楽天モバイル(楽天グループの100%子会社)の巨額横領事件の記事。関係者が逮捕されて、検察からいろいろリークがあるのか、新たな情報が報じられています。
詐取されたカネが流れていたのは、楽天モバイルの再委託先「トレイル」の社長が、このためにわざわざ買収した会社だったそうです。
「捜査関係者などによると、H容疑者(「トレイル」社長)は2020年2月ごろ、東京都港区のコンサル会社「TKロジ」を約400万円で買収し、S容疑者(楽天モバイル元物流管理部長)の妻を代表取締役とした。TKロジの口座には、H容疑者が関係する別の会社から「コンサル料名目」で定期的に多額の現金が送金されていたことが確認されているという。
TKロジのような詐取金還流のための会社は複数あったとみられ、詐取金を資金洗浄(マネーロンダリング)していた疑いもある。」
「トレイル」社長は、楽天モバイル元部長の指示でやったことだと言い訳していたそうです。
楽天モバイル元部長から「指示受けた」 水増し請求容疑の下請け社長(毎日)
「楽天モバイルの携帯電話基地局整備事業の業務委託費を巡り、同社元部長や委託先が同社から約25億円をだまし取ったとされる詐欺事件で、下請けの運送会社「TRAIL」社長のH容疑者(49)が逮捕前、複数の取引先関係者らに自身の関与を認めた上で「(楽天モバイル元部長の)指示を受けてやっただけ」と釈明していたことが関係者への取材で判明した。「(楽天にとっては)2000万円持ってて50円取られた程度に過ぎない」などと開き直るような発言もしていたという。」
たしかに、楽天にとっては、過年度決算訂正もやらなくていいような、重要性の低い出来事なのでしょう。
楽天モバイル側の内部統制はどうだったのか...。
楽天モバイル元部長、不正請求の「検収」を担当 不正ないと報告か(朝日)
「関係者によると、楽天モバイルは2019年7月から携帯電話基地局の建設に使う部材の物流管理を日本ロジステックに委託し、日本ロジから受け取った毎月の業務の見積書に従って委託料を支払っていた。支払いに当たっては事前に楽天モバイル内で業務内容や支払金額が正しいかを確認(検収)していた。」
検収を担当していたのが、S容疑者の物流管理部でした。「基地局の部材の物流全般を統括」していたそうです。
「S容疑者は日本ロジ元常務のM容疑者(53)らと共謀し、日本ロジが楽天モバイルから委託されていた部材の「保管料」や「輸送費」を水増しして請求。物流を担当する部長として自らその金額に不正はないと楽天モバイル社内に報告し、支払わせていた疑いがあるという。」
普通ならいきなり部長が検収することはないでしょう。担当者が業務の実績などと照合し、責任者の承認を求める、その承認後支払いという流れのはずです。部長が1人でやっていたとすれば、内部統制の不備でしょう。
逮捕容疑の被害額は25億円と報じられていますが、実際の損害額は、もっと大きなもののようです。
楽天モバイル、詐欺事件の実損100億円 元部長、水増し請求主導か(朝日)
「捜査関係者によると、元部長のS容疑者(46)らが不正に請求した総額は、2021年12月までの2年余りで約300億円に上る。警視庁が精査したところ、このうち100億円近くが架空の保管料や輸送費など実態のない業務を水増しした請求で、楽天モバイルが受けた損害となるとわかった。残りの約200億円は取引の対価だったが、取引自体が不正と判断されたという。」
300億円の支払いで1億円(1年では数千万円)が水増しだったというのなら、あり得るのかもしれませんが、100億円(支払額の3分の1)も不正だったというのは、ちょっとひどすぎる(どこかの後進国並み?)。
決算の過年度訂正はやらないとしても、内部統制に重要な不備があったことは明らかなのでは。
楽天グループの2022年12月期有報の内部統制報告書で、どういう扱いになるのか、注目されます。