規制強化で中小監査法人の淘汰が迫っている
(週刊東洋経済の特集の宣伝のようですが)監査法人の働き方は依然ブラックで、人手不足となっており、大手は採算確保のため、クライアントを減らしているが、受け皿となる中小監査事務所の品質は低いといった内容の記事です。
監査法人業界の中にいる人には新しい情報はないかもしれませんが、気になった箇所を引用すると...
「収益性重視の風潮も、大手監査法人を中心にプレッシャーを高める原因になっているという。トーマツ、あずさ、EY新日本、PwCあらたの国内4大監査法人のうち、2つが監査法人名に海外のビッグ4の名を冠している。監査法人側は「海外からのプレッシャーはない」というものの、業界内部には「効率性を意識すべきだ」との”外圧”があることを指摘する声もある。
「監査は単純作業ばかりで退屈」「やることが決まっていて、数年やれば飽きる」「企業買収の指南役などコンサルティングのほうがエキサイティングだ」として、監査業務から離れていく会計士が後を絶たない。」
「ある大手の監査法人で働く会計士によれば、具体的な監査報酬の額を示され、「このレベルの監査先企業は要観察。折を見て値上げを提案する」「このライン以下は監査を引き受けるな」などと言われていると証言。長期にわたって監査を担当してきた先でも、容赦なしなのだという。」
「大手監査法人からの顧客「流入」は、準大手や中小監査法人にとってチャンスかと言えば、そうとも限らない。とくに所属する公認会計士の数の少ない中小監査法人には厳しい時代がやってくる。上場企業の監査を巡って、規制が強化される見込みだからだ。
金融審議会での議論を踏まえ、金融庁は2022年春にも公認会計士法の改正を目指す方針だ。議論の中では主に中小監査法人の監査の質をどう高めるかが中心課題となった。」
「振り返ると、東芝の不正会計で激震が走った2015年以降、金融庁が処分した監査法人はいずれも中小だった。監査先から監査報酬以外の報酬を受け取っていたり、不正会計を見て見ぬふりをしていたりなど、監査の実態は次元の低いものばかりだった。中小監査法人の質の低さは看過できない喫緊の課題と、金融庁は危機感を募らせている。
今後は法改正に加えて、各種の規制が強化される。そうなれば、会計士の数が「40人以下の事務所が上場企業の監査を担うのは事実上厳しい」(都内で個人事務所を営む会計士)との声もある。規模確保に向けた合従連衡の動きが活発化しそうだ。」
大手はビッグ4の一員である以上、監査契約ごとの厳しい採算管理や、能力主義による厳しい選別(パートナーにはなれるのはごく一部)は取り入れざるを得ないのでしょう。勤務する会計士も、以前から一般企業よりは独立志向が強いのに加え、欧米流の人事政策や業務量増大とあいまって、独立・転職の道を選ぶ人が増えているのでしょう(あくまで外から見た推測にすぎませんが)。
中小監査事務所の監査品質については、具体的に知っているわけではないので、なんともいえません。大手監査法人と比べて、リスクが高い中小規模の上場企業を監査することが多いので、監査不備が表面化するケースも多いという面もあるのでしょう。同じ規模の会計不正でも、大企業であれば、重要性なしとして過年度訂正などは行わず、結果的に監査不備もばれないという傾向はあるでしょう。
(電子書籍版)
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