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元ペイントハウス:3億円架空増資の疑い 監視委が聴取

元ペイントハウス:3億円架空増資の疑い 監視委が聴取 - 毎日jp(毎日新聞)

ジャスダック証券取引所に上場していた「ペイントハウス」(現ティエムシー・TMC)が05年に行った増資が架空だった疑いがあるという記事。

「当時公表された資料などによると、ペイント社は05年5月6日、ソブリン社(引用者注:「ソブリンアセットマネジメントジャパン」(阪中彰夫社長))全額出資の投資ファンド「ロータス投資事業組合」に、事前に定めた価格(権利行使価格)で新株を取得できる新株予約権を付与すると発表。同月26日、ロータスから約3億4000万円の払い込みを受け27万8000株を付与した。

 一方、証券監視委関係者によると(1)ペイント社は千代田区(当時江東区)のシステム開発会社に約3億円を支払い(2)システム開発会社が英領バージン諸島の特別目的会社にほぼ同額を支払い(3)特別目的会社がソブリン社にほぼ同額を移動させた。阪中氏は取材に「商取引」などと主張しているが、監視委は▽(1)~(3)の実行日がいずれも増資金払い込み日の翌日である同月27日▽システム開発会社の筆頭株主がロータスで、特別目的会社の出資者にもソブリン社が含まれている--などから、商取引を装い資金を還流させたとみている模様だ。

 ロータスは27万8000株を05年6~8月ごろ売却し約2億円の利益を得た。」

記事によれば、ソブリン社側は意図的な還流ではないと主張しているようです。おそらく重要なのは、ペイントハウスがシステム開発会社に支払った3億円が、正当な支出だったかどうかという点でしょう。3億円に見合う資産やサービスをペイントハウスが取得しているのであれば、正当な支払といえますが、そうでなければ、「商取引を装い資金を環流」していたことになります。その場合には、支払先であるシステム開発会社への贈与ということですから、架空増資かどうかという以前に、その金額を資産計上していれば、架空資産の計上となり、費用にしていても計上科目が違っているわけですから、虚偽記載に該当します。

増資により払い込まれた資金が増資を引き受けた者に還流しただけで架空増資になるのかという点は、議論があるかもしれません。かつてメガバンクのひとつが外資の投資銀行に対して行った巨額の増資においては、増資で得た資金を国債に替え、その投資銀行の信用補完のために担保として差し入れる(したがって銀行には自由に使える資金は何もない)というスキームが使われました。この増資について当局は何も指摘していないので、違法性のないまともな取引であると認定されたのでしょう。

ペイントハウスの場合も、同社からの3億円の支払が、正当な商取引によって裏付けられたものであれば、資金がたまたま還流していたとしても、不正ではないと主張する余地はあるかもしれません。もちろん、取引の全体像を把握したうえで判断すべき問題です。

ペイントハウス3億円架空増資 監視委が調査

こちらの記事によれば、当局は、偽計取引だと見て調べているようです。

三井住友1500億円増資 米ゴールドマンが引き受け(2003年1月15日)

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