苛酷なノルマ、損失補填...全てを明かした
オリンパス粉飾事件における「指南役」として逮捕、起訴された元野村証券の証券マンが書いた『野村證券 第2事業法人部』という本を紹介した記事。著者本人にインタビューしています。
「そんな横尾氏が、なぜ今、この本を著したのか。現在は最高裁に上告中という横尾氏に、執筆にかけた思いを聞いた。(取材/文・平井康章)
「一種の暴露本のように受け取られる方もいるかもしれませんが、それは違います。野村證券に恨みがあるわけではありません。厳しいながらも結果を出せば、若くても権限を与えてくれる極めて自由闊達な社風で育ったことは、いまでも誇りを持っています。
私がこの本を書こうと考えたのは、『オリンパス粉飾決算事件』の捜査やその後の裁判、つまりは日本の司法制度がいかに杜撰なものかを明らかにしたかったからです。しかし、一般の方にはこの事件について興味を持ってもらえないこともわかっていました。今の自分にあるものは何かを見直した時、私が20年近く務めた野村證券の話なら、金融・証券マンのみならず、多くの方の関心を呼ぶだろう、と……。
そこで、一人の証券マンが地獄へと転落する過程を赤裸々に綴り、追体験してもらうことで、この国の経済システムや司法制度の歪みを知ってもらおうと考えたのです」」
この記事では証券マン時代の話が主ですが(昔の証券会社は今の基準で考えるとかなりでたらめなことをやっていたようです)、終わりの方で、オリンパス事件にも少しふれています。
「オリンパス事件の詳細や経緯は本書に譲るが、そもそもなぜこれほどの巨額粉飾が起こったのだろうか。横尾氏はその遠因をこう分析する。
「資金運用に関する情報をオリンパスの経営陣が知らなかったことが挙げられます。オリンパスでは財務部長、副社長、監査役などを歴任したひとりの人物が、独断で資金運用を行ない、莫大な損失を抱えていた、と考えています。歴代の社長たちはそのことを知らず、ようやく気づいた時点ではもう手遅れの状態だった。
私は野村證券時代、この人物に『無茶な運用はおやめなさい』とさんざん忠告していたのに、彼は聞き入れなかった。そればかりか、後になって粉飾の『指南役』は私だったなどと事実に反する証言をしている。もっと早い段階で、オリンパスとの関係を断っておくべきでした。
この事件をめぐる上告審の行方は、なお予断を許しませんが、私はまだ諦めていません。日本の刑事事件の無罪確率は、0.1%、1000人に一人です。とても低い数字ですが、私はあの野村で、それよりもっと低い確率の中で勝ち残ってきたという自負がありますから」」
野村證券第2事業法人部 横尾 宣政 講談社 2017-02-22 by G-Tools |