会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

新電力ベンチャー「パネイル」民事再生法を申請(Business Insiderより)

新電力ベンチャー「パネイル」民事再生法を申請。負債総額61億円、“未来のユニコーン企業”に何があったのか?

パネイル」という新電力ITベンチャーの破綻を取り上げた記事。

20日の日経でも取り上げていますが、こちらの方が、東電子会社との訴訟などについて詳しく書いているようです。

「パネイルは東工大卒、ディー・エヌ・エー(DeNA)出身の名越達彦氏が2012年に創業した電力小売りベンチャーだ。

2016年4月に電力の小売が全面自由化されると、次世代型エネルギー流通基幹システム「パネイルクラウド」を手掛ける同社も小売事業に参入。AIを活用し、効率的に電力調達や需給管理、料金請求ができるシステムは、地域密着型の営業販売もあって好調だった。

2017年9月期には売上高78億円、営業利益3億円まで業績を伸ばし、「有望な(未来の)ユニコーン企業のひとつ」(VC関係者)と見る向きもあった。

ところが、2018年9月期に営業損失15億円の赤字を計上。背景には卸電力取引所の価格の高騰があった。自前で電力生産設備を持たないパネイルは、電力需要の急増による電力仕入れ価格の値上がりで資本を大きく毀損した。」

同社は、東京電力HDの電力小売子会社「東電EP」との合弁会社「PinT(ピント)」を2018年に設立しましたが、そこにパネイルのCTO(最高技術責任者)が移籍するという人材引き抜き問題が発生し、訴訟になっているそうです。

「パネイル側は同年4月21日、東京地裁に対し「S氏のPinTでの就業差し止め」「S氏がPinTから引き受けているシステムの開発、運用、保守等の業務受託の差し止め」を請求する仮処分を申請した。

東京地裁はパネイル側の申し立てを全面的に認め、担保金4500万円の供託を条件に2020年7月20日付で仮処分を決定した。S氏は決定内容を不服として、異議を申し立てたが、認められなかった。

また、パネイル側が証拠保全を申し立て、東京地裁の裁判官の立ち会いのもと、S氏の自宅などへの立ち入り調査を実施。パネイル側のライブラリがPinT側で複製されていたことが、S氏のパソコン内の記録から判明したという。

パネイル側は「知的財産権はパネイル側にありライブラリを複製することを認めたことはない」とし、「対価等正式な契約の締結なくシステム関連の業務を提供してきたが、S氏の引き抜きによりPinTとの信頼関係が崩れた」「PinTに対価等正式な契約の締結を求めたが、PinTからこれを拒絶された」と主張。

「これらは、パネイルを共同事業から排除するための『新興いじめ』であるとともに、知的財産の無断複製であり、S氏、PinT、東電EPらによる『共同不法行為』」とも主張している。2020年9月11日、パネイル側はS氏に対し、PinTからの業務委託禁止や損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こしている。」

上記日経記事では、大企業と同じ土俵で戦う市場はスタートアップには難易度が高い、借入への過度な依存は危うい、スタートアップの支え手が未成熟といった点を指摘しています。

「東電の手口はいじめ」協業ベンチャーが怒る訳
合弁相手パネイルは不法行為で提訴する方針
(2021年1月)(東洋経済)

株式会社パネイル(帝国データバンク)

「猛暑に伴い電力需給がひっ迫し、電力の仕入れ価格高騰など価格変動リスクに十分に対応できず、自社による仕入れ販売で逆ザヤが発生し、2018年9月期は当期純損失約26億6607万円を計上するなど厳しい運営を強いられていた。その後、同業他社との競合が激しさを増すなか、金融機関に対し返済猶予を要請。さらに2020年2月に資本金を1億円に減資するなど経営改善に努めたものの、奏功しなかった。こうしたなか、当社の技術責任者の他社への移籍を巡りトラブルが発生するなど動向が注目されるなか、今冬の電力価格高騰の影響により資金繰りが急速に悪化。自主再建を断念し、法的手続きにより再建を目指すこととなった。」
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