東芝の米原子力事業巨額損失の原因となった建設会社(ストーン・アンド・ウェブスター(S&W))(東芝子会社であるWHが買収)を取り上げた記事。
記事によれば、S&Wは最終的な親会社が何回か変わっているようです(ショー・グループ→シカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン(CB&I)→東芝(WHの親会社))。
「東芝はなぜ原子力発電事業で巨額の減損損失を計上することになったのか。原因を探っていくと米南部ルイジアナ州でかつて産業用パイプを生産していたメーカーに行き当たる。
その会社は同州バトンルージュに本拠を置くエンジニアリング大手のショー・グループだ。...」
「ショーの創業は1987年。バトンルージュ出身のジェームズ・バーナード・ジュニア氏が経営破綻した産業用パイプメーカーを5万ドルで買い取り、再生させたのが始まりだ。その後幾つかの合併・買収(M&A)を経て規模を拡大。2000年にはかつては有力エンジニアリング企業ながら経営破綻したストーン・アンド・ウェブスター(S&W)を買収して原子力事業にも参入した。
S&Wの名前はショーに箔を付け、WHの全ての原発建設を受注することになる。かつてショーで原発建設に管理者として関わっていたジェフリー・ケラーマン氏は「彼らは必ずしもプロジェクトを請け負うに足る技量を備えていたわけではなかったが、やってやろうという意欲はあった」と話す。バーナード氏は今回の取材にコメントしなかった。」
「WHは08年に原発建設でショーと契約したが、問題は比較的早く表面化した。12年の早い段階までにNRCの検査官が原子炉下部の鋼材が不適切に据え付けられていたのを発見した。300トンもの原子炉容器が落ちかけていたり、誤った溶接のやり直しが必要だったりもした。ショーが「原子力事業における経験を欠いているのは明らかで、厳格さや細かな点への注意が十分でない」と、州政府から委託を受けた検査官のビル・ジェイコブズ氏は12年後半に当局に報告している。
「ショーが手掛けていたジョージア州内のサザンの2つの原発はもともと16年と17年に完成する予定だったが、いずれも19年と20年に後ずれしている。だが、それさえも無理のある目標のようだ。州政府でプロジェクトを監視しているビル・ジェイコブズ氏は昨年、新たな目標を達成するにはWHは作業ペースを加速してこれまでやってきたことの3倍以上の作業量をこなす必要があると述べている。WHは昨年11月、建設作業の33.4%が完了したと発表したが、サザンの関係者は匿名で懐疑的だと話した。」
「ショーは12年7月にシカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン(CB&I)への身売りに同意した。しかし、そのわずか3年後、CB&Iは事業にほとんど進展が見られなかったことからショーの主要資産だったS&Wを東芝に2億2900万ドルという安値で売却。東芝はその見返りにS&Wが絡む全ての法的責任や負債を免除されることになった。だが東芝は16年4月にショーの資産価値が22億ドルも水増しされているとして再交渉を要求。これに対してCB&Iは契約不履行で東芝を訴え、訴訟は今も続いている。」
米国では珍しい話ではないのかもしれませんが、このように、S&Wは、一度経営破綻し、その後も短期間で経営体制が何度か変わっています(前の前の親会社は産業用パイプメーカー)。また、原発のような大規模で複雑なプロジェクトを施工できるだけの技術力にもかけていたようです。他方、WHの方も身売りを重ね、最終的に親会社となった東芝も、建設工事に関しては経験がないようです。つまり、経験が不足している同士が一緒になって、超大型プロジェクトである原発工事をやろうとしていたわけですから、最初からうまくいかない可能性は高かったのでしょう。
しかも、相手側の親会社は形勢不利と感じたのか、さっさと逃げ出してしまいました(裁判継続中なので逃げ切れるかどうかはわかりませんが)。のれん減損を阻止しようとして原子力事業のバラ色の計画をたてていた東芝は、逃げられずばばを引いてしまった形になっています。
その他東芝関連記事。
東芝 去年4月~12月決算 大幅な最終赤字に(NHK)
会社も第3四半期の大幅赤字を認めたようです。
「アメリカの原子力事業で巨額の損失が出る見通しとなった、大手電機メーカーの東芝は、去年4月から12月までの9か月間の決算で大幅な最終赤字の見込みになったと発表しました。」
当社第3四半期業績に関する一部報道について(東芝)(PDFファイル)
ブルームバーグ記事の原文。
Toshiba’s Nuclear Reactor Mess Winds Back to a Louisiana Swamp
記事の見出しは「ルイジアナの沼地にまで遡る」ですから、底なし沼という感じです。
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