上場企業の役員報酬開示に関する記事。先月公表された開示府令案のことをいっているようです。
「金融庁は上場企業に役員報酬の決め方を開示するよう義務づける。業績によって変わる業績連動報酬が総額に占める割合や、どの指標に基づいて算出するかなどのルールを公開してもらう。日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者は報酬の算出方法が不透明であることも批判された。報酬の透明性が高まれば、ガバナンス(企業統治)が一段と強化される。
金融庁が金融商品取引法に関連する内閣府令を改正する。2019年3月期決算の企業から適用される。」
「今期からは有価証券報告書で、固定して払う報酬と業績連動報酬の割合を開示するよう求める。社長や最高経営責任者(CEO)などのトップ層と他の役員で違いがあれば、それぞれ記載が必要だ。
営業利益や純利益など、業績連動を算出するもとの指標も明記する。ストックオプションの場合は、その決算期に付与する権利の決め方を詳しく明記することなどが想定される。」
同趣旨の日経社説。
上場企業は役員報酬開示の透明性上げよ(日経)
「以前から日本は上場企業の役員報酬に関する情報が限られ、あいまいだという国内外の投資家の指摘があり、企業統治改革でも焦点のひとつだった。金融庁は金融審議会の報告を経て、2019年3月期から有価証券報告書で役員報酬の開示の拡充を求めている。
重要なのはまず誰が役員報酬を決めるかだ。報酬の総額は株主総会で決議され、その配分を取締役会に一任するが、実際は経営トップが配分を決める例も多い。自分で自分の報酬を決められるのではお手盛りとの批判は免れない。
金融庁のコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は、独立した社外取締役を主要メンバーにした報酬委員会の設置を促している。報酬決定の客観性や透明性を高めるため、誰が報酬方針を決めるのかや、委員会の有無、活動状況が開示されることで、株主との対話の起点になるはずだ。
報酬の中身を見えるようにするのも大切だ。報酬の考え方や業績に連動する部分の内容、目標達成度の測り方といった詳しい開示が今後求められる。算出根拠が妥当か、実際の支払額がそれに沿うものかなど、外部から検証できるようになる意味は大きい。」
開示府令改正案が出たのは11月初めであり、日産ゴーン事件発覚前ですが、金融庁としては、やってる感を出したくて、マスコミにレクチャーしたのでしょう。
当サイトの関連記事(開示府令改正案について)
「役員の報酬について、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)、プログラムに基づく報酬実績等の記載を求めることとします。」(プレスリリースより)
開示の拡充は結構なことですが、それ以前に、役員報酬の会計処理についても明確にしてほしいものです。
例えば、日産ゴーン事件で問題になっている役員退任後に支払われる報酬の処理です。
まず、役員退職慰労引当金が必須かどうかという問題があります。日本基準の会社では引当てする会社が増えているようにも思われますが、会計基準上ははっきりしていません。また、IFRSでは、考え方が違うかもしれません。
また、来期退任予定の大株主でもあるワンマン社長が、内規による退職慰労金のほかに、(例えば)功労金5億円と終身顧問報酬年間5千万円を、当期に自分と側近たちで決定したというような場合(当然株主総会や取締役会の承認はまだなされていない)、内規による引当金繰入額のほか、「追加の5億円+5千万円×平均余命」を当期の費用に計上した上で、役員報酬開示にも記載するべきなのでしょうか。私見では、計上不要(まだ会社の債務になっていないため)と考えますが、日産ゴーン事件の特捜部の考え方だと、決定している以上、当期に費用計上し、当期の有報で開示すべきということになります。
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