米国で上場している中国企業の監査について、米PCAOBが十分に検査できるようにするかどうかという問題で、米中当局は永くもめていましたが、今年8月に協定が結ばれ、一応解決していました。
その後、実際に検査できるのかどうかが注目されていましたが、この記事によると、PCAOBは、「検査するための全面的なアクセスを初めて得た」と発表したそうです。
「 米上場企業会計監視委員会(PCAOB)は15日、米国に上場している中国企業の監査状況を検査するための全面的なアクセスを初めて得たと発表した。」
「PCAOBのエリカ・ウィリアムズ委員長は「潜在的な問題を根絶し、企業に責任を持って解決させるため、完全かつ徹底的な検査・調査を行うことが史上初めて可能になった」と述べた。
B・ライリー・フィナンシャルのチーフ市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏は、上場廃止の恐れがなくなったように思える中国企業の見方が変わると指摘した。」
これまでの経緯。
「米中は今年8月、米上場の中国企業の監査状況を米当局が検査することを認める協定に調印。中国は長年、国家安全保障上の懸念を理由に検査受け入れに難色を示していた。
協定ではPCAOBに対し、中国企業の未修正の監査書類を入手して中国の監査法人職員から聞き取りを行う権限や、検査対象を独自に選ぶ裁量を与えた。
投資家などの間では、米検査官が実際に合意通りのアクセスを得たかどうかPCAOBの報告に関心が集まっていた。」
検査結果はどうだったのか。
「PCAOBは、独自の裁量でKPMGの中国法人とプライスウォーターハウスクーパース(PwC)の香港法人を検査対象に選定したと明らかにした。
ウィリアムズ委員長は、検査では「多数の潜在的な不備」が見つかったとしたものの詳細には言及せず、他地域での初検査で見られたのと同類と述べるにとどめた。
また「きょうの発表を中国・香港企業(の監査状況)に問題がないことを示すものと誤解すべきではない」とくぎを刺した。報告書は来年に公表する。」
ようやく検査はできたけれども、他の国と同じような監査不備があったということなのでしょう。
この問題は、中国企業を米国資本市場から閉め出したいという意向が背景にあるのかもしれませんが、建前上は、米国上場企業の監査の質を保つために、PCAOBが監査を検査できるようにするという話なので、今後、中国当局にじゃまされずに、検査を継続して実施できれば、米国側も文句は言えないでしょう。
米当局、中国企業の監査確認可能に 上場廃止リスク低下(日経)
「米国側は検査にあたって①対象案件の選定で中国当局や監査法人に事前通知せず、干渉も受けない②改ざんのない完全な監査報告書を含め、必要な情報を保持できる③案件の担当者に直接面談し、証言を得られる――の3点を重視した。一連の作業を踏まえ、中国・香港企業の監査状況を検査するための「完全なアクセス権を確保した」(PCAOBのエリカ・ウィリアムズ委員長)と判断した。
今回の検査では、監査状況について多数の潜在的な問題点が見つかったものの、そうした点を発見できたこと自体が検査プロセスが正常に機能した証拠だと前向きに評価した。2023年以降も定期的な検査・調査を実施する計画という。今後、中国当局による妨害などがあった場合は、現在の評価をただちに変更する考えも示した。」
PCAOBのプレスリリース。
PCAOB Secures Complete Access to Inspect, Investigate Chinese Firms for First Time in History(PCAOB)