会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

東芝不正見逃した新日本監査法人 見せかけの「重大」処分(AERAより)

東芝不正見逃した新日本監査法人 見せかけの「重大」処分

東芝粉飾事件関連で新日本監査法人に対して行われた行政処分を取り上げた記事。

「重そうな処分にも見えるが、金融庁は上手に的を外していないか」と問いかけていますが、この記事自体が、かなり的をはずしているようにも思われます。

「金融庁の見立てを要約すると、「長年担当した会計士が、東芝を過信し、説明や資料を批判的に検証できなかった」とはいえ、悪いのは東芝で、監査法人はだまされた被害者。そんな筋書きになっている。

そうだろうか。世間は監査法人の「共犯」を疑っている

「私たちも疑ったが、故意を立証する事実は見つからなかった」

金融庁の担当者は言う。結局、下された処分は、新規契約禁止3カ月と業務改善命令、21億円の課徴金。監査法人に課徴金が科されるのは初で、重い処分にも見えるが、

「業務停止に踏み込まない甘い処分。課徴金で重く見せた」

そう見る業界関係者は少なくない。」

どういう業界関係者がそういっているのか、知りたいところです。中央青山の例とよく比較されますが、少なくとも、公表物や報道を読む限りでは、中央青山のカネボウの例と違い、故意に粉飾を見逃したわけではなく、中央青山より、ゆるい処分なのは当然といえます。また、中央青山の場合は、法律上、当時の処分の選択肢が今ほど幅広くなかったため、厳しい処分にせざるを得なかった(というより処分の結果がどうなるのか、金融庁が予測を誤った)ともいわれています。

もちろん、AERAの記者が、共犯だという証拠を見つけてきて、記事にするのなら、過失説に固執するわけではありませんが...。

WHののれんについてもふれています。

「今回の処分を詳しく見ると、金融庁の弱腰がにじみ出ている点がまだ見つかる。処分対象にしたのは、パソコン事業や半導体事業など東芝の第三者委員会が不正を指摘した分野だけ。本誌昨年12月7日号でも報じた、東芝の不正会計疑惑の「本丸」、ウェスチングハウス(WH)の「のれん代」には触れていない。

 純資産2400億円のWHを東芝は約6千億円で買収した。WHが営む原子力ビジネスはこれから広がる、と見込んで差額の約4千億円をのれん代として計上した。それが見込み違いだったことから東芝の迷走が始まった。日米にまたがる原子力ビジネスの会計処理はどうなっているのか。東芝疑惑の核心はそこにあるが、金融庁はメスを入れず、やり過ごした

「検査は処分事案以外でも行った。何を調べたかは言えない」と金融庁の担当者。処分がなかったのは問題なしということか。そう問うても答えはなかった。

 処分を受け、新日本は東芝との監査契約を辞退する、と発表した。来年3月期の決算は別の監査法人が担当する。新たな会計士は、曇りない目でWHののれん代を判断できるだろうか。」

WHののれんは確かに問題ですが、もしそののれんの処理が過去の年度においておかしかったというのであれば、企業の粉飾をあばく公的な機関は金融庁の監視委であり、最初に通報を受けたのも監視委なのですから、同じ金融庁でも、監査人を処分する部門ではなく、監視委に行って、きちんとWH社ののれんを調べたのかを追求すればよいのにと思います。

もし、監視委がのれんの不正をあばけば、東芝への処分がさらに重くなるだけでなく、自動的に、監査人が見逃した重要な虚偽表示の金額も拡大し、監査人への処分も重くなります。

監視委が意図的にのれんの不正を摘発しなかったということを明らかにできれば、それだけで大スクープとなるでしょう。

追求すべき的が、まったくはずれている記事といえます。
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