会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

(ごまかせと命じた自覚は)ございません 東芝、田中社長の引責辞任会見の詳報(東洋経済より)

(ごまかせと命じた自覚は)ございません
東芝、田中社長の引責辞任会見の詳報


第三者委員会の報告を受けて、東芝の社長らが行った記者会見の模様を伝える記事。

(今後の経営や経営者の責任というより)会計そのものに関係している箇所を抜粋しました(全部ではありません)。


「――利益の概念について、田中社長や東芝の経営陣はどうとらえていたのか。それが、一般的に言われているものとどうずれていたのか。前田専務に聞きたいが、純資産の毀損額は4000億円くらいのイメージで良いのか。今回の遡及修正で、財務制限条項に抵触することがあるのか。

田中:・・・その利益そのものが捻出される過程において、不適切な会計に基づく利益であってはならない。大前提としての適正かつ厳正な会計に基づく利益の創出というあたりが、今回、ずれていたと考えている。

前田:資本額への影響が概算で4000億円なのかという点については、固定資産の減損、繰延税金資産の引当等、第三者委員会の報告を踏まえて、固定資産の減損の時期や金額などに加えて、過年度の会計の妥当性について、当社で検証を行い、その上で新日本監査法人が監査を行っている。監査が終わっていないので、現状では金額は把握していない。有価証券報告書を当局に提出するのは8月末なので、鋭意進めている。見通しが立った時点で適時開示するので、監査法人に対して全面的に協力し、金額の算定等について開示を進めていきたい。

財務制限条項については、今のところ、抵触するという指摘は頂いていない。金融機関と緊密な連携をし、今回の事情について丁寧に説明することで、条項への抵触については回避していきたい。(遡及修正をしたことについても)、金融機関に説明し、抵触を避けるよう万全の努力をしていきたい。」

(固定資産減損処理などは、今回公表された不正額には含まれておらず、未決着です。税効果の方は、不正の修正により、赤字に転落するわけではなさそうなので、心配されるほど影響はないのかもしれませんが、要注意ではあります。会社に騙されないよう、しっかり監査してもらうしかありません。)

「――責任は経営陣にあると言ったが、前回の会見で、プレッシャーをかけるのは経営陣として当然だと言っていた。(報告書では)経営層が積極的に不適切な会計の指示をしていたという記載があるが、その点の認識は前回の会見から変わったのか。

田中:個々の事案についての答えは控えたい。順法や適正な会計処理は大前提。その中で適正な利益を上げて、事業を拡大する。そのための経営者としての考え方を追求していかなければならない。プレッシャーがあるから不適切な会計をしても許されるということではなかったとは思うが、そういうことが少しでもあったとすれば、経営陣として深く反省しなければならない。」

「――報告書によると、「チャレンジ」と称して、不適切な会計報告を部下にさせていたとある。長期的に、不適切な会計をせざるを得なかった風土、上司に逆らえない風土があったと報告されているが、この点に関して社員に言いたいことは。

田中:一般の従業員にはまったく罪はない。経営陣、幹部、管理者がきちんと襟を正さなければならない。その中で最も重要なのが経営トップだ。私は不適切な会計処理を指示したという認識はないが、そのように、現実にご指摘いただいている部分もあろうかと思う。次の経営陣、管理者も含めて今後の再発防止、経営のやり方に反映させなければならない。全員が、今回のことを契機に、報告書のさまざまな指摘を真摯に受け止めて、きちんとした対策、そして知識、あるいは意識を含めた変革をしていかなければならない。」

「――第三者委員会の調査期間が今回、2008年度からが対象。ITバブルの崩壊時が一番大変だったと思うが、その時期をなぜ対象にしなかったのか。企業風土も、もう少しさかのぼって、いつぐらいから悪かったか、原因を究明しなければならないと思う。

前田:有価証券報告書の訂正期間ということでは、過年度、5年ということだ。良い企業風土を昔は持っていたと指摘頂いているが、企業風土については、現状、若干の問題があると第三者委員会は指摘しているが、経営刷新委員会等で改善を図る。10年前、20年前に大きな問題があるわけではないと考えている。

田中:会計処理のルール、適用の仕方も昔と比べて変わってきている。工事進行基準一つを取ってもそうだ。いかに最新のルール、解釈を適用して、適正な会計処理が行えるようにするかということも、我々は認識しており、きちんと対応していきたい。」

(「会計処理のルール、適用の仕方も昔と比べて変わってきている」ことを知りながら、昔の感覚でやっていた?)

