会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

新興企業の株式上場に「監査難民」の危機 解決策は (日経より)

新興企業の株式上場に「監査難民」の危機 解決策は (記事冒頭のみ)

新規株式公開(IPO)を目指す企業が監査難民状態だという記事。

「IPOでは公認会計士による2期分の監査証明が必要。2〜3年前はスタートアップが複数の監査法人を競わせて選ぶ「買い手市場」だったが、立場は完全に逆転した。」

監査法人側の事情は...

「背景にあるのは監査法人の人手不足だ。「東芝の不正会計を受け、大手企業が相次いで監査法人を代えている大手からの受注を優先するため、IPOの監査は絞り込むしかない」(大手監査法人のIPO担当者)

別の大手法人の担当者は「管理体制が弱いスタートアップの仕事は受けられない」とも明かす。以前は管理体制が未熟な企業に会計士を送り込んで指導していたが、そんな余裕はない。一方でIPO準備企業からの引き合いは多く、業務量は3年前の2・5倍に増えているという。これがボトルネックの正体だ。

働き方改革も苦境に拍車を掛ける。以前は決算の繁忙期には深夜作業が当たり前だったが、ある監査法人は夜間になるとシステムを止め、仕事をできなくしている。」

企業側の問題も...

「スタートアップや証券会社の「大手志向」が、監査難民を自らつくり出している面もある。
 
日本のIPO市場は大手監査法人の寡占が続く。10年以降にIPOした企業で4大監査法人(EY新日本、あずさ、トーマツ、PwCあらた)のシェアは8割を超え、準大手や中小は2割に満たない。米国では大手のシェアが5割強で、準大手や中小もIPOの業務を担う。日本はどうか。

国内に約210社ある中小監査法人のうち約120社は上場企業の監査事務所登録を持ち、IPOに向けた事務処理の余力があるところも多い。

しかし上場審査を担う証券会社の多くは監査の不備が上場失敗につながることを恐れ、スタートアップに大手か準大手との契約を求めがちだ。大手証券の引受担当者は「過去にIPOを手がけた実績や指導力を考慮すると、我々が相手にするのは10〜15社の監査法人に限られる」と明かす。

中小監査法人は証券会社から敬遠されてIPOの経験を積むことができず、監査実績がないので依頼が来ないという悪循環に陥っている。「監査難民」は日本の大手監査法人や証券会社、取引所などが複合的に生み出した危機だともいえる。」

大手企業の監査人交代が相次いでいるのは、金融庁がそのように促している側面もあり、しばらくは続くでしょう。交代初年度はやはり監査日数を増やさざるを得ないので(報酬は据え置きかもしれませんが)、ますます、きつくなります。

ただ、中小監査法人全般を底上げしなければならないかというと、たぶんそういうことはなくて、監査法人の上位10~15社が実力をつけていけば、十分対応できると思われます(個人的な印象にすぎませんが)。それ以下だと、個人の能力に依存する部分が大きすぎて、リスクは高そうです。

また、大手監査法人のパートナーは、退職すると監査業務ができない(そのような約束を法人との間でしている)とも聞きますが、そういう制限をなくせば、経験のある会計士が監査を継続でき、受け皿の強化にもなるでしょう。
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