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公認会計士の懲戒処分について(金融庁)

公認会計士の懲戒処分について

金融庁は、公認会計士2名に対し、懲戒処分を行いました(2018年10月2日付)。

処分内容は、1名が「業務停止3月」、もう1名が「戒告」です。

処分理由。

「上記2名の公認会計士は、株式会社SJIの平成27年3月期第2四半期の四半期レビューにおいて、訂正を要する可能性が高い重要な未確定事項があることを認識していたにもかかわらず、当該部分に係る「結論の基礎」となる適切な証拠を得ずに結論を表明した。

当該事実は、公認会計士法第26条に規定する信用失墜行為の禁止に違反すると認められる。」

公認会計士法では、「虚偽又は不当の証明についての懲戒」(30条)というのもありますが、十分かつ適切な証拠を集めずに結論(年度監査なら意見)を表明したというのは、これにあたらないのでしょう。(年度決算の監査ではなく、四半期レビューの不備だけで処分するというのは珍しいのでは)

処分されたのは、いろいろと話題に上ることが多い会計士ですから、金融庁としては違反なら何でもいいと考えたのでしょうか。

それにしても、この処分理由だけでは、他の監査事務所には、ほとんど参考になりません。もっと詳細に開示すべきでしょう。

金融庁もこういうのを研究しているはずです。



(宣伝文より)

「SECが会計や監査に関連した証券法違反として行政手続きを行った事案について、「会計・監査執行通牒(AAER)」を通じて詳細な内容を公表している。

SECの会計判例と言うべきAAERのうち1982~1985年に公表された中で、内容的に監査に関連する重要なものを13件に厳選し、その翻訳と要約および解説をまとめた。

AAERによって、
SEC による規制のあり方が時代とともにどのように変化しているのかを探求することができ、
監査人の判断や監査の質といった,通常外部からは窺い知ることのできない領域を探求することが可能になる。」

当サイトの関連記事(SJIへの課徴金納付命令について)(時期が合わないのですが...)

コメント一覧

kaikeinews
通常のケースだと、虚偽記載があり、その虚偽記載を監査人が見逃した(30条の「公認会計士が、相当の注意を怠り、重大な虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を重大な虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明した場合」など)、だから処分するというストーリーです。

今回のケースは、処分理由(30条を適用しなかった)を読む限りでは、虚偽記載はなかった(四半期財務諸表は正しかった)ということでしょう。

決算書が正しくても、未確定事項があり、それに関する手続きが不十分なまま結論を表明したとすれば、たしかに、レビュー基準違反ではあります。しかし、そもそも、どういう未確定事項だったのか、その未確定事項に対して、具体的にどういう手続きが不足していたのか、四半期レビューは、通常、限られた手続だけで結論を表明していいはずではないのか、など疑問点がいくつか浮かびます。

未確定事項といえば、例えば、大地震以降の東京電力の決算は重要な未確定事項だらけですが、無限定適正意見が出ており、かつ、金融庁の処分もありません。今回とどこが違うのか、知りたいところです。

金融庁には、監査人に監査に関する情報提供を(監査報告書以外でも)行うことを要求する前に、処分に関する説明責任を果たしてもらいたいものです。
AY
それにしても、この処分理由だけでは、他の監査事務所には、ほとんど参考になりません。もっと詳細に開示すべきでしょう。
同感です。
金融庁は「公開リンチ」をしているように見えます。
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