「――米ウエスティングハウスの買収で、利益が思うように上がらなかったことが今回の事態につながったのか。

田中:ウエスティングハウスが原因だとは思っていない。

前田:ウエスティングハウスの数字は開示していないが、ウエスティングハウスのキャッシュフロー、損益は8割以上が保守、燃料の交換。安定した収益をきっちり上げていると認識している。さらに近年は国内の原子力事業部とのシナジーも実を結んできている。買収当時に比べて大幅に営業利益が拡大してきている現況がある。懸念は感じていない。」

「――問題の端緒が証券取引等監視委員会(SESC)から検査を受けたことだった。この検査がなければ東芝は今回の問題を公にしなかったのか。1500億円超える修正金額をどう回収しようとしていたのか

田中:SESCからの開示検査、報告命令に端を発したのは事実。それがもしなければ、という仮定の話に答えるのは非常に難しい。適正な会計処理は経理、財務部門を通じて強化を図らなければならないと1年くらい前から認識していた。具体的な何かがあったわけではないが。

私の若い頃の認識は、経理・財務部門は、たとえ社長がこういう(不正な)ことをしろなどと指示をしても、止めるのが経理財務部門だと。そのように入社したころから認識していた。きちんと強化したほうがいいのではないかと、1年ほど前に前田と話をした。前田も同じように経理カンパニーの体制の強化をしないといけないという認識があった。CCFO(カンパニー最高財務責任者)という役職を作り、その任命は私から直接行った。この4月1日に実はそのように変えていた。具体的な懸念、事案があってそうしたわけではないが、経理部門以外にも何らか体制の強化、変更があるかもしれないと思っている。

前田:4月1日から、グローバルで財務会計業務を一元的に管理していこうとして、2016年度からIFRS(国際会計基準)を採用した。こういう動きを始めたのが数か月前。会計処理基準の見直し、厳格な運用については、第三者委員会からも指摘を受けている。特に工事進行基準については、マニュアルなどを策定中だ。これも第三者委員会からの重い指摘だったが、半導体の原価差額の調整方法を見直し中だ。投資家の信頼回復に向けて一丸となって進んでいきたい。

田中:誤解しないでほしいが、決して私の責任逃れで今、そういうことを申し上げたのではない。」

(たしかに、2014年4~12月で、不正処理額を300億円ほど減らしています。ソフトランディングを目指したのかもしれませんが・・・。また、理屈に合わない会計処理(この事件でいえばPC部品の有償支給の処理など)は、重要性がないからといって放置せずに、悪用されそうなものは、つぶしておくべきなのでしょう。)

「――4月の段階では特別調査委員会という形で、第三者委員会による調査の形はとらないという判断をした。しかし、結果としてインフラ分野だけでなく、あらゆる部分で不適切だった。なぜ最初に第三者委員会の調査形態を取らず、インフラ分野に調査範囲を限定したのか。

室町:工事進行基準案件について報告命令が来て、調査してきた。調査の過程でほかの分野も調べなければと監査法人からも提言があり、全社的に調べるというステップになった。工事進行基準案件が発端で、このようにエスカレーションすることは当初からは予想できていなかった。」

(監査法人も、多方面に不正があるとうすうす知っていた?)

報告書公表前に書かれた記事ですが・・・

東芝、会計管理の呆れた実態
不正を誘った究極の社内論理
(ダイヤモンドオンライン)

「社内では、毎月、社長に数字を報告する「月例報告会議」が行われていたが、それとは別に、部門によってはカンパニー社長に報告をするための予測会議というものも行われていた。社長への報告の前段階で、社長の意を忖度したカンパニー社長が、過度な要求を増長させていたとの証言もある。

むちゃな予算を要求するトップと、逆らえない部門担当者、さらに現場ではなくトップの意向だけを重視するカンパニー社長。これら3者が責任をお互いになすり付け合ったまま、内向きの論理で、数字だけが積み増されていった可能性があるのだ。これぞ、究極の「無責任体質」といえるだろう。」

あまりにヒドい東芝の謝罪会見
「自分さえよければいい」型の経営者がこの国をダメにした
(現代ビジネス)

「内部統制、コンプライアンス、社外取締役といったコーポレートガバナンスに関する体裁だけは整えたが、組織は頭(経営陣)から腐っており、それが現場にも伝播し、皆見て見ぬふりで実態は悪い方向に向かう。」
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