会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「建設業において工事進行基準を適用している場合の監査上の留意事項」の改正

日本公認会計士協会 / 委員会報告 / 「業種別監査委員会報告第27号「建設業において工事進行基準を適用している場合の監査上の留意事項」の改正について」の公表について

日本公認会計士協会は、業種別監査委員会報告第27号「建設業において工事進行基準を適用している場合の監査上の留意事項」の改正を、2008年9月2日付で公表しました。報告書の表題は少し変更され「建設業における工事進行基準の適用に係る監査上の留意事項」となっています。

ASBJの「工事契約に関する会計基準」・同適用指針や現行の監査リスクモデルに対応して見直しを行ったものですが、現行のものと基本的な点では大きな差異はないようです。むしろ、少し緩めているのではないかと思われる箇所もあります。

例えば、虚偽表示リスクの評価における留意点では、「工事進行程度の見積りに当たっては、建設工事に関する専門的知識及び実務経験を有する工事監理者あるいは現場技術者が行う物理的・技術的進行程度(工事出来高)に関する判断に依拠せざるを得ない。」という記述が削除されています(原価見積りに関しては同様の記述あり)。

また、「工事収益総額の見積り」で設計変更についてふれている箇所では、以下のような書き方になっており、現行の記述と比べると甘くなっています。

「設計変更の対価の変更を工事収益総額に反映するためには必ずしも契約書の形式で記載されている必要はなく、その対価の額が確定額である必要もない。しかし、対価の変更について実質的な合意があることが認定でき、かつ、それに基づいて対価の額の信頼性のある見積りができることが要件となっていることに留意する。」

「しかし」以下で条件は付けているものの、契約書は不要と断言しています。もちろん、契約書という形式を必ずしも取る必要はないと思いますが、合意があったことを証明するような施主からの文書なしに、合意があることを認定できるのでしょうか。(ただし、実証手続の箇所で契約書がない場合の具体的な書類名を挙げており、監査人はそれに基づいてチェックしなければならないので、実質的な変更ではないのかもしれません。)

工事進捗度の見積りに関しては、「未使用材料、未達材料が工事原価に含まれていないこと」「仮設材料については、取得原価より回収額を控除した金額を工事出来高率等合理的な方法で配分し、未発生分については工事原価より貯蔵品勘定等に振り替ること」という留意点が削除されています。

さらに「内部統制の有効性の評価」という項目が丸ごと削除されています。そこには以下のような記述がありました(旧報告書から一部抜粋)。

「・・・適用基準、完成工事高・工事損益の計算方法、設計変更等への対応、JV工事における取扱い、見積計上方法、備え置くべき証憑等についての詳細な規程を整備していることを確かめる。次に工事進行基準の適用に当たっての見積作業には会計部門及び工事部門に高度な判断が求められるため、これらの部門に適切な人材を配置していることと部門間の権限等が明確になっていることを確かめる。」

「請負金額は、受注時に工事請負契約書・注文書により確定することになるが、未確定のまま工事に着手する場合がある。また、着工後設計変更等により請負金額が修正される場合がある。これらの場合、請負金額の見積方法の適切性や算定した金額が発注者の実質的合意が得られているか又は得られる蓋然性が高いかが問題になるが、これらの事項に関する取扱いをルール化し、適切に運用していることを確かめる。」

「実行予算は営業部門による損益予測ではなく、工事内容の積上げ(経験豊富な役職者の関与、購買・発注部門との連携を含む。)により作成され、組織的な承認手続がなされているかに留意する。また、設計変更等に基づく実行予算の修正に当たっては、修正の時期、修正結果の承認手続及び会計部門への情報伝達に関する統制活動を適切に整備運用していることを確かめる。」

「工事進行程度は、一般的に原価比例法によって算定されるため、まず発生原価(外注費、材料費、労務費、経費)を、役務提供や使用に応じて計上する手続が確立していることを確かめる。」

別の箇所に箇条書き的に簡略化されて記載されている項目もあるようですが、個人的には従来の記述の方が原則的な考え方がはっきり示されており、わかりやすいように感じました。

ところで、工事進行基準は請負的なソフトウェア開発にも適用されます。9月4日の日経新聞に、主要なソフトウェア開発会社で構成する情報サービス産業協会という業界団体が、「工事進行基準」を適用する際の解説書を作成したという記事が出ていたので、探してみました。

受注制作のソフトウェアからみた『工事契約に関する会計基準』の重要論点解説

残念ながら、会員限定の報告書のようです。

工事契約会計工事契約会計
建設業振興基金建設業経理研究会

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