傾斜マンション問題で、三井不動産らが損失計上を先送りしているという記事。
「横浜市都筑区のマンションが傾いていた問題で三井不動産や旭化成など関係する4社は、全4棟の建て替え費用の計上を2018年3月期以降に見送る方針であることが26日、わかった。原因や経緯の究明が進まず、約400億円の費用をどう負担するかメドが立たないためだ。」
「マンションの管理組合は19日、傾いていない3棟を含む全4棟の建て替えを正式に決めた。住民向けの慰謝料や仮住まいの家賃を含む費用は約400億円に上る見通し。」
記事によれば、合理的な推計もできないから引当金を計上しようにもできないということのようですが、これはおかしいと思います。
まず、問題のマンションを販売した三井不動産子会社が顧客に約束した建て替えなどの費用は、すでにその原因(マンションに欠陥があり三井も補償責任を認めている)が発生している費用であり、補償内容もほぼ固まっているので合理的な見積りも当然可能です。したがって、三井不動産はまず顧客に対する債務として、約400億円を引当てすべきでしょう。
ゼネコンの三井住友建設などにその金額の全部または一部を求償する取引は、顧客に対する補償とは別の取引です。これに関しては、記事によれば、まだ交渉中で、見通しも立っていないとのことなので、計上できません。今後の交渉の見通し・結果や場合によっては裁判の結果に従って、損失のマイナスまたは利益として計上することになります。
三井住友建設やその下請けである旭化成子会社や日立子会社に関しては、合理的な見積りができないから引当てしないという理屈は、ありうるでしょう(すでに若干の費用は引き当て済みのようですが)。
顧客への補償とゼネコンなどへの求償はひとまとまりの取引だから、まとめて処理すべきという意見もありそうですが、そうすると、例えば、タカタの不良エアバッグ問題で、自動車メーカー(ホンダなど)は見積もり可能なリコール費用を引き当て済みだが、タカタへの求償は話がついたものしか利益計上していないという例と整合しなくなります。
ホンダと三井不動産は、同じ大手監査法人が監査していますが、この辺の整合性はどうなっているのでしょうか。
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