅に遅らせた原因になっている。」

これが「介入」といえるのかは疑問です。子会社であったウェスチングハウスはおそらく正式の会計監査を米国PwCと契約していたのでしょう。そうであれば、米国PwCは、親会社である東芝の財務諸表に対する監査意見がどうであれ、ウェスチングハウスの財務諸表に対しては、米国PwC独自の判断で監査意見を表明する権限と責任を負っています。その判断について、親会社監査人や親会社(東芝)とコミュニケーションを取るということは、「介入」でも何でもありません。

そのような米国PwCの判断を受け、東芝の監査でどのような意見を表明するかは、あらた監査法人が判断すべきですが、重要な子会社で、もし無限定適正が出ないのであれば、あらたでなくても、親会社の財務諸表にすんなり無限定は出せないでしょう。

また、東芝は金融庁と相談していたとのことです。

「内部資料には、2015年の不正会計問題をきっかけに東芝の監査法人を退任した新日本監査法人、PwCあらたの事実上の「解任」を一時検討した東芝が後任と目した中堅監査法人、日本公認会計士協会なども出てくる。そしてよく目につくのが、監査法人の監督官庁である金融庁の官僚たちだ。東芝の決算が延期になる前後、監査法人との交渉に行きづまると、東芝の幹部は金融庁を訪れ、ひんぱんに相談していた。一企業の監査をめぐる問題に対し、金融庁が強い関与をつづけていたことが浮き彫りになっている。」

ということは、今の状態を金融庁も黙認しているということでしょう。こういう状態を放置している金融庁はきわめて無責任といわざるを得ません。
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