弱る自治体をぶんどる「過疎ビジネス」の実態 企業版ふるさと納税のカネが寄付企業に還流
DMM.comが企業版ふるさと納税で福島県国見町に寄付したカネが、同社のグループ企業に流れていたという記事。
そのこと自体は違法とまではいえないようですが、国見町では地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委)が設置され、調べているそうです。
国見町では匿名の企業3社(あとでDMMとそのグループ会社(寄付直後にDMMに吸収合併されている)であることが判明)からの計4億3200万円の企業版ふるさと納税の寄付金を財源に、救急車を所有し、他の自治体などにリースするという事業を始めたそうです。
事業の委託先は、救急車とは全く関係のないワンテーブルという宮城県多賀城市の会社(備蓄用ゼリーの製造・販売が主力事業)です。ワンテーブルは、DMM.comの子会社で救急車ベンチャーのベルリングと提携しますが、実は、町が救急車事業の委託先を公募するより前に、ベルリングに救急車を発注していました(納期は2023年3月)。
こういうスキームに問題はないのか...
「国見町の事業でDMMは、ワンテーブルを介した子会社の事業受注と税額控除によって多額の利益を得られる。寄付金の環流とも、制度趣旨を逸脱した「課税逃れ」とも言えそうな話だが、制度を所管する内閣府が2022年12月にQ&Aの形で示した見解に従えば、この事業スキーム自体を「クロ」とは言えない。
内閣府によると、寄付の対象事業を受注するには自治体の入札プロセスを経る必要があり、その入札プロセスは公正公平になされているのであるから仮に寄付企業や子会社が寄付金を使った事業を受託したとしても「自治体と企業の癒着の問題は生じない」(内閣府担当者)のだそうだ。」
内閣府担当者のコメントでは、自治体の入札は公正だから、問題ないとのことですが、記事によれば、この事業の調達にかかる入札プロセスは、不公正なものだったようです。
「国見町は2022年の9月議会で救急車事業の予算を計上し、担当課は同時並行で事業の委託先の選定に使う仕様書の作成を進めた。その際、事務局のワンテーブルは町の仕様書の中身の作成に関与し、ベルリングの既存車両に合わせた指定を多数盛り込んだ。」
「12台の車両のうち2台を中古車とする、という不可解な指定も盛り込まれ、納入期限は委託先の決定から4カ月後の2023年3月とされた。」
「2023年の9月議会に町監査委員が提出した意見書も、仕様書の内容や作成経緯は「公平性に欠ける」と強調した。監査では町が事業計画書を作らなかったことや、救急車のリース需要が未調査だったことも判明し、意見書は事業の進め方を「不適切で乱暴で無責任」と痛烈に批判した。」
「11月27日に開かれた百条委では、事業に関わった地元消防組合の幹部ら計3人が参考人招致された。事業者選定の審査を頼まれた消防組合幹部は、仕様書が委託先の決定から4カ月後に12台の納車を求めたのは「不可能に近い」と証言した。医療資器材を搭載しないのに平均すると1台3600万円になる車両価格についても「高額すぎる」と違和感を語った。」
結局、DMMが、わずかなコストで、グループ会社の事業を盛り上げるためのスキームだったように見えます。国見町はダシに使われただけだったのでしょう。
企業版ふるさと納税の(地方自治体ではなく)企業にとってのメリットを解説した記事。(この記事で挙げているような例は、そんなに悪くはないとは思いますが)
↓
多くの人が知らない「企業版ふるさと納税」の隠れたメリットとは?(ソリマチ)
政府のポータルサイト。
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企業版ふるさと納税ポータルサイト(内閣官房・内閣府)
(内閣府パンフレットより)
小さな字で「寄附を行うことの代償として経済的利益を受けることは禁止」と書いてはありますが...