会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

スペースバリューHD、不適切会計 前社長が指示(日経より)

スペースバリューHD、不適切会計 前社長が指示

東証1部上場のスペースバリューホールディングス(日成ビルド工業が持ち株会社化)が、不適切会計に関する第三者委員会の調査結果を公表したという記事。

マレーシア子会社での不適切会計や組織的な原価の付け替えに加え、森岡篤弘前社長の指示のもとで横浜市のホテル事業でも不適切な会計処理があった。第三者委は同氏の反社会的勢力関係者とのつながりも指摘しており「経営トップのガバナンス問題に起因する」と厳しく指摘した。

同日、2014年3月期から18年4~9月期の連結業績への影響を公表した。この期間に5億5000万円の純利益が過大に計上されていたことがわかった。不適切会計があった期間は長期間に及び、影響額は変動する可能性がある。」

承認されていない利益相反取引などもあったようです。

報告書はこちら。

第三者委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ(PDFファイル)

(一部黒塗りの不具合があったということで訂正版が出ています。→(再掲載)第三者委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ

決算数値への影響額としては、純資産ベースで1%弱(直近の四半期)で、すごく大きいというほどではありません。


(報告書内の資料ではなく、会社作成のもの)

前社長について厳しく書いているようです。

「6 社長としての資質

経営トップに必要な資質は、会社の事業内容やその時々の情勢によって異なり、強いリーダーシップが必要とされる局面もあれば、慎重で謙抑的な姿勢が求められる局面もある。しかし、どのような場合であっても、その前提として、法令を遵守し、内部統制システムを尊重する意識は必須である。

SVH の場合、上記で検証したとおり、森岡代表には、上場企業のトップとしての自覚に欠け、内部統制に関する問題意識が著しく低いと評価せざるを得ない。

接待交際、反社会的勢力ないし密接交際者との交遊、クラブでの破廉恥行為などの状況も不見識であり、社員や株主に対する責任という観点が欠落している。」

前社長の携帯の「Chats」送受信記録(今年3月までの1年2ヶ月分)を調べた結果より。



黒塗り部分は女性の名前のようです。

交際費の使いすぎも指摘しています。

「当委員会は、調査の結果得られた資料に基づき、2015 年 7 月から 2019 年 1 月までの 3 年 7 か月間について、森岡代表関連の接待交際費・慶弔交際費及び旅費交通費の集計を行った。

その結果、3 年 7 か月間の累計で接待交際費・慶弔交際費が 1 億 4578 万円、旅費交通費が 3922 万円、この合計を平均すると毎月約 430 万円使っている計算となる。この期間で支払金額累計が最も多いのは D5 ホテル(2072 万円)である。森岡代表は東京に自宅があるにもかかわらず、私的事情を理由に同ホテルを東京での定宿として利用して会社に負担させており、接待にも頻繁に利用している。その他、クラブへの支払も多額に発生している。」

会計監査人にも厳しい評価を下しています。(ちょっと厳しすぎ?)

「(3)会計監査人監査に対する当委員会の評価

ア 職業的懐疑心の不足

(ア)原価付替え等

あずさ監査法人は、2016 年 3 月期に発覚した NBK 福岡支店における原価付替えを契機として、そのリスクに対応するための監査手続を立案し実施してきたが、2017 年 3 月期以降においても継続して発生していた原価付替え及び債務未計上を検出するには至らなかった。これらの監査手続において監査差異が検出されていなかった点については、会計監査は全件に対する精査ではなくサンプリングによる試査であること及び協力業者が原価付替えに協力していたことといった事情のみに着目すれば、やむを得ないとも考えられる。

しかしながら、あずさ監査法人は、NBK 内においては売上達成のプレッシャーが強いということは認識しており、原価付替えが検出事項として記載されている内部監査実施報告書要約版の詳細な内容を検討していれば、原価付替えが特定の一地域での事象ではなく、2017 年 3 月期以降も全国的に発生していたことは気付き得たはずである。

(イ)山下町案件

山下町案件については、影響金額が 5500 万円と金額的な重要性があるとまではいえず、詳細な監査手続を実施していなかったとしても致し方ないものではあるものの、一度は資産計上されていた建設仮勘定が損失処理され、決算発表の直前に再度資産計上されているという異常点に着目し、追加的な監査手続の実施を検討する余地もあったと思料する。

(ウ)マレーシア案件

マレーシア案件については、その金額的な重要性が低く、高いリスクを認識するに足る情報を NBK があずさ監査法人に対して提供していなかった事情に鑑みれば、監基報 600 に従い分析的手続を実施してきたというあずさ監査法人の説明にも一定の合理性はある。

しかしながら、NBK にとってマレーシアにおける初めての立体駐車場建設事業であり、また当初の完成予定時期である 2016 年 10 月を大幅に超過して何度も完成時期の延期がなされていた状況に鑑みると、その金額的な重要性にかかわらず、より詳細なヒアリングや現地視察を行うことが望ましかったと思料する。

(エ)小括

これらのように、あずさ監査法人において、資料の確認やヒアリングを十分に行わず、企業環境の理解が不十分なままにリスク評価を行った点は、職業的懐疑心が欠けていると評価せざるを得ず、NBK において不適切な会計処理が行われていることに気付き得る契機が多分にあったにもかかわらず、その機会を逸していたと評価せざるを得ない。

イ 指導・助言機能の不足

(以下省略)」
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