企業会計基準委員会は、実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」を、2021年8月12日付で公表しました。
令和2年度税制改正において、連結納税制度を見直し、グループ通算制度へ移行することとされ、2022年4月1日以後に開始する事業年度から適用することとされました。
本実務対応報告は、グループ通算制度を適用する場合における法人税及び地方法人税並びに税効果会計の会計処理及び開示の取扱いを明らかにすることを目的とするものです(2項)。
実務対応報告の基本的な方針として、連結納税制度とグループ通算制度の相違点に起因する会計処理及び開示を除き、連結納税制度における実務対応報告第 5 号等の会計処理及び開示に関する取扱いを踏襲しています(本実務対応報告の概要より)。また、本実務対応報告に定めのあるものを除き法人税等会計基準(企業会計基準第 27 号)又は税効果会計基準等の定めに従うこととし、グループ通算制度に特有の会計処理及び開示のみ示しています(同上)。
概要は以下のとおりです(主として「本実務対応報告の概要」より)。
1.適用範囲
・グループ通算制度を適用する企業の連結財務諸表及び個別財務諸表並びに連結納税制度から単体納税制度に移行する企業の連結財務諸表及び個別財務諸表に適用
・通算税効果額(5項で定義、末尾の図も参照)の授受を行うことを前提とし、通算税効果額の授受を行わない場合の会計処理及び開示については、連結納税制度における取扱いを踏襲するか否かも含め取り扱わない。
2.会計処理
・通算税効果額は、個別財務諸表における損益計算書において、当事業年度の所得に対する法人税及び地方法人税に準ずるものとして取り扱う。
・連結財務諸表においては、「通算グループ内のすべての納税申告書の作成主体を 1 つに束ねた単位」に対して税効果会計を適用する。
・本実務対応報告に定めのあるものを除き、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、利益に関連する金額を課税標準とする税金の種類ごとに適用する税率を算定する(9項)。
3.表示
・通算税効果額は、法人税及び地方法人税を示す科目に含めて、個別財務諸表における損益計算書に表示する。
・通算税効果額に係る債権及び債務は、未収入金や未払金などに含めて個別財務諸表における貸借対照表に表示する。
・個別財務諸表においては、同一納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は、双方を相殺して表示し、異なる納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は、双方を相殺せずに表示する。
・連結財務諸表においては、法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債について、通算グループ全体の繰延税金資産の合計と繰延税金負債の合計を相殺して、連結貸借対照表の投資その他の資産の区分又は固定負債の区分に表示する。
4.注記事項
・グループ通算制度を適用した場合又は取りやめた場合に加えて、本実務対応報告により法人税及び地方法人税の会計処理又はこれらに関する税効果会計の会計処理を行っている場合には、その旨を税効果会計に関する注記の内容とあわせて注記する。
・繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳等の注記について、法人税及び地方法人税と住民税及び事業税を区分せずに、これらの税金全体で注記する。ただし、注記することを妨げるものではない。
・連帯納付義務については、偶発債務としての注記を要しない。
2022 年 4 月 1 日以後に開始する年度の期首から適用となります。税効果会計に関する会計処理及び開示については、2022 年 3 月 31 日以後に終了する年度の期末の連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができます(四半期は不可)。
実務対応報告第 5 号等及び実務対応報告第 39 号については、本実務対応報告の適用により、当該実務対応報告を適用する企業が存在しなくなった段階で廃止です。
経過措置として、連結納税制度を適用している企業がグループ通算制度に移行する場合、 単体納税制度を適用している企業がグループ通算制度に移行する場合、連結納税制度から単体納税制度に移行する場合について、規定を設けています。
グループ通算制度のイメージ図。
(公開草案のときの資料に掲載されていたものですが、同じような図が今回公表資料の中にもあります。)
最近の「企業会計基準委員会」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事