ソフトバンクグループ(SBG)の2018年4~12月期の連結決算(国際会計基準)を取り上げた記事。
「4〜12月は純利益でトヨタ自動車(1兆4233億円)を超えた。営業利益も62%増の1兆8590億円と過去最高。けん引役が17年に立ち上げたいわゆる「10兆円ファンド」、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)だ。ファンドの事業利益は8087億円と前年同期比3倍に拡大した。」
事前には、株安が悪影響を及ぼすと予想されていたそうです。
「代表例がファンドの主要投資先、米半導体大手のエヌビディアだ。18年12月末の株価は9月末の半分に下落。時価総額は約10兆円減少した。SBGにも数千億円規模の損失発生が予期された。」
デリバティブを活用したのだそうです。
「ところが蓋を開けてみるとファンド事業は10〜12月も1763億円の利益を上げた。エヌビディアの評価損は4473億円に達したが、未上場のベンチャー企業の価値増大の勢いが上回り補った。SVFの出資先約70社の多数は人工知能(AI)関連のベンチャー企業が占める。
さらに今回、効果を発揮したのがデリバティブによる「保険」だ。SBGはエヌビディアなど主要投資先に対し、一定以上の値上がり益を放棄する代わり下落時に強さを発揮するデリバティブ取引を組み合わせていた。営業外損益の段階ではデリバティブ取引関連が巨額の利益を生み、株式評価損の相当分を相殺した。
SBGは1月、エヌビディア株を全株売却。結局、全期間を通じてみれば巨額の利益を得て投資を回収した。」
少し詳しい記事。
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ソフトバンク、NVIDIA株全売却も「AI群戦略」は変わらず 株価急落もヘッジで損失緩和(ITmedia)
「SBGはNVIDIA株を平均単価105ドルで取得(のちにソフトバンク・ビジョン・ファンドに移管)。18年9月末に281ドルの高値を付けた後、12月には134ドルまで急落した。18年度Q1(4月~6月)には155億円、Q2(7月~9月)には1322億円の未実現評価利益を計上していたが、急落により、Q3は4473億円の未実現評価損失となった。
しかし、孫社長は「株価が絶好調のときに、市場に供給のある分、丸ごとコールとプットを集めていた(カラー取引)。黙って静かに半年以上かけて、毎月一番のぼり調子のところで保険を買い集めた」と、現物株を持ちながら価格の下落をヘッジしていたと明かす。
カラー取引により、デリバティブ関連利益として約3300億円の利益を上げたため、Q3の損失を約1169億円に抑えられたという。
SBGは18年12月31日までに所有するNVIDIA株を全て売却。結果として、投資額3000億円のうち普通出資していた807億円を、3624億円で回収した。」
エヌビディアはうまく巨額の利益を出せましたが...。
「NVIDIAもAI群戦略の投資先の1つだった。孫社長はNVIDIAを「AI革命をリードする企業として高く評価している」というが、そのような企業から資金を引き上げるのはAI群戦略と矛盾しているのではないか。
そんな疑問に、孫社長は「いわば卒業だ」と答える。
「事業会社であれば、自らが使うなら(事業と関連するなら)ずっと持っていないといけないかもしれない。しかしSBGは純粋な持株会社。投資をして適切な段階で売却するのが日常の業務だ。投資先企業が伸び続けているときには持ち続けるが、伸びが成熟してきた頃、そして他の機関投資家や一般投資家に支えられてきた頃、彼らが独自に歩んでいくのはいずれかの時期でやってくる」(孫社長)
「AI群戦略はそれでいい。株式の51%を持って会社をコントロールしようとも思っていない。20~40%の間でSVFが筆頭株主になり、(AI群戦略の)ファミリーがシナジーを出し合う。ファミリーに対して何らかのアクティブな影響は与えるがコントロールはしない。100社ほどの群れなので、2~3社が時々卒業していっても『大勢に異常なし』。こういうことだ」(同)」
投資先の少数株主は、ソフトバンクに勝手に卒業されては困るのでは...。
コラム:ソフトバンク孫社長、「時価総額安すぎる」は本当か(ロイター)
「61歳の孫社長は、自身の時価総額算定方法を、アインシュタインが発見した相対性理論の有名な公式「E=MC2」と同様に、「複雑な現実を説明するシンプルな方程式」だと述べ、以下のように説明した。
まず、中国の電子商取引大手アリババ・グループ(BABA.N)や、複数の携帯電話会社、その他多数の子会社、そしてビジョンファンドについて、自社が保有している株式価値を合算する。そこから導かれる企業価値は約25兆円となる。そこから純有利子負債の4兆円を差し引けば、「フェアな」時価総額は21兆円になる、と主張する。
だがソフトバンクグループの実際の時価総額は、それを60%程度下回る。孫社長は会見で、この差は説明がつかないと述べ、そのギャップを埋めるために上限6000億円で自社株買いを行うと発表した。」
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