「今こそ会計士の底力を発揮する時。だから私は再審請求に踏み切った」細野祐二・会計評論家
週刊エコノミストの2月21日号は、「選ばれる税理士・会計士」という特集です。そのうちの無料記事のひとつ。
会計評論家(元会計士)の細野氏が書いています。
細野氏が人質司法の犠牲になったという点は同情しますが、いまだに、キャッツ事件は粉飾でなかった説を主張しているのにはついていけません。
「2020年5月の連休中、たまたま立ち寄った書店で目にした経済刑法の本(山口厚編著『経済刑法』2012年11月30日商事法務刊209~210ページ)にキャッツ粉飾決算事件が「粉飾決算」の共謀事件として解説されているのを見て、私は驚愕(きょうがく)した。この事件は、現行刑事司法により有価証券報告書の虚偽記載事件として確定しているものの、問題とされたキャッツの02年度財務諸表に対しては有価証券報告書の訂正報告書は出ておらず、これが適正なものであることは会計的に確定しているからだ。会計的に適正な財務諸表を粉飾とする原審判決は間違っている。この判決を歴史の中に確定させてはならない。これまでにない強い危機感から昨年末、無罪を主張し、東京地裁に再審請求をした。」
訂正報告書が出ていないからもとの報告書は適正だというのは、理屈になっていません。当局からの訂正命令がある場合は別として、訂正報告書は会社の意思で出すものですから、客観的に粉飾があっても、会社が認めなければ訂正報告書はでません。また、粉飾が発覚して、会社が上場廃止になったり、倒産したりすれば、結果的に訂正報告書を出さずに済ませることもあるでしょう。
キャッツとの関わりについて。
「店頭公開を目指すベンチャー企業として、私が担当するようになったのは1990年から。提携先探しや資金調達方法など、同世代の経営陣と一緒に必死でキャッツをサポートした。90年代前半のバブル崩壊後に、経営危機に陥ったこともあったが、私が資金繰りに奔走して、どうにか危機を脱出。その後、順調に業績を伸ばして、95年に店頭公開を果たした。
監査クライアントの資金繰りに奔走するというのは、独立性に反する行為ですから、監査人としてやってはいけません。当時は、非監査業務の制限がはっきりしていなかったとはいえ、常識的に考えても、おかしい。監査先の資金繰りに協力しつつ、資金繰りにマイナスになるような指導や意見表明(不適正や限定付)ができるはずがありません。「資金繰りに奔走」した時期と監査をやっていた時期がずれていれば、違反ではないかもしれませんが、それでも、癒着している(「資金繰りに奔走」までしてたすけたかわいい会社について厳しい意見を言えるはずがない)とみられ、監査の信頼性は損なわれるでしょう。
この部分は、そうかなと思います。
「経営が不安定な会社ほど、質の高い監査が必要だ。監査の意義も高くなる。リスクが高いからと、大手が監査契約を解除するのは、プロとしての責任回避だ。大手が断れば中小や個人の公認会計士が監査を行わざるを得ず、監査の質が落ちる。その結果、不正の防止は難しくなり、それが発覚するとさらに企業会計に対する投資家や消費者の不信が強まるという悪循環に陥る。」